財務戦略

財務戦略「戦略的持株会社へのパラダイムシフトを推進」後藤 芳光

2017年度の総括

2017年度のテーマは、なんといっても、持株会社の役割が、「通信事業グループの統括」から「戦略的投資」へ本格的に移行し始めたことです。財務統括にとっては目まぐるしい1年でしたが、「資金調達」と「投資」の両面において的確な成果を上げ、この大きなパラダイムシフトをスムーズに推進できたと自負しています。

資金調達

戦略的持株会社への移行に向け、足元の事業環境に合わせて、新規調達やリファイナンス、各種財務取引の条件見直しに取り組みました。

2017年度は、ソフトバンク・ビジョン・ファンドによる投資活動が本格化した1年となりました。ソフトバンクグループ(株)は同ファンドに281億米ドルの出資をコミット※1しており、これに対応するため、多様なファイナンスを計画的に実行しました。そのうちの一つが、日本円にして5千億円規模の米ドル建ハイブリッド社債の発行です。金額の50%が格付評価上の資本性を認定され、さらに会計上は資本として計上される永久劣後債であり、ソフトバンクグループの信用力を高めるとともに多額の資金調達を実現できました。また、アリババ株式を有効活用した調達(ソフトバンクグループ(株)に対しノンリコース)を行い、ソフトバンク・ビジョン・ファンドへ移管する予定の資産を取得するための資金に充当しました。

加えて、現在の財務状況に合わせ、合計7千億円規模の米ドル建普通社債とユーロ建普通社債(併せて「2017年外債」)を発行し、主にアジアと欧州の投資家から、幅広く長期の資金を調達することができました。また、既存の外貨建社債の条件見直しも実施しました。この見直しは、2015年発行の外貨建普通社債のコベナンツの一部を2017年外債と同等の基準に合わせるもので、ソフトバンク・ビジョン・ファンドの投資活動や、子会社のソフトバンク(株)の上場を見据えて財務の柔軟性を確保する狙いがありました。この他、スプリントとアーム買収資金などのリファイナンスを行い、資金の長期化も実現しました。

[注]
  • ※1
    アーム株式を活用した支払義務履行分(約82億米ドル相当)を含む。2018年3月末現在。

投資関連

2017年度はグローバル投資を積極的に展開しました。ソフトバンク・ビジョン・ファンドとデルタ・ファンドは、各分野でNo.1になれるポテンシャルを持った多くの企業に、合計297億米ドルを投じました。NVIDIAなど、すでに大きな評価益を生み出している投資先もあり、上々の滑り出しだと評価しています。ファンド以外でも、ソフトバンクグループは、多角的なグローバル投資を行う投資ファームであるフォートレスを買収したほか、Uberへの新規出資やDiDiへの追加出資を行いました。

一方、ソフトバンクグループ(株)の株式時価総額が、当社が保有している株式の公正価値総額の合計を大きく下回っているため、ソフトバンクグループ(株)の株価がディスカウントされているという声をよく耳にします。この主因は、近年立て続けに実施した大型投資が株主にどのくらいのリターンをもたらすか、そのパフォーマンスを示せていないことにあります。今般Tモバイルとの事業統合に最終合意※2したスプリントをはじめ、アームやソフトバンク・ビジョン・ファンドからもたらされるリターンについて、実績を出しながら一つ一つ丁寧に説明していくことで、ディスカウントが縮小していくと考えています。

[注]
  • ※2
    本取引はスプリントとTモバイルの株主及び規制当局の承認、その他の一般的なクロージング要件の充足を必要とします。本取引のクロージングは遅くとも2019年半ばまでに行われることを見込んでいます。本取引完了後、統合後の会社はソフトバンクグループの持分法適用関連会社となり、スプリントはソフトバンクグループの子会社ではなくなります。

戦略的持株会社としての最適レバレッジ

ソフトバンクグループは、保有資産の資金化も実施していますが、依然として負債額や金利負担の大きい企業グループとして見られがちです。英ボーダフォン日本法人買収直後の2006年に6.2倍※3あった連結ネットレバレッジ・レシオ※4は、継続的な改善によって一時1倍程度※3まで下がりましたが、現在は4倍以上※5の水準にあります。積極的な投資で事業規模が再び拡大していることが背景にありますが、一般的に考えれば、負債規模は大きいと言えるでしょう。

今までソフトバンクグループは、国内通信事業を持株会社と一体化させたビジネスモデルとして価値が評価されてきました。今後ソフトバンクグループ(株)は、持株会社として各投資先企業の価値向上やグループ内シナジー創出を通じて、ソフトバンクグループの企業価値を最大化させる役割を担います。この通信事業から投資事業へという大きな変化に伴い、信用力の評価ポイントも大きく変わると考えています。

従来は通信事業の利益が連結業績に占める割合が大きかったため、ソフトバンクグループの信用力は国内通信事業のレバレッジと一体的に評価されてきました。具体的には、連結EBITDAや連結フリー・キャッシュ・フローといったキャッシュ創出力が財務評価のベースとなっていました。今後は、投資事業が中心になることに伴い、国内通信事業のネットレバレッジ・レシオを考慮に入れながらも、ソフトバンクグループの信用力を評価する基軸を、投資先企業の資産価値と投資リターン(配当・資産売却)にシフトさせていきます。

国内通信事業のネットレバレッジ・レシオとその他の事業の負債カバー率

国内通信事業のネットレバレッジ・レシオとその他の事業の負債カバー率

まず、投資事業に帰属する負債については、投資先の株式価値でどの程度カバーされているかを計る負債カバー率で評価します。ソフトバンクグループの投資活動に伴う純有利子負債6.7兆円※6に対し、保有株式時価総額は22.9兆円※7で、ここから算出される負債カバー率は29%と十分に安全な水準にあると評価しています。資本市場が変動すると保有株式価値も当然変動しますが、想定外の市場変動に見舞われても、安全で安定した財務運営の維持が求められます。あらゆる環境変化に耐えうる鉄壁の財務管理を実現すべく、負債カバー率については35%を上限の目安としています。

一方、国内通信事業に帰属する負債は、ソフトバンク(株)のキャッシュ創出力を返済原資として評価されます。同社の純有利子負債※8を同社の調整後EBITDAで除した国内通信事業のネットレバレッジ・レシオは、2018年3月末時点で2.6倍であり、通信事業者として十分安全な水準と考えています。

これら二つの指標を確実にコントロールすることに加え、手元流動性は少なくとも2年分の社債償還資金の維持を前提とし、急な市場変動に備える運営を行っています。われわれ財務統括は、引き続き厳格な財務規律を徹底しつつ、企業価値を最大化できる最適なレバレッジを追求してまいります。

[注]
  • ※3
    日本基準、ファイナンス・リースおよび優先出資証券含む
  • ※4
    ネットレバレッジ・レシオ=純有利子負債÷調整後EBITDA
  • ※5
    スーパーセル売却による収入を手元流動性として考慮。アリババ株式に係る株式先渡契約金融負債、ソフトバンク・ビジョン・ファンドおよびデルタ・ファンドの純有利子負債、およびジャパンネット銀行の純有利子負債(銀行業の預金-手元流動性)は、純有利子負債から控除。ハイブリッド債およびハイブリッドローン調達金額の50%を資本とみなして算出
  • ※6
    2018年3⽉末現在。アリババ株式にかかる株式先渡契約⾦融負債、および国内通信、スプリント、ヤフー(ジャパンネット銀⾏含む)、アーム、ソフトバンク・ビジョン・ファンドおよびデルタ・ファンドの純有利⼦負債を除く。ハイブリッド債およびハイブリッドローン調達金額の50%を資本とみなして算出。
  • ※7
    2018年4⽉27⽇現在。為替 1ドル=109.35円
  • ※8
    スプリント買収資金相当分を含む

資本市場との対話

2018年4月1日付でソフトバンクグループ(株)のCFOに新たに就任しました。グループのあり方が変わっても、財務統括は従来と変わらず、攻めの財務に挑み続けていきます。攻めの財務とは、経営の方向性やスピード感に呼応するファイナンスの実現を意味し、特に調達面では市場やステークホルダーの動向から調達スキームに至るまであらゆる情報・知見に精通した部門でなくてはなりません。同時に、経営のスピードが速く、実態や戦略が分かりにくいという投資家の声に対し、分かりやすい情報開示と説明に取り組みます。特にソフトバンク・ビジョン・ファンドの情報開示の充実を通じた、投資資産の価値と投資に対するリターンについての説明は重要課題と認識しています。財務戦略の中心となる指標が大きく転換することに伴い、今まで以上に慎重かつ丁寧に、その新たな指標について説明していく責任を痛感しています。組織戦略と呼応して財務戦略も新たなステージに移行したという意識の下、資本市場とのより充実した対話を心掛けることにより開示に対する満足度の向上に努め、ひいてはソフトバンクグループの企業価値の向上を実現してまいります。

[注]
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