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理念・ビジョン・戦略

新30年ビジョン

ソフトバンク 新30年ビジョン

ソフトバンクグループが次の30年も引き続き情報革命で人々の幸せに貢献し、「世界の人々から最も必要とされる企業グループ」を目指すという方向性を定めたもので、創業30年の節目を迎えた2010年の定時株主総会後に発表しました。
当時からすでにサステナビリティを意識した経営理念・ビジョンと、それを実現するための戦略・ビジネスモデル(価値創造ストーリー)を作り出していたといえます。

発表会サマリー

「ソフトバンク 新30年ビジョン」は、1年をかけソフトバンクグループの全社員約2万人が真剣に議論した結果と、社外のTwitterユーザーからいただいた叡智をまとめたものです。大きく三つのパートに分かれています。

一つ目は「理念」。われわれが何のために事業を行っているか。二つ目が「ビジョン」。ソフトバンクグループが実現したい、30年後、300年後の世界、ライフスタイルはどのようなものか。そして最後に「戦略」。われわれがいかに、ビジョンを実現していくのかという戦略です。

われわれが何のために事業をしているのか、何を成したいのかを短い言葉で表せば、「情報革命で人々を幸せにしたい」に尽きます。新30年ビジョンの検討の過程で、グループ全社員にそれぞれが考えるビジョンを発表してもらいましたが、全てのプレゼンテーションの中心に「人々の幸せに貢献したい」という思いが据えられていたのは、本当にうれしいことでした。

私はTwitterで人生最大の悲しみと幸せについて多くの皆さんに意見を聞きました。「人生で最も悲しいことは何だろう?」という問いかけに対し、1日で2,500件を越える意見が寄せられました。最も多かったのは、「身近な人の死(21%)」、次に「孤独(14%)」、そして「絶望(11%)」が三番目でした。身近な人、愛する人が死んで残された人は「孤独」になる、そして絶望もまた「孤独」につながります。そうすると、人生最大の悲しみは「孤独」かもしれません。「孤独」を減らし、少しでも人々の悲しみを減らしたい。それがわれわれの願いです。

「人生で最も幸せを感じることは何だろう?」という問い掛けにも、さまざまな意見が寄せられました。「自己実現」や「愛し、愛されること」を喜びとする答えも多くありました。人々によって色々な表現がありますが結果を集約すると、「幸せ=感動」と言い替えられるのではないかと思います。見る感動、学ぶ感動、遊ぶ感動、出会う感動、家族・恋人と愛し合う感動など、人間にはさまざまな感動があります。われわれは一人でも多くの人に喜び、感動を与えたい。優れた製品を作る、料金競争をしてお客さまを一人でも増やす、そういうことが最大の目標ではありません。それらの提供によって人々が幸せを感じてくれること、悲しみを減らすことを目指しているのです。これまでわれわれが掲げてきた「デジタル情報革命を通じて、人々が知恵と知識を共有することを推進する」、この思いは創業初日から今日まで一切変わっていません。「情報革命で人々を幸せにしたい」ということであります。

新30年ビジョンと申し上げましたが、創業者の私の最も重要な役割は、最低300年続くソフトバンクグループのDNAを設計することです。大きな方向性を定め、その方向性に向かってたゆまぬ努力をすることが一番大切。そういう意味では30年というのは単なる一時期でしかなく、創業からの30年は300年の中での第1チャプター、次の30年というのは第2チャプターにすぎません。よって、まず300年のビジョンからお話しします。

30年後、300年後のテクノロジー、人々のライフスタイルはどう変わっているのだろうと考えると、想像すらなかなかできない、分かりにくいものです。しかし、そういう分からないときこそ、なおさら遠くを見るべきであり、そして、遠い将来を予見するためには、過去を見てみるべきであると考えます。

300年前の世界

300年先を見るために、300年前の人々がどうだったのか、あらためて調べてみました。

300年前の一般の庶民の平均寿命はたった33年。貴族のようなお金持ちですら39年でしかありませんでした。また、300年くらい前からちょうど産業革命、工業革命が始まりました。蒸気機関が作られ、製鉄法、紡績機ができ、蒸気船、鉄道が開通し、まさに文明開化の時代でした。圧倒的な動力により人間は自らの筋肉の能力を延長させ、機械により人々のライフスタイルは圧倒的に変わりました。一方、19世紀初頭には、機械が人間の職を奪う、機械は人間にとって邪魔なもの、怖いものだという大きな反動「ラッダイト運動」というものも起こりました。

しかし、今日現在のわれわれの生活を見ると、機械と人間が共存し、機械の優れた能力を使いこなしています。人間は過酷な重労働や危険な作業から解放されるようになり、機械によって水道が掘られ、衛生的になり、人々が亡くなる原因も減ってきました。平均寿命が今日延びてきたのも産業革命のたまものではないでしょうか。

過去300年に、機械により人類の生き方が大きく変わるパラダイムシフトがありました。

次の300年間でテクノロジーはどう進化し、人々のライフスタイルはどうなっていくのでしょうか。

300年後の世界

私は、これから300年間で、本当の意味での情報のビッグバンが起きる、今はまだその入口ではないかと考えます。

コンピューターの計算能力が過去100年間でどのくらい増えたか調べると3,500兆倍のコストパフォーマンスになっています。コンピューターの基本的な原理は二進法です。電流が「流れる・流れない」、トランジスタが「くっつく・離れる」で計算していますが、実は人間の脳細胞も全く同じメカニズムで、脳細胞にあるシナプスが「くっつく・離れる」という二進法で計算したり考えたりしているのです。人間の大脳には約300億個の脳細胞がありますが、ムーアの法則に基づいて計算をすると2018年にワンチップに入るトランジスタの数が300億個を越えることになります。私は20年前に同じ計算をしましたが、そのときから答えは変わっていません。

人間の大脳にある細胞数(トランジスタ数)が約300億個に対し、2018年にはコンピューターのワンチップに入るトランジスタの数が約300億個を超え人間の脳を超える。コンピューターの計算能力は30年で100万倍まで増える。 1垓=1兆×1億 コンピュータのワンチップの中にある細胞数(コンピュータ量子数)は、2100年には人間の脳細胞の1垓倍、2200年には1垓の2乗倍、2300年には1垓の3乗倍になる。

100年後には、コンピューター1チップ中のトランジスタの数は人間の脳細胞の1垓(ガイ)倍という計算になります。1垓という単位は1兆の1億倍です。仮に1垓倍にはならなくとも、コンピューターが人間の脳細胞の機能をはるかに越えることは間違いない。これが数年ずれても、誤差といえるでしょう。

そして、これから300年、人類は人間の脳を超えるものが初めて地球上に生まれるという人類史上最大のパラダイムシフトを体験することになるでしょう。

そんな未来にソフトバンクグループが実現したいことは何か。

それは最先端テクノロジーと最も優れたビジネスモデルを使い、「人々を幸せにする」情報革命を実現することです。

脳型コンピューターの実現

コンピューターの進化により、脳型コンピューターが生まれ、300年後の人々は、脳型コンピューターを当たり前のように使っていると、私は想像します。

従来のコンピューターはノイマン型コンピューターといい、CPUやメモリーを持ち、プログラマーがプログラムして初めて計算することができます。一方、脳型コンピューターは、人間の脳のように、誰かがプログラミングするのではなく自分でデータ(知識)を集積し、自ら学習しながらプログラムしアルゴリズム(知恵)を獲得していく全く新しいコンピューターです。データ(知識)の自動集積はすでにYahoo!やGoogleの検索で行われていますが、残りの知恵についても時間の問題で実現されるでしょう。

学習型コンピュータ 知識の自動集積データ プラス 知恵の自動生成アルゴリズム

そうなるとわれわれ人類は「人間より頭の良い存在」があることを許すべきか、コンピューターを制御できなくなるのではないか、クローン羊の議論があったように、科学技術をどこまで許すのか、人間にとって何が有益で何が有害かという点について真剣な議論がなされることになるでしょう。

しかし、人工知能により人間の生活はより便利になり、コンピューターは止めることができないくらい進化することになるでしょう。

実は、人間の脳には、知恵と知識以外に、もう一つ重要な機能があります。それは「感情」です。

脳は、食欲や睡眠欲、物欲などの人間の「感情」の欲望を満たすために、「知恵」と「知識」という道具を使って機能しています。もし感情の欲望のまま、本能の赴くままだけに脳を活用していくと、大変危険なことになります。しかし、脳の感情には段階があります。一番低い次元は「食べたい」「眠たい」などの生理的欲求です。

人間の脳の働き 知識(データ)と知恵(アルゴリズム)と感情(ゴール)

これは、本能的欲望ともいえます。もう少し知性が身につくと、人々は理性を働かせて、あまりにもむき出しの本能のままでは人に迷惑をかけてしまう、それを避けるという社会性が生まれます。知性が生まれ、本能的欲望を制御するようになります。もう一段高い次元に、夢を実現したいという自己実現があります。そして、最も高い次元にあるといわれるのが、愛です。愛を満たすことが脳細胞の求める最も高い次元の欲望となります。そして、この愛がむき出しの欲望、本能的欲望を制御することになります。

これから300年の間に、人類は、先ほどのクローン羊の議論とは別の次元で、この「感情」をコンピューターが持つことを許してよいのか、というこれまで体験したことのない一番大きな議論に直面することになるでしょう。

しかし私はコンピューターに高い次元の感情を持たせることが、むしろコントロールにつながると考えます。「優しさ」「愛情」という本当に高い次元の感情を持った超知性の実現が、脳型コンピューターの正しい進化であると、私は思います。人間が人間を幸せにするように、機械が人間を幸せにするように、超知性のコンピューターが人間を幸せにするために共存していく社会を、われわれソフトバンクグループは実現したい。

情報革命で人々を幸せに SoftBank

では、300年後の世界では超知性を使い、例えばどんな幸せを実現できるようになるか。人間とコンピューターが共に医療技術の高度化に取り組んだ結果、DNA治療や人工臓器が一般化され、人間の平均寿命は200歳になるという時代が来る。また、人間の脳から手足につながる微弱な電流を使って「通信」する機能を使い、時計やピアスに組み込まれたチップを付けた人間が、体をいわば通信媒体にして脳とコンピューターで相互通信を行う時代が必ず来るでしょう。そして距離の離れたチップ同士が無線で通信を行えるようになる。そうするとコンピューターが中国語、フランス語、英語など異なった言葉も自動翻訳して、まるでテレパシーのようなコミュニケーションができるようになります。300年後のソフトバンクグループは、携帯電話会社ではなく、テレパシー通信カンパニーになっているかもしれません。また、脳型コンピューターが筋肉(モーター)と合体するとロボットになります。脳型コンピューターを搭載したロボットは一般化し、例えば災害救助で活躍したり、医療現場や家事でも大きく役立つでしょう。新しい発明、新技術も、脳型コンピューターが生み出し始め、未知のウイルスや大地震など、人類が今まで解決できなかったような、人智を超えた、叡智を超えた難題にも脳型コンピューターと一緒に解決していく時代が来るかもしれません。ソフトバンクグループは優しさを持った知的ロボットと共存する社会を実現したい。そのとき、強みを発揮する企業は、いわば筋肉(モーター)作りの得意な自動車・家電メーカーとは限りません。筋肉に何を指示するかという頭脳の部分が一番難しいからです。ソフトバンクグループの強みはその頭脳にあります。われわれは、人々を幸せにするために脳型コンピューター、情報革命を広めていきたいと考えています。

30年後の世界

300年後のビジョンについて語った後では、30年後のビジョンはとても現実的に見えるかもしれません。30年後、コンピューターのチップの数は脳細胞の10万倍になります。さらにそのチップは、今日現在の100万倍のメモリー容量で、300万倍の通信速度で通信できるようになる。そうすると、どうなるか。30年後のiPhoneには楽曲が5,000億曲、新聞データなら3億年分、動画にしても3万年分入ることになるでしょう。生きている間に見切れないほどのあり余る情報が、手元の3万円くらいのデバイスに入る。

3万円端末に保存可能なコンテンツ 楽曲では2010年で6,400曲から2040年には5,000億曲 新聞データなら2010年で4年分から2040年には3.5億年分 動画なら2010年で4時間分から2040年には3万年分

実質的に無限大の情報・知識・知恵を格納できるストレージができるのです。さらに音楽なら1秒間に300万曲分のデータをクラウド(インターネット上の大型コンピューター)からダウンロードすることができるようになる。ライフスタイルが劇的に変わります。紙の新聞や雑誌、書籍、CDで音楽をトラックで運ぶことは、ほぼ100%ありえなくなる。情報というものはデジタルが当たり前になる。あらゆる電化製品、電化製品だけでなく靴やメガネなど、あらゆるものにチップが入り、無限大のクラウドと超高速のネットワークでつながり、「見る」「学ぶ」「出会う」「遊ぶ」などさまざまな感動の体験が進化します。教育はもちろん、医療、ワークスタイルも徹底的に変わります。そういう中で、ソフトバンクグループは、人類のそして人工知能のあらゆる知識と知恵を徹底的にクラウドに蓄積して人類最大の資産とし、世界中に生まれる最先端のテクノロジー、最も優れたビジネスモデルを持つ同志と一緒になって、ライフスタイルを革新していきたいと考えます。

300年後、30年後のビジョンをどのように実現していくか。戦略について語らなければなりません。われわれは未来学者ではありません。未来をいかに正確に予測するかではなく、ビジョンをいかに実行するか、「事をなす」ことが重要なのです。われわれは30年後に世界の人々に最も必要とされるテクノロジーやサービスを提供する会社でありたいと思います。

世界の人々から最も必要とされる企業へ

過去の世界時価総額トップ10を調べると100年前には鉄道会社が4社、そして製鉄、石油・石炭、銀行がランクインしています。30年前はIBM、エクソン、AT&Tなどです。その時代に人々が最も必要とした会社、最も必要な資源を提供した会社がランクインしているのです。ソフトバンクグループも30年後には、人々から必要とされる企業でありたい。その結果、世界時価総額トップ10に入っていることを目指します。

30年後のトップ10企業の時価総額は推定値で200兆円ぐらいでしょう。今のソフトバンクグループの株価を70倍、80倍にする必要があります。これを本気でやるつもりです。どう実現するか。

事業領域

ソフトバンクグループの事業領域は「情報産業」です。「情報革命」これ一本です。しかし、特定のテクノロジー・特定のビジネスモデルにはこだわりません。特定のテクノロジーやビジネスモデルを300年間変わらず持続することは難しいと考えるからです。その時代、時代で、世界で最も優れた企業とパートナーシップを組むことで、われわれソフトバンクグループが300年というスパンで成長することが可能になるのです。

戦略的シナジーグループ

「孫 正義は何を発明したか」と問われたら、「300年間成長し続ける構造を発明した」と答えたいと思っています。会社が進化し続ける構造、それは戦略的シナジーグループです。20世紀の会社組織はピラミッド型の中央集権で大量生産、大量販売を目指すのが普通でした。われわれのグループはそうではなく、WEB型組織にしたいと考えています。

資本的結合 × 同志的結合

中央集権ではなく、戦略的シナジーグループがどんどん分散・分権して、お互いに自律している、そして協調しあう。だからこそ自己進化、自己増殖できるのです。出資比率20%から40%の緩やかな資本提携で、志を共にする集団を作る。そういうパートナー戦略で、組織構造を30年以内に5,000社規模に拡大したいと考えています。

ソフトバンクアカデミア

そして、ソフトバンクグループの次の時代を担う後継者の育成のため、2010年7月、ソフトバンクアカデミアを開校します。グループ内外から300人の生徒を募ります。私自身が初代校長として責任を持って運営します。後継者を1カ月・2カ月で育てるのではなくて、10数年かけて、直接私が指導して、競争させる、育成プログラムを作ります。

後継者育成 実戦 最重要職務

以上が、ソフトバンクグループの新30年ビジョンです。ただこの一つのために考えました。そして実行します。

「情報革命で人々を幸せに」

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