日本は今、大変な転換点にあります。2011年3月11日に発生した東日本大震災は、大変ショックな大災害でした。災害や事故は、それを乗り越えれば、また新しい歴史が始まります。しかし今、日本の基本的な体力は急激に落ちています。20年前、日本の国際競争力は、世界で1位でした。ところが現在では、27位にまで落ちています。さらに少子高齢化による人口減少、国の借金増大など、20年前と今日で、日本は変わってしまいました。
しかし、この20年間で変わっていないものもあります。それは「学生の就職企業人気トップ10」です。10社のうち8社は、20年前も今も同じです。学生の皆さんは、普段身近に感じているサービスや製品を提供している企業に、馴染みを覚えているのかもしれません。しかし、皆さんにとって「就職」というのは、今後50年間の人生を左右する大切な分かれ道です。物事は、30年、50年という単位で考える必要があります。日本の状況は、20年間で一気に変わりました。この先20年、50年でもっと変わります。これからの時代、伸びる産業、人々の生活を著しく飛躍させていく産業が、世の中を引っ張っていくことになります。それがまさに、「情報革命」です。
私は10代のころ、いずれ事業を始めると決めました。それが現在のソフトバンクグループです。どんな事業を始めるかは、当時のブームや、自分が単に興味があることではなく、「50年間飽きずに興奮を続けられるかどうか」という点を重視しました。私にとってそれは、「常に新しいことを考え、世の中を革新的に変えること」でした。「就職活動」という言葉は、就く職を探す活動を意味しますが、「仕える事」ではなくて、志を追い求める「志事(しごと)」を見つけていただきたい。どのような志に人生をかけるのか。この指標を、人生の分かれ道での重要な物差しにすることをお勧めします。“志”は、“夢”とよく似た言葉ですが、志とは、個人的な願望をはるかに超えた、壮大な目標だと思います。世の中を変える。人々を幸せにする。そういう志で、私は人生を過ごしています。