決算説明会には代表取締役社長の孫、取締役の笠井、財務部長 兼 関連事業室長の後藤、経理部長 兼 内部統制室長の君和田のほか、ソフトバンクモバイルCFOの藤原、同社CTOの宮川が出席しました。
登壇した孫はまず、ボーダフォン買収以来、モバイルインターネットへの取り組みが前進したことなどにより、買収に伴った借入金を着実に返済できるめどがついたと説明しました。
株主・投資家情報(IR)
ソフトバンク株式会社は2009年4月30日に、2009年3月期 決算を発表しました。同日都内のホテルで開催した決算説明会の模様をお伝えします。決算説明会の映像をビデオオンデマンドで公開していますので、ぜひご覧ください。また、より詳細な主要経営指標については、決算説明会翌日の5月1日に開催したアナリスト説明会をあわせてご覧ください。
2009年3月期 決算説明会
2009年3月期 決算アナリスト説明会
決算説明会には代表取締役社長の孫、取締役の笠井、財務部長 兼 関連事業室長の後藤、経理部長 兼 内部統制室長の君和田のほか、ソフトバンクモバイルCFOの藤原、同社CTOの宮川が出席しました。
登壇した孫はまず、ボーダフォン買収以来、モバイルインターネットへの取り組みが前進したことなどにより、買収に伴った借入金を着実に返済できるめどがついたと説明しました。
続いて詳細な説明に移ると、孫は2009年3月期決算(2008年4月~2009年3月、以下「当期」)のハイライトとして以下の3点を説明しました。
連結業績での営業利益が過去最高を4期連続更新
携帯電話契約数が2年連続No.1を達成
今後3年間で累計1兆円前後のフリーキャッシュフロー*1を創出
また、この半年間で連結業績予想を2回上方修正したことに触れ、2008年度の営業利益とフリーキャッシュフローが、最新の予想よりも上回ったと発表しました。
当期のソフトバンクグループの連結業績は、売上高が2兆6,730億円(前期比3.7%減少)、EBITDAが6,786億円(同8.2%増加)、営業利益が3,591億円(同10.7%増加)、経常利益が2,256億円(同12.7%減少)、そして当期純利益が431億円(同60.3%減少)です。
携帯電話の販売台数の減少により減収となったものの、ソフトバンクモバイル、ソフトバンクBB、ソフトバンクテレコムにおける継続的なコスト削減の取り組みに加え、ヤフーでの順調な利益拡大が寄与し、営業利益は創業以来最高益を4期連続で更新しました。
次に孫は、今後強化していくフリーキャッシュフロー経営について説明しました。ソフトバンクは、当年度から再来年度までの3年間で1兆円前後のフリーキャッシュフローの創出を見込んでいます。さらに、純有利子負債を2011年度には半減、2014年度にはゼロにすることを目標に掲げ、「有利子負債ゼロ」を達成するまでは、大規模投資は実行しないことを基本方針としていきます。
孫は、多くの人がソフトバンクに対して「経営が荒い、借入金が多い」という残存イメージを抱いているようだが、今後はそのイメージを一新していきたいと語りました。
続いて孫は、ソフトバンクが大きな先行投資の時期から、より安定した投資回収時期に入ったと説明し、これまで横ばいが続いていた配当を2009年度から倍の5円に増配すると発表しました。また、純有利子負債半減を目指す2011年度と、ゼロを目指す2014年度にも、増配を予定しています。
決算説明会後半、事業の説明に移ると、孫はまず移動体通信事業のキャッシュフロー経営について説明しました。2009年はモバイルインターネットコンテンツをテーマとし、データARPU*2のさらなる増大とモバイルインターネットの普及に取り組んでいきます。具体的な取り組みの一つとして、本来月額5,000円相当のコンテンツが月額315円で利用できる「コンテンツ得パック*3」について説明しました。孫は、コンテンツ得パックの魅力を、人気の高い複数のコンテンツが一度に登録でき、一つ一つ登録する手間が省けることと解説し、提供開始以来急速に登録者数を伸ばしていると説明しました。
主な質疑応答は、次の通りです。社長の孫がお答えしました。
設備投資は十分に行っているということだが、4月19日に大規模な通信障害が発生した。設備投資は本当に問題ないのか。
先日の一時的な通信障害は、設備投資を怠ったせいで起きたのではなく、人為的な設計ミスによるものだということが判明しました。対策の目処は立っており、今後は少なくとも同じ原因で障害が起こることはありません。
今年度の基地局増加への具体的な計画は。
基地局は、すでに約58,000局を建設しており、大規模のもの、室内のものさまざまなものがありますが、今後も着実に増やしていきたいと思います。我々は800MHz帯を持っておらず、2GHz帯の電波は十分に届かない、という問題点を抱えています。例えば、800MHz帯の電波を持っているKDDIの基地局数は2万数千局でお客様をカバーしているのに対し、我々の基地局数は58,000局です。
近いうちに700~900MHzの周波数も、イコールフッティングとして我々にも割り当てられるだろうと思っています。NTTドコモとKDDIだけが割り当てられている電波についても、今後は改善がなされると考えていますし、今後は1.5GHzの周波数も許認可を受けて、カバーエリアも確実に増やし、ネットワークのキャパシティも増やしていきたいと考えています。それらを勘案しても、2009年度の設備投資は今年度と同額程度、もしくは少なめに設定してもまかなえるでしょう。つまり、設備投資へのピークは過ぎたということです。
また、設備投資の大半は、ハイテクとはまったく関係ない「鉄塔」です。しかし、現在それらの鉄塔(ローテク)に関わる設備投資は既に終わっており、今後、ハイテクの技術進展に関わる追加の設備投資は思ったほどかからないと考えています。
ARPUが底を打つということだが、その後は上昇に転ずると理解してよいか。
はい。もともとそのようなつもりで申し上げました。
4月19日の通信障害により、ユーザはソフトバンクに対し不安を抱いていると思うが、それについてはどのように考えているのか。今後も設備投資をしなくてはいけないときはやって欲しい。
今回の通信障害は設備投資額の問題ではなく、人為的な設計ミスによるものです。今後の対策の目処は立っています。
しかし、今回人為的な設定ミスにより通信障害が起きたことは事実であり、今回のことは非常に重く捉え、改善していきたいと思っています。
増配をするということは非常に良いことであると認識しているが、まだ配当政策が十分ではないと思う。できることなら、11年度と14年度に引き上げ、と数年毎に実施するのではなく、来年以降も毎年継続的に増加してほしいと思うが、それについてはどう思うか。
11年度と14年度には確実に増配することをお約束します。しかし、それ以外の時期に増配することはお約束いたしません。重要なのは、有利子負債を減らすことだと考えています。仮に純有利子負債を2年度後(11年度)までに半減、5年度後(14年度)にはゼロにするという予定が数ヵ月ほど前後しても、確実にそのコミットメントを実現することをお約束します。
NTTドコモの解約率が低下し、0.5%を切っている。今後のソフトバンクの成長にとって、ドコモの顧客を切り崩すことが大きな課題だと思うが、それについてどのように考えているのか。
新規のお客様がほとんどおらず、既存のお客様が大半を占める会社はその分長期 間にわたりお客様にご満足いただけている、ということになり、解約率は低くなります。それに対し、新規のお客様は、どうしても解約する傾向が高くなります。当社も、既存の解約率は低いのですが、1年間でこれだけ新規が増えていると、解約率はやや高めです。
また、今年で第2世代携帯電話(2G)サービスを終了するため、その分の解約が加わり、多少解約率が上がるかもしれません。
さらに、NTTドコモの解約率が1%弱から0.5%になっているのは、2年契約の自動更新という見えない拘束期間があるからだと考えています。2年契約が終了すると、その1ヵ月後、自動的に新たな2年間の契約が更新され、実質ペナルティなしで解約できる期間が1ヵ月しかありません。
我々は今のところ、一部を除いて、そのような拘束期間を設けていません。そのような拘束期間を作ることが良いとは思いませんが、KDDIも同じような体制をとっており、日本の携帯電話ユーザの8割が、このような自動契約を当たり前とする状況になりつつあるので、我々も場合によってはそれに従うことがあるかも知れません。そうすれば解約率は低下しますが、現在のところ、まだ十分な意思決定はなされていません。
解約率が全体的に低下すると、今後の携帯電話業界の(成長の)ハードルにならないか。
はい。一社も成長できなくなります。しかし、新しい端末やサービスを打ち出すことにより、中長期で見れば、我々のサービスに乗り換えてくれるお客様もいるはずです。ちなみに、「iPhone™ 3G」をご利用いただいているお客様の半分は他社からソフトバンクモバイルに移ってくださった方々で、さらに、現在iPhone 3G の売り上げは非常に伸びています。このように、素晴らしいサービスが出てくると、状況は変わっていくでしょう。また、法人マーケットやマシン・トゥ・マシンのマーケットという新しい市場にも期待できます。
14年度まで大規模投資はしないといったが、LTE*4などの高速インフラへの投資はいつ頃開始していく予定か。
LTEに対しても、積極的に取り組んでいきます。しかし、先ほども申し上げたとおり、ハイテク機器にはそこまでお金はかからないので、我々の設備投資の計画内で十分にやっていけます。LTEへの設備投資は、LTEに対応する端末が行き渡って、初めて意味のあるものになるので、方向性としては積極的にやっていくが、急激に投資するものではありません。時期については、2、3年以内に投資を始めていく予定です。
ドコモが既存ユーザの囲みを強化することにより、顧客を増やすことが難しくなってきたと思うが、シェアが3位のままでも良いと考えるか。
利益を犠牲にして、無理に顧客を獲得しようとすると、業界が荒れるので、着実に獲得していきます。我々はまだ業界3位で、2割のシェアしかありませんが、前向きに考えれば残りの8割は新規の潜在マーケットということです。2、3年で実現できるというわけではなく、5年、10年から20年かけて計画的に実現していきたいと思います。無茶をするつもりはありません。
純有利子負債について「5年間で完済」と宣言しているが、半年前の決算からどのような経緯があって、今回そのような宣言をするに至っているのか。
ソフトバンクもそのようなステージに来たということです。去年、当社はフリーキャッシュフローが1,700億の赤字でしたが、この半年間でとても大きな進展がありました。
フリーキャッシュフロー改善の大部分は「その他の項目」部分が増えたことによるもののように見えるが、それについて説明して欲しい。
端末の仕入れ・支払いサイクル、その他の売掛金で改善が見られたためです。大切なことは2008年の一年間で、1,800億円のフリーキャッシュフロー、2009年は2,500億円のフリーキャッシュフローがあることです。さらに、2009年から、来年、再来年の3年間累計でフリーキャッシュフローが1兆円以上になることです。また、これは見せかけのものではなく、継続する形でのフリーキャッシュフローを見込めるということです。
フリーキャッシュフローが改善する見込みとして、その大部分がテレコムとヤフーから発生し、ソフトバンクモバイルに関しては、フリーキャッシュフローと有利子負債の返済バランスがタイトな状況が続くと思う。各子会社で発生するものを、どのように最適配分するのか。また、増配に向けてどのように制度化していくのか。
ヤフージャパンは上場会社ですが、我々の連結にフリーキャッシュフローで貢献しているのは年間700億円前後です。つまり、この3年間でヤフーがソフトバンクに貢献しているのは全体の20数%、年間700~800億円ほどです。それ以外は、全てソフトバンクの100%子会社からもたらされたものです。例えば、近い将来に通信3社を合併させるなど、色々な方法があります。ヤフーのように上場しているグループ会社は、それぞれの経営陣が判断を下しますが、私が社長を務めている通信3社に関しては、私が判断を下します。連結としてフリーキャッシュフローが上がるのならば、合法的に、かつリーズナブルな計上方法を選びます。
純増数をエリア別に見ると、東名阪以外の地域が弱いが、今後もこの傾向が続くのか。
NTTドコモやKDDIと違い、800MHz帯を持っていないため、地方の一部地域において、電波が十分ではありません。しかし、新しい技術や地方でのさまざまな営業政策を準備しており、その手立ては考えています。
新年度の広告宣伝費は増やすのか。また、新しい戦略などは考えているか。
すでに限られた予算の中で、我々の予想以上にうまく行っているので、そのやり方を崩すようなことはしません。都市部から順々に当社のブランドイメージが塗り替えられていっており、徐々に地方にも広がっていくはずだと考えています。
iPhone 3Gについては、現在は圧倒的に東名阪のお客様が多いですが、これも徐々に変わっていくはずです。iPhone 3Gは発売してから右肩上がりで、現在も8Gと16Gを両方合わせるとNo.1人気機種といえるほどです。このように、革新的なサービスや機種は、都心部発で、その後地方へと広がっていきます。
2009年度は増収増益ということだが、具体的な根拠はなにか。
端末販売台数がどうなるかはわかりませんが、通信料は増加傾向にあり、割賦の満期を迎えたお客様の月月割も終了するので、今後通信料は増加するはずです。他の事業分野においても、我々の扱っているものはほとんどがインターネット事業なので、今後も十分やっていけると思います。
2009年度は、端末の販売は増加するのか。減少するのか。また、解約率、ARPUの予想はどうか。
解約率については、来年3月で2Gサービスが終了するので、それにともなう解約が上乗せされます。しかし、全体的な解約率は横ばいか、場合によっては弱冠上向く可能性もあるでしょう。いずれにせよ、極端な変動はありません。
ARPUについては反転し、上向くはずです。台数については、やってみなくては分からないというところがありますが、極端な増減はないと考えています。
LTEへの投資額はいくらか。1千億円レベルなのか。または数百億レベルなのか。
LTEへの投資は累計で1千億は超えると思いますが、何年間かに分けて投資していきます。3Gへの投資が今までより減少していくので、今のCAPEXからあまり変わらない感じで投資を進めていくことが出来るはずです。
2008年度決算が終わると孫社長の株の持分が変わるということがあったが、今後の方向性として、孫社長の持分はどのように変化していくと考えていればよいか。
あくまでも、私個人の名義で持っているものを親族の持ち株組合に移行した、という話です。今後も個人での持ち株をさらに変動するなど、そのようなことは考えていません。
接続料問題への見通しについて、ソフトバンクとしての主張を聞かせてほしい。
日本においては接続料が透明化されていないとのことで問題視されています。我々はいささかの躊躇もなく、全て透明化すべきと主張しています。この議論の中で、接続料の算定根拠として、営業費用がどの程度入っているかがポイントとしてあります。当社は10%程度ですが、NTTドコモやKDDIは30~40%含まれている可能性があります。必要に応じて徹底的に話しあうべきだ、というのが我々のスタンスです。
またNTT東西の接続料が、先進国の固定通信の中でも非常に高いので、この点についても議論すべきだと思います。
S-1バトルについて、海外展開や収益目標額、これまでのユーザの反応など、教えていただきたい。
現時点で、海外からの募集は考えていませんでした。しかし、国内で名の売れているお笑い芸人たちが、5月には続々と参加予定なので、内容が大幅に改良されています。それと同時に、お客様の満足度も上がってきています。
海外といえば、ボーダフォン、チャイナ・モバイル、ベライゾンと4社連合で新しい情報サービスのビジネスモデルも構築中です。この、4社連合のユーザ数は、今日現在で10億人規模となっており、日本へ海外のお笑い芸人を呼ぶ、というよりは今後は日本から海外へ情報発信、または新しいビジネスモデルの提案をしていくことはあると思います。
11年度と14年度について、負債が減っている中で、配当性向についてどのように考えるのか。
公言したことは着実に実現していきたいと考えています。配当性向については、経営における選択肢を残しておきたいので、今の段階では回答するのにまだ時期が早いと考えています。やっと収穫期に入ったところなので、これから配当も着実に増加させていく見通しです。
純有利子負債を11年度に半減、14年度にゼロへ、ということだが、この間に発生するフリーキャッシュフローは全て負債の返済に当てると考えてよいか。
借入がゼロになるまで、大規模な設備投資は行いません。フリーキャッシュフローの大半は返済に当てていく予定です。純有利子負債がゼロになった後、数千億規模で継続して出てくるフリーキャッシュフローは更なる成長のための投資、配当、内部留保の3つの柱に当てていくようになります。
ADSLのユーザ数が減少傾向にある中、ブロードバンドの将来についてはどのように考えるのか。
私自身、昨年iPhone 3Gを使いはじめてから、インターネットの利用頻度は3~5倍に増えたにも関わらず、PCでのインターネットの利用頻度は十分の一に減りました。そのように考えると、光ファイバーはどれくらい必要なのかという気がしています。最先端のインターネットユーザは、モバイルで全て済ましてしまい、光ファイバーを一生懸命に使わなければいけないという人は、遅れている人なのかもしれません。
今後は、ADSL から光ファイバー。そして光ファイバーからiPhone 3Gという時代がくるのではないかということも考えています。自宅でWi-Fiを使うには光よりADSL、またハイビジョン動画などの大規模ファイルを見るときなどは、光が役に立つこともあります。現在ブロードバンドは収穫期に入っており、十分利益が出ている上に、光やADSLの使い方は人それぞれケースバイケースであり、ブロードバンドの利用シーンと技術の最適ミックスを人によってうまく使い分けていくことが大切です。
また、私は先ほどからiPhone 3G といっているのは、決してiPhone 3Gのみの機種を意味しているのではなく、全ての携帯電話はiPhone 3G化しているという意味なので、誤解のないようにお願いします。
フリーキャッシュフロー(FCF)=営業キャッシュフロー+投資キャッシュフロー。
Average Revenue Per User:契約者1人当たりの平均収入。
「コンテンツ得パック」の詳しい情報はWEBサイトでご覧下さい。
long term evolution:携帯電話の高速データ通信の規格の1つ。OFDM、MIMOなどの新規技術を用いたW-CDMAの発展系のシステムで、データ通信速度の高速化、接続遅延の短縮や周波数利用効率の向上など、全般的なパフォーマンスの向上を目的としており、W-CDMAの標準化団体である3GPP において精力的に標準化が進められているものです。
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