当社によるARM買収の提案に関するお知らせ
ソフトバンクグループ株式会社(以下「当社」)と英国のARM Holdings plc(以下「ARM」)は、2016年7月18日(グリニッジ標準時)付で、当社がARMの発行済株式及び発行予定株式全部を現金で買い付ける、推奨された取引の条件に合意したことをお知らせいたします。本買付けにおいて、当社は、裁判所の承認を取得する「スキームオブアレンジメント」の方法により、総額約240億ポンド(約310億米ドルまたは約3.3兆円)の買収価格を対価として、ARM株式1,412百万株を取得いたします(以下「本件買収」)。
本件買収は当社の取締役会で承認されておりますが、ARMの株主及びイングランドの裁判所の承認を条件としております。ARMの取締役会は、ARMの株主に本件買収を推奨する意思を全会一致で確認しております。
両社は、本件買収が2016年9月30日に終了する3カ月間中に可及的速やかに完了するものと見込んでおります。本件買収の結果、ARMは当社の完全子会社となります。
1. 本件買収の背景と理由
当社は、ARMがグローバルな半導体の知的所有権と「IoT(モノのインターネット)」における優れた能力を有し、イノベーションに実績のある世界有数のテクノロジー企業であると考えております。
当社の取締役会及び経営陣は、ARMを詳細に評価し、慎重に検討したうえで、全会一致で本件買収に賛同いたしました。当社の取締役会及び経営陣は、当社がARMを買収することにより、以下の利点がもたらされると考えております。
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知的所有権に係るライセンスの供与及び半導体企業の研究開発受託におけるARMのグローバルリーダーたる地位をサポートし、さらに強固なものにできる。
当社が有する深い業界専門知識と様々な関係からなるグローバルなネットワークを通じて、ARMの知的所有権を既存の市場及び新規市場にわたり浸透させることができます。 -
ARMのイノベーションへの傾注を維持できる。
当社は、ARMが長年注力してきた、デバイス自体の価値向上と、新しい成長分野、特に「Enterprise and Embedded Intelligence」におけるライセンス供与先の獲得と将来のロイヤルティー収入増の取り組みを支持していきます。 -
ARMが次なるイノベーションの波を起こすための投資を拡大することができる。
ARMは、既存または新規の競合他社に対する研究開発における優位性を維持することを目的として、エンジニアリング人材及び補完的な買収へ投資することにより、複数の成長戦略を推進しており、当社はこれを支援していきます。また、当社は、このような投資戦略により長期的成長を目指す中で、同社が非上場会社となることにより、遂行がより容易になると考えております。 -
共通の文化と長期的視野
当社は、両社がテクノロジー志向の文化と長期的な視野を有し、イノベーションを重視し、最高の人材を惹きつけ、開発し、保持することに最大限注力するという共通点を有していると考えております。このような価値観の共有は、将来的に重要な機会を捉えるために必要とされる、強力な戦略的パートナー関係構築の礎となるものです。 -
科学技術分野における英国の先導的地位を維持し、成長させることができる。
当社は、科学技術の発展とイノベーションにおいて世界的に先導的地位を有する英国に対して投資していきます。その証として、ARMの複数の成長戦略に対する投資を行い、向こう5年間で、英国におけるARMの従業員数を、少なくとも倍増させる意向です。
2. 本件買収の条件
ARMの各株主は、本件買収の条件に基づき、ARM株式1株につき1,700ペンスの現金を受領する権利が付与される予定です。
本対価は、ARMの発行済株式及び発行予定株式全部の価値を約243億ポンドと評価したものです。
また、2016年9月8日の営業終了時、または「スキームオブアレンジメント」の効力発生日の前営業日のいずれか早い方の日において株主名簿に記載されているARMの株主は、ARMの株式1株につき3.78ペンスの中間配当を受領する権利が付与される予定であり、当該中間配当は、本件買収において支払われる申入れ対価を減額されることなく、2016年10月10日、または効力発生日のいずれか早い方の日に支払われる予定です(以下「本件配当」)。さらに、ARMの株主は、効力発生日以前の日を基準日とする将来の配当金を、本件買収において支払われる申入れ対価を減額されることなく、通常どおりに受領する権利を得ます(以下「通常配当」)。特に、2017年4月20日(2016年の最終配当に係る基準日)の営業終了時において株主名簿に記載されているARMの株主は、2016年12月31日までの期間に係る、ARM株式1株につき最大6.76ペンスの2016年の最終配当を受け取る権利が付与される予定であり、当該最終配当は、2017年5月11日に支払われる予定です。効力発生日がいずれかの通常配当の基準日より前に到来した場合、ARMの株主は、かかる配当を受ける権利を付与されません。
本発表の日付以降、ARM株式に関して配当または剰余金の分配、その他の資本の払戻し(本件配当及び通常配当を除きます。)の発表、宣言または実行がなされた場合、当社は、当該配当または剰余金の分配、その他の資本の払戻しが発表、宣言または実行された金額を上限とする金額を、申入れ対価から減額する権利を留保しております。
ARM株式1株当たりの価格1,700ペンスは、以下のプレミアムを反映しております。
- 2016年7月15日(本発表の前営業日)のARM株式1株当たりの終値1,189ペンスの約43.0%及びARMの1ADR当たりの終値47.08米ドルの約42.9%
- 2016年7月15日(本発表の前営業日)まで(当日を含みます。)の3カ月間における、ARM株式1株当たりの平均終値1,004ペンスの約69.3%及びARMの1ADR当たりの平均終値42.39米ドルの約58.7%
- 2015年3月16日に記録した、ARM株式1株当たりの上場来高値(終値ベース)1,205ペンスの約41.1%
3. 本件買収の手続き
当社及びARMは、イングランド法に基づく「スキームオブアレンジメント」により本件買収を実施する予定です。スキームオブアレンジメントは買収方法の一つで、本件買収はARMの株主の承認(詳細は後記のとおり)及びイングランドの裁判所の承認を取得次第、効力を発生します。ただし、当社は、当該スキームによらず、(ⅰ)提携合意の継続中に、英国テイクオーバーパネル(買収規制を担う独立した自主規制機関)の承認及びARMの書面による事前の合意を得て、または(ⅱ)提携合意の終了後に英国テイクオーバーパネルの承認のみを得て英国テイクオーバーコードに基づく公開買付けの申入れの方法で手続きを進める権利を留保しております。
本件買収の条件は、ARMの株主に送付される予定です。スキームオブアレンジメントの効力が生じるためには、イングランドの裁判所が招集するARMの株主総会に出席する株主(出席して直接議決権を行使するか、または委任状により議決権を行使するかを問いません。)の過半数、かつ額面価格において75%以上を表章する株式に係る議決権による賛成をもって承認されなければなりません。なお、議決権数からは、当社または当社子会社が所有する議決権が除外されます。
4. 推奨
ARMの取締役会は、Goldman Sachs International及びLazard & Co., Limitedの助言を受け、本件買収の財務的な条件を公正かつ合理的なものと考えていると表明しております。
従って、ARMの取締役らは、ARMの株主が本件買収について承認することを、全会一致で推奨する予定であることを確認しています。
5. 取締役の取消不能の約束
当社は、ARMの株式を保有する取締役らより、取締役らが自ら保有する持分(合計ARM株式1,976,897株)に関し、本件買収を承認するよう議決権を行使する旨の取消不能の約束を受けています。ARMの取締役らは、当社が本件買収を上記スキームオブアレンジメントによらず公開買付けの方法で実施した場合には、自らが保有するARM株式について当該公開買付けに応募することも約束しています。
6. 本件買収に関する日程
当社は、裁判所及び株主による必要な承認を得ることを条件として、2016年9月30日に終了する3カ月間中に可及的速やかに本件買収が完了すると見込んでいます。取引の手続きに関する具体的な日程が決まり次第、速やかにお知らせします。
7. 資金調達
本件買収において支払われる対価の一部は、当社と株式会社みずほ銀行との間で、2016年7月15日に締結されたブリッジローン契約に従って、株式会社みずほ銀行がアレンジする総借入限度額1.0兆円の借入により調達されます。残額については、当社が保有する手元資金で賄う予定です。これらの買収資金については、様々な長期資金への切り替えを進めていく予定です。なお、新株発行を伴う資金調達(エクイティファイナンス)は実施しません。
8. 当社及びARMからのコメント
当社代表取締役社長 孫 正義
「当社は、これまで、ARMを世界的に名高いテクノロジー企業であり、この分野における圧倒的マーケットリーダーとして高く評価してきました。今回の投資の目的は「IoT(モノのインターネット)」がもたらす非常に重要なチャンスをつかむことにあり、ARMは、当社グループの戦略において重要な役割を果たしていくでしょう。
加えて、今回の投資は、当社の英国に対する強いコミットメントと、ケンブリッジにおける豊かな科学技術の才能集団がもたらす競争上の優位性を特徴としています。当社は、本件買収に不可欠な要素として、向こう5年間で、英国におけるARMの従業員数を、少なくとも倍増させようと考えています。
当社は、ARMに投資し、経営陣を支援し、戦略を加速し、そして、上場企業として考えられる以上の潜在力を引き出すことを目指します。ARMは、当社グループ内において独立した企業として、引き続きケンブリッジを本拠地として事業を行います。
本件買収は、当社にとってこれまで行ってきた買収案件の中でも最も重要なものの一つであり、今後、ARMが当社の成長戦略の重要な柱となることを期待しています。」
ARM Chairman Stuart Chambers
「当社取締役会の総意として、本件買収は、将来価値を現在かつ現金にて確実に実現する提案であり、大変魅力的なものです。当社取締役会は、当社が今後も重要な英国事業として存続し、新たなテクノロジーの開発において重要な役割を担い続けることを保証されています。また、ソフトバンクから、英国における当社従業員数の倍増や当社固有の企業文化・ビジネスモデルを継続していくこと等、当社に対して相当な投資を行う旨の確約をいただきました。ARMは非常に優れた実績を誇る特別な企業です。当社取締役会は、ソフトバンクの有するリソースをフルに活用することにより、コンピューターが用いられるあらゆる場面においてARMテクノロジーの使用をさらに加速させることができると確信しています。」
9. アドバイザー
当社の財務アドバイザーは、The Raine Group、Robey Warshaw LLP及びみずほ証券株式会社です。また、当社の法務アドバイザーは、Morrison & Foerster LLP及びFreshfields Bruckhaus Deringer LLPです。
10. ARMの概要
(1)名称 | ARM Holdings plc | ||
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(2)所在地 | 110 Fulbourn Road, Cambridge CB1 9NJ, United Kingdom | ||
(3)代表者の役職・氏名 | CEO Simon Segars | ||
(4)事業内容 | マイクロプロセッサー、フィジカルIP及び関連技術並びにソフトウエアの設計、開発ツールの販売 | ||
(5)資本金 | 70万ポンド | ||
(6)設立年月日 | 1990年10月16日 | ||
(7)大株主及び持株比率 |
Baillie Gifford & Co. 10.0%
BlackRock Institutional Trust Company, N.A. 5.3% Thornburg Investment Management, Inc. 5.0% | ||
(8)上場会社とARMの関係 | 資本関係 | 当社はARM株式を1.42%所有しております。 | |
人的関係 | 当社とARMとの間には、記載すべき人的関係はありません。 | ||
取引関係 | 当社とARMとの間には、記載すべき取引関係はありません。 | ||
(9)ARMの最近3年間の連結経営成績及び連結財政状態(IFRS) | |||
2013年12月期 | 2014年12月期 | 2015年12月期 | |
売上高 | 714.6 | 795.2 | 968.3 |
営業利益 | 153.5 | 309.0 | 406.1 |
当期純利益 | 104.8 | 255.4 | 339.7 |
純資産 | 1,311.4 | 1,528.3 | 1,797.6 |
総資産 | 1,638.4 | 1,837.2 | 2,120.2 |
基本的1株当たり当期純利益(ペンス) | 7.5 | 18.2 | 24.1 |
1株当たり配当金(ペンス) | 5.7 | 7.02 | 8.78 |
ARM株式は、ロンドン証券取引所のメイン市場での取引が認められています。ARMは、各ADRがADS1株を表章する(各ADSはARMの原株3株を表章する)ADRプログラムを設立しており、ARMのADRはNASDAQグローバル・セレクト・マーケットで取引されています。
11. 取得株式数、取得価額及び取得前後の所有株式の状況
(1)異動前の所有株式数 |
20,381,355株
(議決権の数:20,381,355個) (議決権所有割合:1.42%) ※1 |
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(2)取得株式数 |
1,411,740,071株
※
(議決権の数:1,411,740,071個) |
(3)取得価額 |
投資総額:約240億ポンド(約310億米ドルまたは約3.3兆円)
アドバイザリー費用等:未定 |
(4)異動後の保有株式数 |
1,432,121,426株
(議決権の数:1,432,121,426個) (議決権所有割合:100%) |
アドバイザリー費用等(概算)につきましては、判明次第速やかにお知らせいたします。
-
※
本発表の日付現在のARMの完全希薄化ベースの株式数に基づきます。以下に記載するARMの株式数及び所有割合についても同様です。
-
※
12. 今後の見通し
本件買収による業績等への影響や本件買収の具体的な日程につきましては、分かり次第お知らせいたします。
(参考)当社の当期業績予想及び前期実績(連結)
売上高 | 営業利益 | 親会社の所有者に帰属する純利益 | |
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当期業績予想
(2017年3月期) |
百万円
- |
百万円
- |
百万円
- |
前期実績
(2016年3月期) ※ |
百万円
9,153,549 |
百万円
999,488 |
百万円
474,172 |
現時点では業績に影響を及ぼす未確定な要素が多いため、業績予想を数値で示すことが困難な状況です。当期業績予想については、合理的に予測可能となった時点で公表します。
-
※
2016年3月期の当社の連結売上高及び営業利益は、継続事業の金額であり、非継続事業は含めていません。
-
※
以上
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その他の国・地域
英国・日本以外の法域内において、またはかかる法域に対して、本発表文の発表、公表または配布することについて法令上の制限が課される場合があります。従って、英国・日本以外の法域の法律に服する場合、適用ある法令上・規制上の各要件を熟知し、これを遵守していただくようお願いいたします。適用される制限を遵守しなかった場合、当該法域の証券法令違反となることがあります。適用法が許容する最大限の範囲において、本件買収関係者は、いかなる者がかかる規制に違反した場合であっても、かかる責任を一切負いません。
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将来予想に関する記述
本発表文(参照することにより本発表文に組み込まれる情報を含みます。)、本件買収に関して行われた口頭の陳述その他当社及びARMが公表した情報には、「将来予想に関する記述」またはかかる記述とみなされる可能性のある記述が含まれています。かかる将来予想に関する記述は、将来の見通しという性質を持ち、過去の事実に基づくものではなく、事業戦略及び当社またはARMが将来事業を行う環境に関する現在の期待及び多くの仮定に基づくものであり、実際にはこれらの記述によって明示的または黙示的に示唆された内容と大きく異なる結果をもたらしうるリスク及び不確定要素を伴うものです。本発表文に含まれる将来予想に関する記述は、当社またはARMの将来の見通し、展開及び事業戦略、本件買収の予想される時期及び範囲その他過去の事実以外の記述に関係するものです。かかる将来予想に関する記述は、「~と考えている(believe)」、「推定する(estimate)」、「計画する(plan)」、「準備する(prepare)」、「期待される・見込まれる(anticipate)」、「期待する(expect)」、「期待される(is expected to)」、「~を条件とする(is subject to)」、「予算(budget)」、「予定された(scheduled)」、「予測(forecasts)」、「意図する(intend)」、「かもしれない(may)」、「(今後)する(つもりである)・なる(will)」、「するべき・なるべき(should)」またはこれらの否定形その他これらに類似した表現が使われることによって特定されることがあります。その性質上、将来予想に関する記述は、将来発生する出来事や様々な状況に関連し、これらに左右されるため、リスク及び不確定要素を伴う内容となります。これらのリスク若しくは不確定要素の1つ若しくは複数が現実となった場合、または仮定の1つ若しくは複数が正しくないことが判明した場合には、実際の結果は、期待、予想または予測された内容とは著しく異なるものとなる可能性があります。従って、かかる将来予想に関する記述は、かかる要素を念頭においたうえで解釈される必要があることをご理解ください。当社、ARM、そのそれぞれの関係者若しくは取締役、役員またはアドバイザーのいずれも、本発表文に含まれる将来予想に関する記述において明示的に記載され、または黙示的に示唆された出来事が実際に起きることについて、表明、断言または保証するものではありません。これらのリスク及び不確定要素に鑑み、投資を検討される場合には、将来予想に関する記述に依拠することのないようご注意ください。将来予想に関する記述は、本発表文の日付現在のものです。当社及びARMは、法律または管轄規制当局の規則により要求される場合を除き、(新たな情報、将来発生する事項、その他いかなる理由があっても)将来予想に関する記述を更新する義務を明示的に否認します。
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