社長メッセージ

社長メッセージ「300年成長し続けるための群戦略」孫 正義

ユニークな組織形態「群戦略」

19歳の時、人生で初めての発明品として、音声付き電子翻訳機を開発しました。後の電子辞書のベースとなったもので、世界中の人々に使われました。もし私の発明がなければ、電子辞書の誕生は何年も遅れていたかもしれません。ただ、音声付き電子翻訳機は世の中にあるたくさんの発明品の一つに過ぎません。将来、「孫正義は何を発明したのか」と問われれば、電子翻訳機ではなく、ただ一つ、「群戦略」を発明したと答えます。「群戦略」とは、それぞれの技術分野で進化の先頭を走る企業に、多くの場合筆頭株主として20~30%の株式を持ち、共に大きく成長していくという組織体のあり方です。既存の財閥やコングロマリットとは似て非なるもので、300年成長し続けたいという思いの下で、私が新たに発明しました。

グループのあり方を進化させ、情報革命を加速

群戦略を発明する上で、40億年前だと言われる生物の起源—バクテリア—を参考にしました。地球に誕生したバクテリアは自己増殖を繰り返し、どんどん増えていきました。ただ、仮にバクテリアが自己増殖を繰り返すだけの存在であったなら、地球は現在のように発展していなかったでしょう。バクテリアが自己進化というもう一つの重要な機能を持っていたからこそ、生命体が次々と進化を遂げ、現在、地球上に多様な生命体が繁栄しているのです。

情報革命の世界においても同様に、環境の変化に応じた自己進化が非常に重要です。この30~40年の間に環境は著しく変化しました。まずパソコンによって世界は大きく変わりました。そしてパソコンとパソコンをつなぐインターネットも普及しました。次は人工知能が爆発的な成長を遂げていくと予見しています。企業はこうした環境の変化と栄枯盛衰を共にするものです。パソコン時代にはいくつかの企業が栄華を誇りましたが、インターネットの時代に入るとグーグルやアマゾンといった新たなスーパースターが生まれてきました。現在の世界の時価総額ランキングでトップ10に名を連ねる企業は、インターネット関連企業が大半です。人工知能の時代になれば、医薬、建設、交通などさまざまな分野で根底から覆る革命が起き、これらの企業の顔ぶれも大きく変わるでしょう。

われわれが主戦場とする情報革命という分野は、それほど環境の変化が激しいのです。その中でソフトバンクグループがいかにして生き残っていくのか。単に生き残るだけではなく、これからどのように300年間絶えず成長を続けていくのか。悩みぬいた末に考え出したのが、「群戦略」という組織体のあり方です。先ほどお話しした生命体の自己進化の機能を、われわれの組織体に反映させました。群戦略においては、自己増殖だけでなく、自己進化を次々と繰り返していくことができます。

「群戦略」には二つの特徴があります。一つは、この「群」をNo.1の企業だけで構成するという点です。財閥は多様なグループ企業で構成されているものの、それぞれの企業は必ずしもNo.1ではありません。対して群戦略は、それぞれの分野でNo.1の会社だけで群を構成し、全体の競争力を著しく高めるという考え方です。もう一つは、群を成す各企業を支配・管理し過ぎないことです。グループ入りにあたって、ブランドの統一も、持株比率51%以上も要求しません。もし、2000年にアリババへ出資する際に、社名に「ソフトバンク」を冠することや、持株比率51%以上という条件をジャック・マーに提示していたら、間違いなく出資を受け入れてくれなかったと思います。起業家には創業のプライドと大きな夢、大きな志があるのです。この持分比率は、成熟した、または想定通りに成長しないグループ企業の持分をエグジットする際にも有益です。「ソフトバンク」の名前を冠する企業や51%以上の持分がある企業を売却するのは簡単ではありません。つまり、20~30%という持分は、グループ企業の入れ替えを容易にしてくれます。輝かしいNo.1企業だけでできた群をつくる上では、この特徴は不可欠です。

グループのあり方を進化させ、情報革命を加速

こうした戦略で組織を構築した企業はこれまで存在していません。ですから、先ほど「発明」と申し上げたのです。ユニークだからこそ、世の中の人々に理解してもらうには時間がかかります。しかし、理解してもらうためではなく、成功するため、勝つため、300年成長し続けるための「群戦略」なのです。

通信事業から戦略的持株会社へ

「群戦略」の下で、グループの形も大きく変わりつつあります。通信をはじめとする国内事業の中心的役割を担う子会社であるソフトバンク(株)が2018年7月9日に東京証券取引所に上場予備申請を行いましたが、この上場が実現すれば、ソフトバンク(株)は、30年以上女房役として私を支えてくれてきた宮内 謙(ソフトバンクグループ(株)取締役、ソフトバンク(株)代表取締役 社長執行役員 兼 CEO)が中心となって、さらに機動的・自律的に成長を追求していくことになります。

大変苦労した米国のスプリントも大きな潮目を迎えています。七転八倒の末、マルセロ・クラウレ(ソフトバンクグループ(株)取締役副社長 COO、スプリント Executive Chairman)を中心に見事V字回復を果たすことができました。次の一手として、2018年4月にTモバイルとの合併合意を発表しており、現在、米国当局の承認を待つ状況です。

この二つの新たな動きによって、ソフトバンクグループは通信事業者から戦略的持株会社へ転換しようとしています。従来、ソフトバンクグループは通信事業者として評価されてきました。しかしソフトバンクグループの36年の歴史において、通信事業が中心だった時期はわずか十数年に過ぎません。戦略的持株会社への移行は、通信事業が本格化する前の姿に回帰することを意味しています。私自身の時間も、過去十数年は通信事業に大半を振り向け、残りで投資活動を行ってきました。戦略的持株会社への転換に合わせて時間配分を逆転させることで、群戦略を推進し、さらに力強く成長を加速させていきます。

ソフトバンク・ビジョン・ファンドの投資先は順調に拡大

私の時間の大部分を使って取り組んでいるのが、ソフトバンク・ビジョン・ファンドです。2017年5月に本格的に稼働したソフトバンク・ビジョン・ファンドは、これまでに24社※1に投資を行いました。ソフトバンク・ビジョン・ファンドは、一般のベンチャー・キャピタルと異なり、創業間もない企業に投資するのではなく、ほとんどがその業界のリーダーあるいはリーダーになる可能性がある企業ばかりを選りすぐって投資しています。さらに、1社あたりに投じる資金規模は平均1,000億円規模に上ります。

ソフトバンク・ビジョン・ファンドの投資先の一つであり、グローバルワークスペースネットワークを運営するWeWorkは、設立後数年しか経っていませんが、2017年の売上が8.9億ドル(970億円)に達しました。インド最大級※2の決済サービスを手掛けるPaytmは、アリババの支援を受けて、総取引高が3年で35倍超(2015年3月期~2018年3月期)も増加するという急成長を続けています。同じくインド企業で、インド最大級※3のホテルネットワークとなったOYO Roomsも将来が非常に楽しみな会社です。創業者は弱冠24歳と大変若いですが、創業わずか4年で、インド最大のホテルネットワークを築き上げた非凡な才能を持つ経営者です。また、OYO Roomsは中国でも事業を開始しましたが、2017年11月のサービスイン以降、7カ月間で部屋数は250倍と急成長を遂げています。欧州最大級の中古車マーケットプレイスのAUTO1 Groupは、2012年の創業以来、ほぼゼロから年間42万台、ディーラー数4万店舗(いずれも2017年実績)にまで拡大しました。また、米国で不動産エージェント向けに、物件の売買をスマートかつシームレスに実現させるテクノロジープラットフォームを提供するCOMPASSも、急激に成長しています。中国のFull Truck Allianceは、荷主とトラック運転手を結び付ける、中国最大級のマッチングプラットフォームで、すでに290万人のトラック運転手が同社サービスを利用しており、同社のマーケットシェアは90%以上に上ります。

[注]
  • ※1
    2018年3月31日時点
  • ※2
    総取引高ベース
  • ※3
    予約数ベース

ライドシェア分野で確固たる地位を確立

このほかに、ソフトバンクグループ(株)は、ライドシェア分野においても圧倒的な地位を確立しています。現在、ソフトバンクグループは、Uber、DiDi、Ola、Grabという世界の主だったライドシェア・プラットフォーマーの主要株主です。これら4社合計の年間取扱高(乗車賃)は650億ドル(7.1兆円)、1日あたりの乗車回数は3,500万回に達しています(いずれも2017年データ)。米国の主要都市(ニューヨークシティ、ワシントンD.C.、シカゴ、ロサンゼルス)では、通勤に自家用車を使うよりもライドシェアサービスを利用するほうがコストを抑えられることから、ライドシェア市場は今後も順調に拡大していくと期待しています。

足元の株価8,070円、株主価値14,199円+α

ソフトバンクグループ(株)の株価は8,070円、時価総額は8.8兆円(いずれも2018年6月19日終値)にとどまっています。「群戦略」の説明よりも、足元の株価が気になる株主も数多くいらっしゃるでしょう。この先株価が上がっていくのか、不安を感じている方も少なくないと思います。しかし実は、ソフトバンクグループ(株)の株主価値は、現在の株価をはるかに上回る14,199円以上/株もあるのです。企業価値は23,153円※4/株であり、その内訳は、アリババ13,999円、スプリント2,166円、ヤフー822円、アーム2,471円、その他710円、ソフトバンク・ビジョン・ファンドおよびデルタ・ファンド、UberやDiDiほか2,987円です。ここから純有利子負債8,954円/株※5を差し引くと、前述のとおり株主価値は14,199円/株となります。この金額には、上場準備中のソフトバンク(株)の価値は含まれていません。上場した場合に明らかとなるその価値を加算した14,199円+α/株がソフトバンクグループ(株)の株主価値なのです。これを見ていただければ、株主の皆様の不安も和らぐのではないでしょうか。

とはいうものの、2000年のピーク時に19兆円を超えた時価総額から見れば、まだ半分以下の水準です。2000年3月末時点の株主価値は4,472円/株に過ぎませんでした。株主価値は今の3分の1、全体で約5兆円しかないのに、時価総額は今の2倍以上となる19兆円だったわけです。2000年当時はあまりの過大評価に私は毎日不安を感じていました。その後、ITバブル崩壊とともに時価総額は3,000億円以下まで急落しましたが、さまざまな危機や課題を乗り越え、ようやく8.8兆円まで戻しています。確かに時価総額は、まだピーク時の半分以下です。ただ、株主価値を見ると、すでに4年前に2000年の4,472円/株を超え、現在では14,199円+α/株まで増加しています。この株主価値と現在の株価を見比べれば明らかなように、私はソフトバンクグループ(株)の株は過小評価されていると確信しています。過去20年の株主価値と時価総額の関係を振り返ると、まるで植物のつたが細長い棒に絡みながら伸びていくかのように、時価総額は株主価値と同じように推移していました。足元では、時価総額は株主価値をずいぶん下回っていますが、その差はいずれ縮小していくはずです。

1株当たりの株主価値

1株当たりの株主価値

[注]
  • ※4
    各社の企業価値は以下のように算出。
    アリババ株式:他社株強制転換証券に供されている株式を除いたソフトバンクグループ保有株式数に、同社株式のニューヨーク証券取引所における2018年6月18日の終値を乗じた金額に基づいて算出。
    ヤフー株式:ソフトバンクグループ保有株式数に、同社株式の東京証券取引所における2018年6月19日の終値を乗じた金額に基づいて算出。
    アーム株式:ソフトバンクグループによる出資時の取得対価を基準とし、かつソフトバンクグループによるアーム株式の現物出資終了時においてソフトバンク・ビジョン・ファンドが保有予定の株式数(発行済株式総数の24.99%)を除いて算出。
    スプリント株式:Tモバイルとの合併を前提に、直近のTモバイル株価(2018年6月18日終値ベース)×交換比率0.10256により算出。
    その他:主にソフトバンクグループが保有する未上場株式の公正価値に基づいて算出。公正価値は2018年3月31日時点のデータを使用。
    ソフトバンク・ビジョン・ファンド/デルタ・ファンド/Uber/DiDi 他:ソフトバンク・ビジョン・ファンドおよびデルタ・ファンドの保有する投資と、ソフトバンクグループが保有するUberおよびDiDiなどへの投資について、公正価値の合計をソフトバンク・ビジョン・ファンドおよびデルタ・ファンドにおける支払義務履行額に占めるソフトバンクグループの成果分配型持分割合で乗じて算出。上場株式の公正価値はNASDAQまたはニューヨーク証券取引所の上場企業は2018年6月18日の終値、香港証券取引所の上場企業は2018年6月19日の終値を用いて算出。
    発行済株式総数は2018年3月31日時点。1ドルは110.64円換算。
  • ※5
    純有利子負債はアリババ株式に係る株式先渡契約金融負債、スプリント、ヤフー(ジャパンネット銀行含む)、アーム、ソフトバンク・ビジョン・ファンドおよびデルタ・ファンドの純有利子負債を除く。2018年3月31日時点。

人類を最も進化させる企業グループへ

人類がこれまでに経験した、農業革命、産業革命、情報革命という三つの革命のうち情報革命は、300年以上続く産業革命以上となる、人類史上最大の革命だと私は信じています。そしてその情報革命の中で、人類を最も進化させる企業グループになるという大きなビジョンを実現するために、「群戦略」を発明しました。光り輝く星(中核会社)の周りに惑星が生まれ、その惑星の周りに衛星ができ、やがて銀河のようにソフトバンクグループの企業群が300年にわたって輝き続ける。そんな組織体を常々思い描いています。「情報革命で人々を幸せに」という理念は、株主の皆様の幸せにもつながっていくと確信しています。今後も引き続きご理解とご支援のほど、よろしくお願い申し上げます。

2018年7月
ソフトバンクグループ株式会社
代表取締役会長 兼 社長
孫 正義

[注]
  • 本ページにおける社名または略称はこちらよりご確認ください。