Atom Learning

Alex Hatvany
共同設立者

Atom Learningは、2018年に設立された英国を拠点とするEdTechプラットフォームです。小学校の児童と教師を対象としており、現在では英国の数千もの学校や家庭で使用されています。共同設立者のAlex Hatvany氏は、Atomの将来性と、パーソナライズされた学習の循環を生み出すためにテクノロジーを活用することについて語ります。

Atom Learningは、パーソナライズされた学習をより身近で一貫性のあるものにしたいという思いから作られました。このプラットフォームは、AIをどのように活用していますか?

私はロースクールに在学中、生活のため家庭教師として働き始め、その経験から、保護者が子供の教育に早い段階から投資していることを知りました。しかし、家庭教師を雇えるのは裕福な家庭に限られ、また指導の質にも大きな差があります。そこで私は、プライベートスクールの学習教育をオンラインで再現し、可能な限り自動化してより身近で一貫性のあるものにするために、テクノロジーの活用を考えました。
家庭学習プラットフォーム「Atom Home」は、教師が作成した質の高い学習コンテンツと、児童一人ひとりの学習レベルにコンテンツを適応させるAIを組み合わせ、それをゲーム化したものです。

楽しく学習するとは、簡単に言うと教育のゲーム化ということでしょうか。

私たちは子供たちに、プラットフォームを使って楽しい、と感じてもらいたいと考えています。しかし多くのアプリでは、算数や理科の学習よりもアバターの髪色を変えることにより多くの時間を費やしていることが分かっています。重要なポイントは、子供たちが自分にとって適切な難易度で学習できること、そしてそれをゲームに取り入れることができるかどうかです。しかし、同時に学問的な厳しさを失わないようにすることも重要です。絶妙なバランスが必要です。

Atomはどのように適応するのでしょうか?保護者や学校は、Atomが適切な難易度の問題を選択していることをどのように確認できるのでしょうか?

適応評価機能によって、児童一人ひとりに適した難易度での学習が可能になり、子供たちがやる気をなくさないようなレベルで後押しします。Atomのアルゴリズムは、子供が次の問題に正解する確率と不正解の確率を1%以内の誤差で素早く予測します。そのため、子供たちが飽きることなく、自信を持って学習する適切な確率を判断できるのです。30人の児童がいる学級では、このようなパーソナライゼーションは難しいでしょう。

T1%以内の誤差で正確に予測するのに近道はありません。新しい問題を作成する際に、Atomの学習教育担当者は、プラットフォームの仕様に基づいて難易度を-1から5まで判別します。その後、何百人もの子供たちが問題に解答すると、Atomが学習し、必要に応じて難易度を調整します。その結果、何千人もの児童によって標準化された問題集が構築され、アルゴリズムが過去の解答から個々の児童に最適なレベルを選択し、問題を割り当てることができるのです。

事業成長の鍵は何でしょうか?

今日では何万人もの親や保護者の有料購読者がいるのですが、私たちが家庭学習プラットフォームを立ち上げた途端に、学校や教師からどれだけそれを気に入っているか、そして自分たちのために何かを作ってほしいというメッセージが届き始めました。

そこで私たちは、教師が授業内容や宿題を作成、テストを実施し、成績評価ができる学校向けのプラットフォーム「Atom School」を構築しました。重要なのは、このプラットフォームを無料にしたことです。学校に提供し、学校と信頼関係を築くことができれば、保護者から「子供にもっと何かできることがあるのではないか?」と相談された際に、学校側はこのプラットフォームを有用なツールとして推奨するでしょう。このようなB2B2Cモデルが、私たちの成長の鍵となります。

また、家庭学習と学校学習の間に生じるギャップを埋めることもできます。休日にも多くの児童がAtomを使用して家庭学習を行っているようですが、保護者の許可があれば、休日に児童が学んだ内容を教師と共有することができます。

現在、無料のプラットフォームを利用している学校はどのくらいありますか?次の展開は?

現在、1万人以上の教師がAtom Schoolを利用しており、約20万人の子供が教師からの課題に無料でアクセスしています。私たちは、これから3つ目の製品で、学校向けの初の有料プラットフォームとなるQuestを発売するところです。教師が学習年度を通じて子供たちの成績を評価し、学習状況を確認できるようにします。数年にわたり、学校向けの無料プラットフォームを提供してきましたが、実際の問題点がどこにあるのか、それにどのように付加価値をもたらすかを理解するまでに時間がかかりました。

それらの問題にはどのようなものがありますか?どのように対応していますか?

AIがどのように教育を変えていくかを語るには、一歩引いて考えることが重要だと思います。多くの学校では、今でも手作業でスプレッドシートにデータを入力し、多くの時間を費やしています。例えば、学校向けの無料プラットフォームを活用してもらうことで教師は、授業内容や宿題を作成し、作業時間を削減できます。また、あらゆるコンテンツが用意されているため、教師は子供たちにどのような指導を行うかを決めることができます。たとえば、学習のヒントとなるシートを見せるのか、ビデオを見せるのか。子供たちの学習の進捗をリアルタイムで確認でき、すべて自動で採点されます。また教師はテストを実施することもできます。

データを可視化することで、教師は、学校、学級、個々の児童の強みや改善点を理解し、児童一人ひとりに適切な課題を出すことができます。また、学習効果を実証し、保護者から首長まで、あらゆるステークホルダーとより詳細な情報に基づいて議論することができます。

Questによってさらにどのような利益がもたらされるのでしょうか?

現在、Atomは家庭と学校の両方の学習に重点を置いています。

Questでは、児童の学習進捗状況を確認し、成績を評価できます。小学校ではこの両方を行う必要がありますが、現時点では単一のプロバイダーを利用して両方行うことができません。Questは、様々な問題やコンテンツを提供し、解答を自動採点します。必要な情報を検索可能にする機能を提供し、教師は必要な情報を児童と共有できるようになります。

最後のステップは、学習と成績評価を結びつけることです。テストから得たデータを活用し、児童の学習をパーソナライズします。そして、成績評価、データ、個別化学習の循環を可能にします。このような包括的なアプローチを企業として目指しています。

Atom Learningの差別化ポイントは何でしょうか?

教師コミュニティとの緊密な関係が際立っていると思います。何百人もの教師と時間をかけて対話を重ねて、どんな課題を解決したいのか理解しなければ、彼らにとって何が有用なのかを知ることはできません。毎月何万人もの教師が利用している無料プラットフォームを提供することで、私たちはそういった対話を持つことができ、フィードバックに迅速に対応し、教師や学校にとって真に役立つデジタルパートナーとなる方法を理解することができました。

長い目で見て、AIやテクノロジーが、社会に何かをもたらすのにどう役立つと考えますか?

AIは、子供たちにより没入感のある、魅力的でパーソナライズされた体験を提供することで、一人ひとりの子供をやる気にさせ、彼らの強みを見つけ出す手助けをすると思います。

また、教育現場で働く人材の確保も重要です。その最善の策は、教師が本来の仕事に集中できる環境を整え、そもそも教育の仕事に惹かれた理由に立ち返ることができるようにすることです。それは、手動のデータ入力や負担のかかる学期末の事務作業ではないはずです。AIは、事務的な管理業務の自動化に役立ちます。AIを活用すれば、信頼性が高く一貫性のある客観的なデータを複数年にわたって継続的に取得し、学習の効果を評価することが可能になります。.

Atomを通じてどのような学びがありましたか?

教育業界においては長期的な視点が重要だということです。EdTechの事業は、消費者向けアプリのようにすぐに軌道に乗るものではありません。解決したい課題がどこにあるのかを把握するためには忍耐強くなる必要があります。しかし、高品質なサービスを提供すれば、驚くほど早く評判が広がり、全体としての成果が表れ始めます。

なぜ今EdTechなのでしょうか?

新型コロナウイルスの流行により必要に迫られたこともありますが、学校などがデジタル戦略を検討する重要な時期に来ているように感じます。予算の制約から、ビジネス分野と比較してずいぶん遅れを取っているようです。

もう一つの課題は、少なくとも英国では、大手の教育関連企業は典型的な紙ベースの出版社で、テクノロジー企業ではないことです。つまり、教師がテクノロジーを敬遠しているのではなく、優れたテクノロジー・ソリューションに触れる機会に恵まれていないのだと思います。私たちはこの課題に立ち向かい、先頭に立ちたいと考えています。

既存の紙ベースの出版社がテクノロジー企業に転換するのは事実上不可能でしょう。世界中でオンライン化の流れが続き、AIがこのプロセスを加速させる中で、テクノロジー企業が一歩踏み出し、学校の有益なパートナーとなるチャンスが到来しています。ですので、私は将来に楽観的でわくわくしています。

What dreams are made of