株主・投資家情報(IR)
2011年3月期 第3四半期 決算説明会
ソフトバンク株式会社(以下、ソフトバンク)は2011年2月3日に、2011年3月期 第3四半期決算を発表しました。同日都内のホテルで開催した決算説明会の模様をお伝えします。決算説明会の模様はオンデマンド配信していますので、ぜひご覧ください。また、より詳細な主要経営指標については、決算説明会翌日に開催したアナリスト説明会の資料などをご確認ください。
2011年3月期 第3四半期 決算説明会
2011年2月4日 2011年3月期 第3四半期 決算アナリスト説明会
決算説明会の模様
決算説明会には代表取締役社長の孫、取締役の笠井、財務部長の後藤、経理部長 兼 内部統制室長の君和田のほか、ソフトバンクモバイル株式会社(以下、ソフトバンクモバイル)CFOの藤原が出席しました。
今回の決算説明会の模様は、ユーストリーム(Ustream)とツイッター(Twitter)、ニコニコ生放送でも同時中継されました。
説明会が始まると、孫は「スポーツの基本は体の軸。軸をしっかりさせ、それを中心に手足を動かすことが大切。ソフトバンクの軸も以前に比べかなり堅実なものになってきました」と述べ、ソフトバンクの経営の軸が安定してきたことに自信を見せました。
「営業利益予想を1,000億円上方修正します」
決算内容の詳細な説明に移ると、孫は期初の営業利益予想5,000億円を1,000億円上方修正し、6,000億円にすることを発表しました。
2011年3月期 第3四半期のソフトバンクグループの連結業績は、売上高が2兆2,499億円(前年同期比110%)、EBITDA*1が7,005億円(同117%)、営業利益が4,821億円(同132%)、そして経常利益が3,999億円(同142%)でした。通信3事業(移動体通信事業、ブロードバンド・インフラ事業、固定通信事業)の業績が好調に推移したことが、連結ベースでの増収増益をけん引しました。
純有利子負債*2の残高については、SBMローン*3の返済が順調で、2006年の借入当初に金融機関と取り決めた支払予定よりも早いペースで進んでいます。また、ソフトバンクが掲げる純有利子負債返済目標に変更はなく、2012年3月末には2009年3月末の半分の水準に、2015年3月末にはゼロにすることを改めて説明しました。
移動体通信事業は純増契約数が順調に増加しており、4~12月期の純増が4年連続でNo.1になりました。ARPU*4も引き続き好調で、データARPUにおいて、初めてKDDI株式会社(以下 KDDI)を逆転しました。
「残された弱点はただ1つ。ネットワークの改善に努めます」
「電波改善宣言」の進捗についての説明に移ると、孫は電波改善に対する強い決意と新たな目標について語りました。孫は、ソフトバンクモバイルが掲げる、2011年3月末までに基地局を約12万局まで増やす計画について、「12万局でもまだまだ不満。2011年9月末までに14万局に増やしたい」と新たな計画を発表しました。
さらにソフトバンクモバイルは、今まで全く電波が繋がらなかった走行中の地下鉄内でも、メールの送受信などのデータ通信サービスが利用できるように、社団法人移動通信基盤整備協会を通じて地下鉄トンネル内のアンテナ設置を実施し、2011年中に主要路線の整備完了を目指します。これは、ツイッターを通じて孫へ寄せられたお客様の声をきっかけとした取り組みです。
ソフトバンク真の勝利の方程式
次に孫は、2011年3月期 第2四半期 決算説明会(2010年10月28日開催)で発表した「ソフトバンク 勝利の方程式」について改めて解説し、「この方程式こそ、我々が数年前から仕掛けてきた戦略であり、競合他社を相手に一社だけ増収増益を続けることができた理由」と語りました。「X+X=X(ソフトバンク勝利の方程式)」は、「スマートフォンNo.1」+「スマートパッドNo.1」=「モバイルインターネットNo.1」を表しています。
ソフトバンクモバイルの「スマートフォンNo.1」「スマートパッドNo.1」戦略の軸であるiPhoneとiPadの契約は引き続き好調に推移しており、iPhoneは2011年1月の主要スマートフォン新規顧客獲得数で1位を獲得しました。また、iPadは2010年12月の家電量販店における主要スマートパッド販売台数シェアで81%*5を獲得したほか、法人のお客様も引き続き増加しています。
ここまで説明すると孫は、「これが方程式の第1部、そしてここからが方程式の第2部です」と述べ、スクリーンに映し出された新たな「X+X=X」という方程式を「ソフトバンク真の勝利の方程式」と紹介しました。この方程式は、1つ目の“X”が「モバイルインターネットNo.1」を、2つ目の“X”が「アジアインターネットNo.1」を、そして3つ目の“X”が「世界インターネットNo.1」を表しており、「モバイルインターネットNo.1にアジアインターネットNo.1を加えることで、世界インターネットNo.1になる」というソフトバンクグループの信念が込められています。
アジアインターネットNo.1
「アジアでこれだけ数多くのインターネット企業を持っているのはソフトバンクだけ」
アジアにおけるインターネット事業の説明に移ると、スクリーンにはソフトバンクグループである中国インターネット企業のロゴを集めたスライドが投影され、孫は胸を張りこう述べました。
中国のインターネット人口はすでに日本と米国の同人口を上回り、巨大な市場へと成長しています。ソフトバンクはそのような中国インターネット市場を早くから重要視し、その中で最も重要な3つの企業に出資をしています。まず2000年にアリババドットコム(Alibaba.com)、2003年にタオバオ(Taobao)、そして2008年にレンレン(Renren Inc.)です。
アリババドットコムは登録ユーザ数が順調に伸びているほか、同じアリババグループのタオバオが、中国オンラインショッピングサイトNo.1となっています。同じくアリババグループで、オンラインペイメントサービスのアリペイ(Alipay)は、米国最大のオンラインペイメントサービスであるペイパル(PayPal)の2.4倍ものユーザ数を誇り、現在も着実にその数を伸ばしています。
レンレンは、中国最大のSNSサービスを展開しており、そのユーザ数は1.1億人に上ります。その他にもインターネットの新サービスとして注目されているクーポン共同購入サービスにもいち早く参入し、昨年ヌオミ(Nuomi)を開始しました。ヌオミは2010年10月に中国国内のクーポン共同購入サービスにおけるマインドシェアランキングでNo.1に輝いています。
中国最大のオンラインテレビサービス
説明会の後半、中国最大のオンラインテレビサービス「PPTV」を運営する「PPLive」(シナキャストコーポレーション)へ新たに出資したことを発表しました。PPTVは中国全土の120のテレビ局と提携し、ニュースなどのLIVE映像のほか、テレビドラマ、スポーツ、映画などのビデオオンデマンドを無料(一部有料)で提供しています。そのチャンネル数は2万チャンネルと膨大で、月間アクティブユーザ数は1億人を突破、さらにユーザの平均視聴時間が2時間33分*6と、中国国内で圧倒的な規模を誇っています。さらに孫は、「オンラインテレビは従来のテレビと違って双方向のコミュニケーションが可能。このビジネスモデルの今後を想像すると鳥肌が立ちます」と、PPTVのこれからの成長に対する期待を語りました。
最後に孫は、ソフトバンクグループの中国インターネット企業が「イーコマース」「ペイメント」「SNS」「クーポン共同購入」「オンラインテレビ」の5つのジャンルにおいて全てNo.1に位置していると説明しました。
「これからはアジアを制覇したものが世界を制覇する」
孫はそう語り、今後もますますアジアにおけるインターネット事業の地固めを推し進めることを宣言しました。
質疑応答
主な質疑応答は、次の通りです。社長の孫がお答えしました。
ソフトバンクの中国へのアプローチの哲学について、もう一度聞かせてほしい。「出資」という事実以上に、理念や哲学において、その他の中国への投資案件との共通点は何か。例えば、昨年12月に上場したYouKu(ヨウク)*7は既に時価総額3,000億円と言われているが、PPLiveユーザの1日当たりの視聴時間は既にYouKuの5倍はある。PPLiveにはどのような価値を見出して出資したのか。
我々の中国における事業展開は、単なる「投資」ではありません。我々は「戦略的企業集団」を目指し、30年ビジョンにおいても「同志的結合をする=情報革命で人々を幸せにする」という志を共有する関係を築いていくと発表しています。上下関係で彼らを支配するのではなく、同志として共に志を実現していきます。
ですから、持株比率においても多くの場合、株式は35%前後保有しています。筆頭株主になることは多いですが、それは半分以上である51%を目指すものではありません。中国の若い創業者にリーダーになってほしいと思っています。我々は自らを、彼らに戦略的支援を行う「パートナー」であると位置づけています。彼らの株式を半分以上取得しようと思ったことは一度もありません。その結果、彼らは自分の会社として一生懸命事業を行います。我々は彼らに対し経験・資金・ビジョンを提供しています。ですから、単なる短期的な「投資」をしているわけではないのです。
YouKuがアメリカのナスダックで3,000億~4,000億円の時価総額で上場したそうですが、PPLiveのユーザは、YouKuユーザよりも、平均視聴時間が格段に長いです(YouKuの平均33分に対してPPLiveは平均2時間33分)。今回我々はPPLiveに対し、2億5000万ドル、日本円では約200億円を投資しています。PPLiveはYouKuよりビジネスモデルにおいてもユーザの利用実態においても優れていると思っています。
世界展開を目指すPPLiveは、資本的な支援以外に、レンレンやアリペイ、アリババをはじめ、日本やアメリカにもビジネスパートナーを持つ我々ソフトバンクに価値を見出し、認めてくれました。PPLiveは、既に2万チャンネルを提供していますが、今後世界では、あらゆる言語に対応し、いずれは100万チャンネルを提供できるような時代が来るかもしれません。
主に個人が投稿するYouTubeも良いですが、プロが作ったコンテンツをPPLiveで視聴したいユーザは多いはずです。やはり長時間視聴するのであれば、人々はプロフェッショナルなものを好んで、地上波のテレビではなく、双方向のオンラインテレビに戻っていくと思います。そのような意味で、今回のPPLiveへの出資は大変意味があります。PPLiveの事業内容の詳細については、未公開会社なので公表できませんが、素晴らしい会社です。
世界に比べると、日本のスマートパッドの出荷台数はまだまだ少ない。今年は去年以上に普及するのか。今後の普及をどのように予測しているのか。
今から数年後、このような説明会会場にノート型パソコンを持ってくる人はひとりもいなくなると思います。スマートパッドにキーボードを挿してタイピングをするような時代になります。一般の人たちは、キーボードすら使わなくなると思います。日本はまだ遅れていますが、必ず皆スマートパッドを使用するような時代が来ると信じています。
現状でiPhone、iPadに依存した経営状態が続いているように見えるが、独占契約が崩れたとき、またはiPhoneの次の機種が魅力的でなかったときに備えて何か対策は考えているか。
アップル社とはもともと独占契約は行っていません。しかし、アップル社との関係は非常に良好で、常にコミュニケーションを取っています。我々としては現在の関係に満足しています。
「iPhoneの次の機種がもし魅力的でなかったら」とのことですが、全くその心配はしていません。iPhoneは非常に優れた機能を持っていますし、アップル社の社員達は専門集団であり、常にイノベーションを続けています。まだ色々な意味で、iPhoneやiPad、iOSは他の機種に比べ進んだ点があるので、当分リードは続くと思います。
「人材の育成・確保」という観点より「ソフトバンクアカデミア」を開校しているが、これまでの手応えを教えてほしい。孫社長にとって「リーダー」とはどのような人が理想か。
既にグループ内のアカデミア生を200名程度集めて講義を始めていますが、大変面白いです。20代、30代、40代の目を輝かせた後継者候補である優れたアカデミア生たちと頑張っています。社外からも応募が一万人以上ありました。現在最終選考の面接に私も加わり、110名から100名に絞っているところです。将来有望と思える後継者候補がたくさんいます。これから10年、20年かけて、組織的に後継者育成の仕組みを作って行こうと心がけています。1年や2年で完成させようというのではなく、まずは仕組みを定着させたいです。
グループ社員へiPhoneおよびiPadを支給したとの事だが、孫社長にとって理想の組織の在り方とは。
全社員へiPhone、iPadを配布したことにより、業務の生産性が非常に上がりました。社員自らが最先端のモバイルインターネットに触れて、新しい企画・サービス・料金体系・ネットワークについてアイデアを出し、全ての業務において生産性を上げています。
当社は全社員が最先端の情報革命を自らが体験するという意味で、ツイッターもかなり普及していると言えます。現在当社では、ツイッターアカウントを取得している社員が全体の9割以上います。こんな会社は他にありません。そして、その会社の社長自らが毎日ツイートをしています。おかげさまで、一般の方々のご要望に対して、「やりましょう」「できました」などをツイートする(つぶやく)ことで、状況をご報告できる仕組みができました。これにより、業務の改善速度が大幅にあがりました。
3月に発表した「電波改善宣言」も、ツイッターで寄せられる日々のお客様の声を聞いて、当初の計画である12万局をさらに増加させることを決心しました。企業カルチャーを変えるためにも、さらに進化させるためにも、自ら最新テクノロジーに触れています。本日は決算説明会ですが、会計的数字よりもこのような会社の中身の報告の方が本当は大切ではないかと思うほどです。
第3四半期のみではなく、すでに移動体通信事業の利益率が改善しやすくなってきている。累計で見ても株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ並みの利益率に近づいていて、KDDIを抜く勢い。以前、さまざまな背景から営業利益率としては3割程度いけるとのコメントがあったが、今もその考えは変わらないのか。これまで22%と言う高水準は聞いたことが無い。来年も持続的な利益率の改善は期待できるのか。
1年単位で見るのではなく、中長期的に見るのなら、順調に上がっていくと思います。若干の誤差はありますが、利益率30%と言うのは個人的には十分有り得ると思っています。
近々昨年度のGDPの発表が予定されており、日本は年間においても中国にGDPが追いつかれることがほぼ確実である。この現状について、中国で事業を拡大している企業の経営者としてどう思うか。
以前より、私は「2010年度に中国のGDPは日本を抜く」と言っていましたので、これは予想通りです。8年後くらいには、中国のGDPは日本の倍になると思っています。日本のGDPに対し、中国は「一度抜いたことがある」というのではなく、継続して抜き去っていくようになります。しかし、そこで大事なことは、それを悲しいと思うか、チャンスと考えるかです。
日本はアジアに位置しています。アジアには、中国だけではなくインド、タイ、インドネシア、ベトナムもあります。これらの国の国民の平均年齢は低く、しかも人口が伸びており、テクノロジーもどんどん改良されています。アジアという市場は伸びているのですから、「日本もアジアの一員」と考えれば悪い状況ではありません。私は日本No.1を目指しているのではなく、アジアNo.1を目指しており、それは結果的に世界No.1になります。中国の同志的結合をしているグループ企業の彼らとともに、戦略的提携をして一緒に成長していきたいと考えています。
多くの日本企業が、同じようにそれを前向きに考えれば、日本経済は明るくなります。日本を率いるリーダーの皆様が、それについてもう少し力を込めて熱く国民に語りかけていくと、国全体が明るくなると思っています。
他社がますますAndroid™(アンドロイド)に力を入れているが、ソフトバンクモバイルはAndroidついてはどのように考えるか。今後Android重要性は増すか。ソフトバンクモバイルとしてはAndroid上でコンテンツ流通のための共通プラットフォームを作る予定か、または海外や日本メーカーより仕入れたものをシンプルに販売するのか。
他社には他社の具体的な戦略がありますが、我々の戦略は少し違います。テクノロジーの最先端を求めており、「さすがソフトバンクモバイルはモバイルインターネットをよく理解している」と言われるような使い方を提案したいと思っていますが、まだ企業秘密なので詳細はお話できません。当然のことながらAndroidにもしっかり力を入れていきます。
しかし、多くの方々が実際にiPhoneやiPadを触ってみて、はるかに進んでいると感じるのは事実です。当面の間はiPhoneとiPadを我々の情報革命の最大の武器として使いたいと思います。
純有利子負債削減に対するコミットメントに変更はないというが、設備投資や株主関連で何か変化があれば教えてほしい。
既に発表しているもの以外、大きな変化はありません。
EBITDA=営業損益+減価償却費+のれん償却額+営業費用に含まれる固定資産除却損。
純有利子負債=有利子負債-手元流動性
有利子負債:短期借入金+コマーシャルペーパー+1年内償還予定の社債+社債+長期借入金。リース債務を除く。ボーダフォン日本法人の買収に伴う事業証券化スキームにおいて発行された社債(銘柄:WBS Class B2 Funding Notes、発行体:J-WBSファンディング)のうち、当社が2009年度に取得した額面270億円を除く。
手元流動性:現金及び預金+流動資産に含まれる有価証券(当社米国子会社が保有するYahoo! Inc.株式を除く)。SBM借入(SBMローン):ボーダフォン日本法人の買収のために調達した資金を、2006年11月に事業証券化(Whole Business Securitization)の手法によりリファイナンスしたもの。ボーダフォン日本法人の買収に伴う事業証券化スキームにおいて発行された社債(銘柄:WBS Class B2 Funding Notes、発行体:J-WBSファンディング(株))のうち、当社が2009年度に取得した額面270億円を除く。
ARPU(Average Revenue Per User):1契約当たりの平均収入。収入および契約数にはプリペイド式携帯電話および通信モジュールを含む。
外部調査会社による主要家電量販店での販売台数調査をもとに当社にて作成。iPadはWi-FiモデルとWi-Fi+3Gモデルの合計。
iResearch(2010年12月時点)
YouKu(優酷網):中国の動画共有サービスサイト
iPhone、iPadはApple Inc.の商標です。
iPhone商標は、アイホン株式会社のライセンスに基づき使用されています。
Androidは、Google Inc.の商標または登録商標です。