株主・投資家情報(IR)
2014年3月期 第3四半期 決算説明会
ソフトバンク株式会社(以下「ソフトバンク」)は2014年2月12日に、2014年3月期 第3四半期決算を発表しました。同日都内のホテルで開催した決算説明会の模様をお伝えします。決算説明会の模様は動画配信していますので、ぜひご覧ください。また、より詳細な主要経営指標については、決算データシートなどをご確認ください。
2014年3月期 第3四半期 決算説明会
決算説明会の模様
決算説明会には代表取締役社長の孫、代表取締役副社長の宮内、常務執行役員 財務部長の後藤、執行役員 経理部長 兼 内部統制室長の君和田のほか、ソフトバンクモバイル株式会社(以下「ソフトバンクモバイル」)取締役専務執行役員 兼 CFOの藤原が出席しました。今回の決算説明会の模様は、当サイトやUstream、Twitter、ニコニコ動画などでも同時中継されました。
登壇した孫は「ソフトバンクが株式公開を果たしてからちょうど20年※1。昨日のことのようでもあり、思えばずいぶんと遠くまで来たようにも思う」と述べ、これまでの20年の歩みを振り返りました。この20年で、ソフトバンクの売上高は600億円から100倍の6兆円以上、営業利益は30億円から300倍の1兆円以上(2013年度予想)と大幅に拡大し、また時価総額も約2,000億円から50倍の9兆円※2に成長しました。孫は「しかし、われわれの時価総額も世界ではまだ81位※2」と述べ、「この程度ではまだ満足していない。ソフトバンクはやっと助走が終わり、ここから本格的な拡大期に入る」と、今後のさらなる成長に意欲を見せました。
決算概要
ソフトバンクは2014年3月期 第1四半期(2013年4~6月期)から国際会計基準(以下「IFRS」)を適用しています(移行日:2012年4月1日)。また、2013年3月期 第3四半期(2012年10~12月期)および2013年3月期(2012年4月から2013年3月までの1年間)についても、IFRSに準拠して表示しています。IFRSに関する変更点の詳細は、「平成26年3月期 第3四半期 決算短信」の2ページおよび67ページをご覧ください。
2014年3月期 第3四半期のソフトバンクグループ連結決算は、売上高が過去最高の4.6兆円(前年同期比94%増)、EBITDA[営業利益(償却前)]※3が10期連続最高益の1.3兆円(同49%増)、営業利益が8期連続最高益となる9,242億円(同46%増)を記録しました。また純利益でも4,882億円(同58%増)と5期連続で過去最高益を更新し、全ての指標において過去最高の業績となりました。2014年3月期 第2四半期より連結決算に加わった、Sprint Corporation(以下「スプリント」)の売り上げや、株式会社ウィルコム(以下「ウィルコム」)やガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社(以下「ガンホー」)の子会社化に伴う一時益を差し引いても過去最高の業績を記録しています。また同業他社である株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ(以下「NTTドコモ」)およびKDDI株式会社(以下「KDDI」)との比較でも、売上高・営業利益・純利益の全ての指標において両社を上回る好決算となりました。
孫はソフトバンクが移動通信事業に参入した当時を振り返り、「あの頃は雲の上の存在だったNTTドコモとKDDIだが、この7~8年で大きく上回ることができた。われわれがKDDIの営業利益を上回ったときは、『一時的なものだ』などと言われたが、それからもわれわれは一貫して利益を増やし続けてきた」と胸を張りました。ARPUについても触れ、「他の2社がARPUを下げている中、われわれは歯を食いしばってARPUを維持してきた」と述べ、契約数を大幅に伸ばしながらもARPUを維持してきたことが、売上高や利益の好業績に結びついていると説明しました。
また、iPhoneがソフトバンクモバイル、NTTドコモ、KDDI3社からの併売になったことに関して、「各社との競争が激化しており、これまでのように簡単に利益が伸ばせるわけではないが、ソフトバンクモバイルは新たにやってくる困難に対して常に解決策を見いだし成長してきた」とし、「日本国内でも継続して利益を成長させるとともに、米国市場においても頑張っていきたい」と述べました。
なお営業キャッシュフローは、4,977億円で堅調に推移しており、純有利子負債※3がEBITDA[営業利益(償却前)]の何倍であるかを示す純有利子負債/EBITDA倍率についても、早期に低水準へ移行する見通しであると説明しました。
国内事業の状況
移動通信事業
移動通信事業の状況についての詳細な説明に移ると、孫は2013年9月にNTTドコモからiPhone 5s/5cの販売が開始されたことに触れ、当時危惧の念を持っていたことを率直に明かしました。しかし結果は、ソフトバンクモバイルがiPhone 5s/5cの累計販売シェアでトップ※4となり、「国内での最後の危機を乗り切った」と胸を張りました。
ソフトバンクモバイルの2013年の年間純増数は、344万件で2008年から6年連続でNo.1※5となりました。また、イー・アクセス株式会社(以下「イー・アクセス」)とウィルコムを合わせた国内グループの純増数は410万件を突破し他社を大きく上回っています。さらにスプリントを足して日米合わせた累計契約数では、2013年12月末に1億件の大台を超えました。孫は「これからは日本国内だけではなく、ソフトバンクグループ全体を視野に入れ、全体最適化を図るためにどのように駒を進めて行くかを考える」と述べ、世界規模での携帯電話端末や通信機器の調達をはじめ、さまざまな面でグループの総合力を生かしたスケールメリット(規模の経済)を発揮していくことを強調しました。
ソフトバンクモバイルはiPhoneの販売が目立ちますが、こうした好調な純増の背景にはAndroid™ 搭載スマートフォンの販売も寄与しています。ソフトバンクモバイル、イー・アクセス、ウィルコムが販売するAndroid 搭載スマートフォンの新規販売シェアは、NTTドコモとKDDIを押さえ堂々の業界No.1※6となっています。
今後、ブロードバンドは固定通信から移動通信へと移り変わり、音声通話も高速通信であるLTE※7網を利用したデータ通信(パケット通信)で行うVoLTE(Voice over LTE)へ移行するなど、音声通話もデータ通信の一部に含まれる時代になると予想されています。当社はその時代を見据え、先般「VoLTE時代の革新的な料金」として新定額サービスを発表しました。孫はこの新しい定額サービスについて、「5分以内の通話なら、固定電話にかけても、他社の携帯電話にかけても月1,000回までは定額料金に含まれる。新しい時代の料金体系として、われわれが日本で初めて提供したい」と説明しました。
法人市場のさらなる開拓
続いて、ソフトバンクグループの法人市場における取り組みついて説明しました。日本におけるiPhone、iPad販売の先駆者であるソフトバンクグループは、法人市場でも大きな地位を占めています。
会場スクリーンには「iPhoneの法人顧客数が21万社超」「iPadの法人顧客数が10万社超」「Google Apps for Business獲得企業ID数(累計)は2012年の販売実績が世界一」と書かれた3枚のスライドが投影されました。ソフトバンクグループは、法人のお客さまに携帯電話端末や通信サービスと併せて革新的なソリューションを提供することで、法人市場に深く浸透しています。その事例の一つが、ソフトバンクテレコム株式会社(以下「ソフトバンクテレコム」)とヤフー株式会社(以下「ヤフー」)が展開する「ウルトラ集客」です。「ウルトラ集客」は、ヤフーが運営する国内最大のインターネットポータルサイトである「Yahoo! JAPAN」と、ソフトバンクテレコムが構築・運用する店頭設置型クーポン発券機を活用することで、消費者の来店を促進し購買拡大につなげるO2O※8(Online to Offline)ソリューションサービスです。孫は「われわれは日々ビジネスモデルを進化させている。単に金額の勝負だけではなく、複合的にビジネスを提供している。その結果、売上高や利益が伸びている」と述べ、ソフトバンクグループが提供する法人向けサービスの価値について説明しました。
移動通信事業の説明の最後に、ソフトバンクモバイルのネットワークについて報告しました。スマートフォンの音声接続率※9およびパケット接続率※10はいずれもNo.1を維持しており、「つながりやすさNo.1へ」の取り組みは順調に推移しています。もっとも費用が掛かる基地局用の鉄塔建設が一段落するため、設備投資額は2012年度、2013年度をピークに適切な水準になっていく見通しです。
インターネット事業の状況
ソフトバンクグループが「本業中の本業」と位置付けているインターネット事業も好調に推移しました。前年同期比9%増で創業以来最高益を更新し続けるヤフーを筆頭に、中国の電子商取引最大手のAlibaba Group、そしてスマートフォン向けゲーム「パズル&ドラゴンズ」のダウンロード数が順調に推移しているガンホーは、いずれも大きな成長率を示し、グループの連結決算に貢献しています。また昨年は、フィンランドのモバイルゲーム会社であるSupercell Oy(以下「スーパーセル」)がソフトバンクグループに加わり、Googleの「Google Play」で11カ月連続ゲーム売り上げ世界No.1※11を記録したガンホーと、Appleの「AppStore」で11カ月連続ゲーム売り上げ世界No.1※12を記録したスーパーセルという、まさに「モバイルゲームの両横綱」がソフトバンクグループの傘下となりました。スーパーセルは2013年10月に、Android 搭載スマートフォン向けにもゲーム「Clash of Clans」の提供を開始し、同年12月には世界3位となり売り上げランキングも順調に上昇しています。売り上げ世界1位の「パズル&ドラゴンズ」に迫る好調ぶりに対し、孫は「身内同士の戦いだが、うれしい限り」と喜びを語りました。
さらに、「モバイルインターネット世界No.1」の実現を目指していくにあたり、世界展開を強化していくため、中国のAndroid 搭載携帯電話端末向けモバイルアプリケーション検索エンジンである「豌豆?(Wandoujia)」の筆頭株主になったことを発表しました。中国では、スマートフォンの約9割をAndroid が占め、かつ「Google Play」以外の独立系のアプリケーション配信プラットフォームが7割を超えています。そんな中、Wandoujiaはインストール率が50%を超え、ユーザー数が3億人(2014年1月現在)と圧倒的な人気を誇っており、今後中国市場で事業展開する上で、アプリケーションを提供するための重要なポジションを築いたことになります。
スプリント事業の状況
説明会の後半、スプリントの状況について説明しました。孫は「ソフトバンクとスプリントの役員が1カ月に一度集まり、さまざまな議論をしている」と紹介しました。現在は主にソフトバンク側のノウハウがスプリント側に順次伝えられ、過去数年下降気味だったスプリントの業績は、サービス売り上げが昨年度の271億ドルから6%増の281億ドルとなり、また調整後連結EBITDAマージンが14.9%から16.9%になるなど業績は反転し、2014年度にはその勢いはさらに加速すると考えています。とりわけ同社は、ネットワークの増強を継続するため、設備投資を急速に行うことで改善を進めており、電話をかけた回数のうち通話ができなかった回数の割合を示す「呼損率」では、短期間で41%※13もの改善をみせています。また通信速度も13倍※14と急激に改善しており、ソフトバンクとスプリント両社の相乗効果が着々と現れています。
また、2014年1月に子会社化が完了した携帯電話端末の卸売りなどを展開するBrightstar Corp.(以下「ブライトスター」)のCEOであるMarcelo Claure氏が、スプリントの社外取締役に就任したことを報告しました。今後、ソフトバンク、スプリント、ブライトスターの3社でスケールメリットを追求していきます。
連結業績予想
説明会の最後に孫は、改めて2013年度と2014年度の業績予想をそれぞれ公表しました。2013年度の目標を「売上高6兆円以上、EBITDA[営業利益(償却前)]1.5兆円以上、営業利益1兆円以上(一時益2,539億円含む)」、2014年度の目標を「売上高7兆円、EBITDA2兆円、営業利益1兆円(一時益含まず)」と掲げるとともに、2014年度の目標について「2年間で倍増ということになるが、冒頭で20年間の成長を示したとおり、ソフトバンクグループの成長は今も決して止まっていない。ソフトバンクグループは未だ発展途上」とあらためて強調しました。そして「国内事業はまだまだ伸ばしていく。また、米国事業は反転してこれから利益を出していきたい。言い訳抜きで増収増益を実現させていきたい」と今後の抱負を述べ、説明会を締めくくりました。
1994年に店頭公開。東証一部上場は1998年
出所:S&P Capital IQ(2014年2月10日時点)
EBITDA=営業損益-企業結合に伴う再測定による利益-その他の営業利益+減価償却費及び償却費。EBITDAの数値は各年度の上期実績×2で計算。2013年度のみ、(国内事業の上期実績×2)+(スプリントの2013年度通期予想)で算出。
純有利子負債=有利子負債-手元流動性。出所:外部調査会社による主要量販店での販売台数調査。iPhone 5sとiPhone 5cの発売日から2014年2月7日までの累計販売シェア。
各社の開示資料を基に当社作成。
外部調査会社による主要量販店での販売台数調査。NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイル、イー・アクセス、ウィルコムのAndroid 搭載スマートフォン新規販売台数に占めるシェア。
Long Term Evolution:次世代高速データ通信サービス
Online to Offline(オンライン・トゥー・オフライン)の略。オンラインとオフライン(実店舗)の購買活動が連携し合う、または、オンラインの活動を、実店舗などでの購買を促進する効果に結び付ける新たなビジネスモデル。
イプソス株式会社による全国調査。スマートフォンの通話接続率。スマートフォン利用モニター16,900人に発信し接続率を測定(ソフトバンクモバイル:6,500人、NTTドコモ:5,000人、KDDI:5,400人)。
統計分析処理:株式会社Agoop(以下「Agoop」)。プラチナバンド対応スマートフォンのパケット接続率。防災速報(ヤフー)とラーメンチェッカー(Agoop)を利用の各社プラチナバンド対応スマートフォン計120,000台(ソフトバンクモバイル:40,000台、NTTドコモ:40,000台、KDDI:40,000台を無作為抽出)のデータを個別に分析。
App Annie Index: Game “Top Publishers by Monthly Game Revenue” (Android February ? December 2013)を基に当社作成。
App Annie Index: Game “Top Publishers by Monthly Game Revenue” (iOS February ? December 2013)を基に当社作成。
Sprint Corporation開示資料。ネットワーク設備(音声)の更新が70%以上完了した市場における実績。
Sprint Corporation開示資料。
質疑応答
主な質疑応答は、次の通りです。社長の孫がお答えしました。
電力の小売りについて、インターネット事業と電力事業を融合させた新しいビジネスは考えているのか?
あくまでもわれわれの本業は情報革命です。ただし電力の問題については、日本国民の多くが苦しみや悩みを抱えている状況ですので、われわれはこの問題に対する解決の事例を示すべく電力事業に取り組んでいます。われわれの取り組みは一歩一歩ではありますが、少なくとも太陽光発電については国内で最大事業者となったのではないかと思います。また風力発電についてもいろいろと策を打っているところですし、Bloom Energy Japan株式会社が運営するガスを使ったクリーンな電源である「Bloom Energyサーバー」もテスト運用を開始しています。電力の小売については、まずは大口法人顧客を対象に開始し、一般消費者への小売は電力販売の完全自由化が国内で法体系として確立したら参入したいと考えています。しかしこれも「大規模に参入する」というよりは一歩ずつ進めていくイメージです。われわれが事例作りに取り組むことにより、これをきっかけに他の事業者が刺激を受けて活性化し、日本全体が良くなればと願っています。自然エネルギー事業と、本業のインターネット事業で連携したサービスや課金などを提供することもあるかもしれないが、現在検討中です。
ヤフーの爆速経営について、今振り返ると「もう少し早く対策を打てなかったのか?」と思うが、反省することは無いか?
「もう少し早く対策を打てなかったのか」と言われればその通りで、大いに反省しています。現在、宮坂社長を中心に皆で「爆速経営・爆速改革」を進めていて、大変頼もしく思っています。もちろん、創業メンバーの井上前社長らにも感謝し敬意を表します。米国のYahoo Inc.が苦しんでいる一方で、(日本の)ヤフーは一貫して過去最高の売り上げを更新し続けるという輝かしい実績を上げてきました。そしてそのバトンを井上前社長から見事に受け取ったのが宮坂現社長です。現在ではこの結果を非常にうれしく思っています。
国内の移動通信市場での競争力はどう変わっていくか?
当社はこれまで端末や料金プランで差別化をしてきました。これからはネットワーク品質が一番の強みになると考えています。現在のソフトバンクグループのネットワークは、他社に比べ一番つながりやすく、速く、安定しています。過去には一番の弱みだった部分が、現在は一番の強みになっているのです。さらにソフトバンクグループにブライトスターが加わることで、今後はスケールメリットが働き、携帯電話端末の購買力が強まります。従来のソフトバンクグループはネットワーク・規模共に他社よりも構造的に負けていたため、弱者としての戦略を打たなくてはならない立場でしたが、これからは強者の立場として戦うことができるようになります。ネットワーク品質がトップで、さらに競合他社に比べ購買力も強いという条件の下、今後はオーソドックスな施策で一歩一歩着実に駒を進めていけるのではないでしょうか。曲芸のような一か八かのリスクの高い策を打たずに、一歩一歩着実に利益を伸ばす。これがわれわれの新しい競争上の立場となるでしょう。
新たな買収の噂もあるようだが、米国市場ではT-Mobile US, Inc.などとどうやって競争していくか?
現在さまざまな噂が報道されていますが、現時点でソフトバンクの経営者としてこの件に関してコメントすべき状況ではないと判断しています。一つだけ申し上げられるのは、米国の通信事業者の競争状態は、世界の国々と比較して激しい状況とは言えないということです。ネットワーク品質についても世界トップではありませんし、価格競争も決して激しいとは言えません。現在の米国市場は上位2社の寡占状態にあるということ、この点については事実としてコメントいたします。
ゲームの次に力を入れるコンテンツ、あるいは強化の対象になる事業領域はどこか?
コンテンツ事業は順調に伸びています。スーパーセルも業績が拡大しており、投資してよかったと思っています。それ以外のコンテンツについては、将来の戦略にあたることですのでコメントを控えますが、常にさまざまな手だてを考えています。1,300社にわたる当社グループ内で、多様な戦略がこれから生まれてくるでしょう。
ソフトバンクモバイルの「新定額サービス」にNTTドコモとKDDIは追随していない上、ユーザーからも「分かりにくい」という懸念がある。改定案については検討しているか?
これほどシンプルな料金プランはないと考えています。NTTドコモとKDDIは多数のキャンペーンを展開していますが、どれも複雑になってきています。それに比べ、われわれの新料金プランは「5分以内の通話は1,000回まで話し放題」と、明朗会計でとてもシンプルです。すでにグループ会社のウィルコムで「誰とでも定額」をやっていますが、ここから得られたデータを調査した結果、1回の通話で5分以上話すケースは非常に少ないということが分かっています。多くのお客さまに平等にサービスを提供するために、「夜から朝まで通話を繋ぎっぱなし」というケースは事業者としては困りますので、一度の通話は5分までにしていただくという点のみ制限させていただきました。通話が5分以上かかりそうになったら、一度切ってまたかけ直せば大丈夫です。もちろん5分以上になっても、料金は発生しますが続けて通話できます。米国では音声通話についてはかけ放題が料金体系の中心になっていますが、今後は日本でもこのプランが中心となる時代が来ると考えています。思い返してみると、ホワイトプラン、ソフトバンクモバイルユーザー同士の通話無料、学割プランなど、過去6年に当社が打ち出した料金プランは、最初こそ批判を浴びますが、後に他社も追随してきました。今回についても似たような現象が起きるかもしれないと予測はしていますが、もちろんこれは他社に強いるものではありません。
そもそもVoLTEを始めるつもりはあるのか?
当然サービス提供を行う予定です。開始する時期については「近い将来」ということで、明確なことは申し上げられませんが、他社もすでに準備を始めていると思います。またVoLTEの時代になると、先ほど申し上げたような音声かけ放題の料金体系が主流になるのではないかと予想しています。
総務省がNTTグループに対し、移動通信サービスと固定通信サービスの「セット割引」を解禁する検討を始めるとの一部報道があった。これに対する見解を教えてほしい。
NTTグループは、現在固定通信サービスで市場の約70%を支配しています。一般の音声通話も含めるともっと大きいでしょう。ご存知の通り日本電信電話株式会社(NTT)はもともと国営企業であり、その名残で現在でも市場を支配している状況には問題があります。われわれはNTTグループの固定通信と移動通信の細分化をもっと徹底的に進めるべきと、「光の道」の議論をしていた時からずっと申し上げていました。あの当時、総務省の委員会の方々はNTTグループの説を「3年後に検証する」とおっしゃっていて、条件付きでNTTグループの主張が通り、われわれの主張は退けられましたが、あの時総務省の方々が主張した点はその後ことごとく外れました。次世代ネットワークでの市場開放は有名無実、光ファイバーについての見解も結果は外れという状況。もしわれわれが主張していた通り市場を開放していたら、日本はこの3年間のブランクを生まずに済んだでしょう。その反省をしっかりとした上で、さらに光ファイバーの市場開放について議論すべきです。支配力を維持したままのNTTグループがさらに固定通信と移動通信のセット割を販売するのは、他の会社に不利となります。世界中を探してもこのような事例はありません。「固定通信での支配力を持った会社が、その上さらに移動通信とのセット割引を行う」などというのは、少なくとも先進国では考えられません。なし崩し的に許可するのは断固として反対します。
NTTドコモの市場支配力は、昔に比べると勢いが落ちてきたと思うがどう思うか?
NTTドコモ単独で移動通信市場において同条件で競争するのはよいのですが、NTTグループ内で光ファイバーの圧倒的支配力を持った会社とセット割引を提供するということはあってはならないと思います。国家資本が未だに筆頭株主となっている企業が、その支配力を用いて市場に介入し競争を歪めてはなりません。ただし、光ファイバーを徹底的に開放してからであれば、そういったセット割引の提供もよいのではと思います。
Android 搭載スマートフォン市場(以下「Android 市場」)と法人市場でも一番とのことだが、Android 市場ではなぜ選ばれたと考えているか?また法人市場で一番になったのはいつか?
われわれは日頃から地道な努力をたくさん行っています。また努力はしても結果につながるまでは大きなことを申し上げるのは止めようと思っていたのですが、今回は結果が出たのでこうして発表させていただきました。ただし、日本市場ではiPhoneの販売比率が一番高いのは事実であり、Android が大きく伸びている状況でもないため、あまり自慢するようなことではないのかもしれません。業界では、ソフトバンクグループはAndroid 市場では鳴かず飛ばずだと思っている方が大半だと思いましたので、今回はあえて触れました。今後すぐに下降しないように頑張らねばならないと思っています。
また法人市場についてですが、法人のスマートフォン市場を開拓したのはわれわれだという自負があります。統計的な第三者の調査データは無いのですが、これまでの実績と予測から考えて、シェアは圧倒的No.1だと思っています。われわれは法人がどのようにスマートフォンやiPadを使えばよいのかを考え、いろいろなサービスを総合的に提供し市場を切り開いてきました。つまり、いつからかというわけではなくて、最初から一番だったと言えるでしょう。
通常の携帯電話からスマートフォンの転換率が鈍っているという説があるが、どのように考えるか。
当社はスマートフォンの発売当初から、既存ユーザーのスマートフォンへの転換を進めていたため、既に他社よりもスマートフォン比率が高くなっています。一方他社でまだスマートフォンへの転換が終わっていないユーザーは、われわれから見ればビジネスチャンスであると捉えています。
「今後強者の戦い方をする」というのは、つまり価格破壊による市場獲得はしないということか。
いいえ、例えば先述の「新定額サービス」は、たくさん通話するお客さま、特に月々の通話料金が8千円~1万円だったお客さまからすると、間違いなく割安となります。あまり通話しないお客さまにとっては安くならないこともありますが、この場合はもちろん従来のプランを選ぶこともできます。価格戦略に関しても、今後も新しく刺激的なサービスを打ち出していきたいと思います。
以前、一年位かけてスプリントにソフトバンク流のノウハウを共有していくと言っていたが、その進捗状況はどうか。またソフトバンクからは社員はどれくらい派遣されているのか。
現在でも毎月米国カリフォルニア州にて当社経営幹部とスプリント経営陣、総勢30名ぐらいで会議を行っています。加えて、ソフトバンクからも現地に数名の社員を派遣し、ノウハウを共有し合っています。もちろん向こうからも日本に社員が来て交流しています。今のところ文化の違いはそれほど感じません。現在は主にスプリントのネットワーク品質の改善を進めています。一歩ずつステップを踏みながら着実に進めてまいります。
発表された新料金プランのように、米国で流行っているプランを日本へ輸入するということがこれからもあり得るのか?
米国で良いものならば何でも日本でも良いという訳ではありません。その逆もしかりと言えます。これからも米国と日本の市場や競合他社の状況を分析して、それぞれの市場に良いものだけを柔軟に取り込んでいきたいと考えています。
昨年の同時期に比べて、携帯電話端末の販売台数がマイナスとなっている。スマートフォンの販売はこのまま成長が続くと考えているか。
スマートフォンが発売された当初は、物珍しさもあって買い替えサイクルが短くなっていました。また以前KDDIがiPhoneの販売を開始する際には、当社ユーザー向けに最新機種への乗り換えプロモーションキャンペーンなども行ったため、その反動もあるのではないでしょうか。さらに最近では、スマートフォンの最新機種が出ても、大きな性能差を見いださないユーザーも多くなり、同一端末の保有月数が長くなってきています。この状態は、短期間で販売奨励金、つまり事実上のコストを補てんする状況が少なくなるので、安定的に収益が上げやすくなり、実は経営上ありがたい部分もあります。他社はMNP(番号ポータビリティ)乗り換えキャンペーンも並行して展開しているため、別の側面でのコスト増もありますが、保有月数が長くなっていること自体は経営的に良いことと言えます。
スマートフォンの販売市場自体は、今後もまだ成長すると思っています。
Yahoo!は米国Yahoo! Inc.の登録商標または商標です。
Google、Google Play、Google AppsはGoogle Inc.の登録商標または商標です。
Android はGoogle Inc.の商標または登録商標です。
Apple、Appleのロゴは、米国および他国のApple Inc.の登録商標です。
iPhone、iPadはApple Inc.の商標です。
iPhone商標はアイホン株式会社のライセンスに基づき使用されています。
内容は掲載当時の情報です。記載されている会社名、サービス名、肩書などは現在と異なる場合があります。