アーム事業戦略

アーム事業戦略「長期的成長に向けて投資を継続」サイモン・シガース

半導体テクノロジーのリーダー

アームは、半導体チップに搭載される主要技術のデザインを手掛ける、グローバルリーディングカンパニーです。アームが設計するプロセッサーは、ほぼ全てのスマートフォンのメインチップに組み込まれていることで知られています。われわれのテクノロジーは、四半世紀かけてあらゆる分野および市場に広がりました。いまやアームは、世界で最も広範に導入されている最新技術のIP(回路の設計情報などの知的財産)を保有しており、デジタルテレビからブレーキシステム、スマートセンサー、クラウドを支えるデータセンターまで、さまざまなデジタル機器がアームの技術を使用しています。

アームのビジネスモデル

アームのビジネスモデル

新しいプロセッサーの設計には、数年単位の年月と、数百人単位の高度な専門性を持ったエンジニアチームが必要です。半導体企業は、プロセッサー・デザインのライセンスをアームから取得したうえで、アームのテクノロジーを自社のチップに搭載します。ライセンスを取得する企業は、初期費用としてライセンス料を支払うことで、アームのテクノロジーを利用し、アームのプロセッサー・デザインと自社の技術を組み合わせて、高性能かつ省電力のチップを開発できるようになります。また、アームは、アームのテクノロジーを使用したチップごとに、販売価格などに基づきロイヤルティー収入を得ます。

アームのデザインは、幅広いアプリケーションに適合可能です。異なるチップファミリーとして複数の市場向けに再利用され、新たなロイヤルティー収入を生み出すこともあります。一つのデザインがさまざまなチップで使用され、25年以上にわたって出荷され続けることもあります。

大きく前進した2017年度

2017年度、アームのテクノロジーを含んだチップの出荷数(顧客からの報告ベース)は210億個となり、累計出荷数は1,200億個を超えました。また、89社の顧客と141件のライセンス契約を結び、アームのテクノロジーを採用する企業数は合計で511社となりました。

研究開発投資を増加

2016年9月5日にソフトバンクグループの一員となって以降、アームは研究開発投資を加速してきました。当年度は新たに1,000人以上を雇用し、従業員数は5,886人にのぼりました。このうち80%以上が、研究開発に従事するエンジニアです。

売上高、コストおよび利益(IFRSベース、支配獲得日以前の期間を含む)

売上高、コストおよび利益(IFRSベース、支配獲得日以前の期間を含む)

現在の売上は、何年も前に開発された技術からもたらされますが、一方、現在のコストは、将来の売上の成長をけん引する技術への投資です。したがって、現在発生している売上とコストは、相関していないともいえます。つまり、アームが現在行う投資は全て経営陣の裁量下にあり、収益レベルは調整可能です。将来においてより大きな利益成長を実現するため、われわれは、先行投資による短期的な利益悪化は承知の上で、投資を加速することを選んでいるのです。

今後数年は、事業収益の大半を再投資し、数年、そして数十年にわたる売上の拡大をけん引する重要な新技術(下記参照)の開発を行っていきます。今日の投資から生まれる売上は、5~10年内に、より大きな売上と利益をもたらすと見込んでいます。このような利益成長を実現したのちには、その利益を将来的な成長のために事業へ再投資すべきか、あるいはソフトバンクグループに還元すべきかという選択肢も生まれることでしょう。

新技術開発のための投資

アームが投資しているテクノロジーは、幅広い市場や機器へ展開される見込みです。長期的な拡大が見込まれる市場において、これらの技術が、アームのシェア獲得・維持に寄与すると見込んでいます。

新技術開発のための投資

2017年度における課題

2017年度、アームは、セキュリティー脆弱性「Spectre」「Meltdown」など、いくつかの課題に直面しました。2017年6月、セキュリティに関する研究機関から、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)、アーム、インテルに対し、3社のプロセッサーにセキュリティー上の弱点が存在する可能性が指摘されました。その脆弱性を悪用した、パソコンや電話、サーバー内の情報への不正アクセスを未然に防ぐため、われわれは、アップルやグーグル、マイクロソフトなどと連携し、迅速にリスク低減策の開発に着手し、2018年1月には、今後起こり得るセキュリティー上のリスクや、脆弱性のあるチップへの対応策についての詳細を共同発表しました。

今回の件は、セキュリティーリスクが増大しつつある事を示すだけでなく、従来安全と考えられてきたシステムさえも、最新の手口によって、突如危機にさらされる可能性があることを物語っています。また、アームを含む業界のリーダーが、システムの安全性に常に注意を払う必要性も示唆しました。今回のようにセキュリティー問題に際してパートナーや競合他社と連携して対処することは、決して特別なケースではなく、今後の標準的なアプローチになっていくべきだと感じます。

IoTによる新たな機会の創造

アームは、今後の持続的な売上の成長をけん引するような製品やサービス、特にIoT(モノのインターネット)に関連する新たなテクノロジーに投資しています。市場が顕在化するにつれ、IoTは大きなビジネスチャンスにつながる可能性があります。IoT市場において、さまざまな業態でどのように価値が創出され、どのように収益されようとしているのか、徐々に明らかになりつつあります。アームは、IoTを取り巻く新たな事業をテクノロジーの面から実現に導き、長期にわたる新たな成長機会を創出していきます。

ソフトバンクグループ内での協力体制

2017年度、アームは、ソフトバンクグループ傘下のテクノロジー企業との連携を進めてきました。スプリントの現Executive Chairmanであるマルセロ・クラウレ氏がアームの取締役に就任したことによって、さらにこの連携は深まりつつあります。スプリントが発表した、アームのライセンス顧客のカビウムとの通信ネットワーク技術における共同開発など、グループ内連携がイノベーションにつながった事例も出始めています。アームは今後も、ソフトバンクグループ傘下の企業と積極的に連携しながら、AIや高効率サーバー、次世代通信機器、そしてIoTなど多くの事業機会を通じて、グループ全体の企業価値の向上に寄与していきます。

成長機会

以下の将来市場などにおける新技術開発を目指して研究開発投資を強化し、将来の売上成長へつなげていきます。

市場シェア

市場シェア

  • モバイル コンピューティング

    すでに高いシェアを有するものの、今後の大きな市場成長は見込めません。機械学習や仮想現実(AR)のような高度な技術の提供を通じた、より高いロイヤルティー収入の獲得を目指しています。

    [注]
    • モバイル コンピューティング=スマートフォン、タブレット、ノートパソコンなどにおけるメインプロセッサー(アプリケーションプロセッサー)
  • ネットワーク・インフラ

    個人および企業向けサービスの多様化に伴い、通信ネットワーク機器におけるアームのシェアが拡大しつつあります。

  • サーバー

    多くの企業がクラウド化を進める中、特定のアプリケーションに最適化された、低コストで構築・運営が可能な新型サーバーへのニーズが高まっており、アームの高効率技術を生かすことができます。

  • 組込アプリケーション

    クレジットカードやサーモスタット、生産設備のような比較的シンプルなデジタル機器でもスマート化が進んでおり、アームの成長機会の裾野が広がっています。IoTが普及し、より多くのモノがインターネットにつながっていくことで、アームの事業機会も拡大していく見込みです。

  • 車載機器

    完全な自動運転を目指すスマートカーに、アームの技術が活用されています。アームはこの分野ですでに高いシェアを有しており、今後も車載コンピューター関連市場は着実に拡大すると見込んでいます。

[注]
  • 本ページにおける社名または略称はこちらよりご確認ください。