Eruditus

Ashwin Damera
CEO兼共同設立者

2010年に設立されたインドを拠点とするテクノロジー企業のEruditusは、世界中からエグゼクティブ教育を受けられるよう一流大学と提携しています。提携先は、ハーバード大学やケンブリッジ大学、INSEAD、MITなど、80以上の大学で、80カ国以上で35万人以上の学生に教育を提供しています。共同設立者でCEOのAshwin Damera 氏が、世界中の次世代リーダーに、質の高い教育をより身近で手頃な価格で提供するというビジョンを語ります。

Eruditusを設立したきっかけは何ですか?

共同創業者たちと私は、質の高い教育の恩恵を受けており、それが私たちの人生に、職業的にも個人的にも大きな影響を与えたと考えています。同時に、質の高い教育を手頃な価格で受ける機会が限られていることも明らかでした。毎年、6,000万人ほどの生徒が高校を卒業しますが、世界の上位500の大学に進学できるのは0.5%にも満たず、大きな格差が生じています。Eruditusを設立したのは、テクノロジーを活用して一流の教育機関が世界中のより多くの人々にオンライン講義を提供できるようにすることで、その格差を埋めるためです。
グローバルスキルは減少するどころかますます増加しており、当社の目的は、設立当時よりも今日においてさらに意味のあるものになっていると考えています。

Eruditusのパートナーシップとプログラムが、急速に変化する今日の労働力のニーズにどのように適応していると思いますか?

私がハーバード・ビジネススクールでMBA取得のために勉強していた頃、AIはカリキュラムの一部ではありませんでした。トップクラスの教育機関でさえそうだったのです。これはAIに限ったことではありません。サステナビリティやESGのようなトピックについて考えてみてください。今日、企業はより多様な人々が職場で受け入れられていると感じるようになるにはどうすればよいかを模索しています。しかし、それを実行できている企業がどれだけあるでしょうか。リーダーたちがその方法を理解できていると思い込んではいけません。私たちにとっては、社会が発展するにつれて進化し、新たに現れるこのようなトピックや分野を理解することが重要なのです。

EruditusはAIをどのように活用していますか?

たとえば、ライブセッションでより多くの質問に答えられるようにしたり、参加できなかった学生のためにセッションの内容を要約したりするなど、学生の学習体験を向上させるためにAIを活用し始めました。

またAIは、評価方法も変えています。オンライン教育に関する最大の批判の一つは、全ての問題が多肢選択式で、正しいか誤りかの採点方法しかないため、学生が努力する気持ちにならないというものです。実際、私たちの教育法では、記述式やエッセイ形式の解答方法を採用することが多いのですが、それらを採点するには労力がかかります。今はAIを活用し、より質の高い採点を行うことが可能となっています。

加えて、AIは最も人気のあるコースです。受講者は過去12カ月間で5倍に増加しました。そのため私たちは、AI革命に貢献できるもう一つの方法として、AIとより関連性の高いコンテンツを作り続けています。たとえば、MITのコンピューターサイエンス・AIラボと協力して制作したコンテンツを何千人もの人々に提供しています。この研究は、AIが企業をどこへ導くかに影響を与えるでしょう。

人々がキャリアや将来についてより良い選択をするために、AIは役に立つと思いますか?

私たちのようなプラットフォームの利点は、学生のバックグラウンドやモチベーション、コースの評価などのデータにあります。このようなデータを学生の情報から関連性を見つけ出し、最も適したコースを提案できる言語モデルに学習させる実験を開始しています。人間のプログラムカウンセラーが大人数の微妙なニュアンスを見極めていくことは難しいでしょう。

学生の卒業後に関するデータはまだ得られていませんが、そのデータを得ることは私たちのロードマップの一部です。具体的には、コースを修了した学生のうちどれだけの人が変わったのか、報酬にどれくらいの変化があったのか。これらの情報と、学生がコースで学んだ特定のスキルを結びつけることで、フィードバックのループが生まれます。

たとえば、LinkedInやMonster.comのような大規模なプラットフォームでは、求職者が持つスキルと企業が求めるスキルのマッチングに基づいて、その求職者が職を得る可能性が20%であることを伝え、その可能性を22%に高めるために実行可能な5つの方法を伝えることができます。そして、結果を測定してより良い結果を得るために活用していきます。

Eruditusは、労働者のスキルアップとリスキリングをめぐる激しい競争の中でどのような強みを発揮していますか?

私たちはコンテンツを提供するだけのプラットフォーマーではありません。3つの柱に基づいて教育を提供しています。

まずは、社会的相互作用です。人間は社会で学んでいくものと考えています。ですから、私たちが提供する全てのコースにおいて、コースの一部を自分自身で学ぶだけではなくグループの一員としても学ぶことになります。

2つ目は、ライブ配信授業です。学生は、教授や業界の専門家とリアルタイムで会話します。これが彼らにとって非常にモチベーションを高める要因となっており、全コースの平均修了率は85%です。

3つ目が、実践的な学習に重点を置いていることです。たとえば、MITの交渉術のコースでは動画を見て選択問題に解答するのではなく、4つのパターンの交渉シミュレーションを用意しています。

グローバル市場にも対応しています。学生の約30%が米国、さらに約30%がインドとアジア太平洋地域、その他は世界各国から受講しています。また、学生の約20%はコースのオリジナル言語以外で受講しています。

対面やオンラインで教えている教員からどのようなフィードバックや意見がありますか?

多くの教員が、オンラインコースができたことで対面授業の質が改善したと話しています。それはなぜでしょうか。教室では60分の講義をするのですが、オンラインでは誰も聞いていません。そのため教員は、10回程度の3分間講義に再編成せざるを得ず、短い時間で明確に要点と事例を提示する必要があります。学期末に重要な試験がある講義を多く行う代わりに、学期中に小テストによる評価を行います。教員は教室でもこの形式を採用し始めています。

事業成長のためにどのようなチャンスがあると考えていますか?

現在、私たちは約85の大学と提携しています。世界には2万以上の大学があります。特に、インド、東南アジア、ラテンアメリカ、ヨーロッパの多くの地域では、当社の事業はまだ初期段階にあるため、提携大学数を倍増させる大きなチャンスがあります。私たちはこれらの市場にさらに深く進出しながらも、トップ1%の教育機関と引き続き協力していきます。

また、現在の多くのパートナーシップはビジネススクールやエンジニアリングのスクールとのものですが、スキルギャップは他の分野にも存在します。医学、法学、ジャーナリズム、デザイン、公共政策、公衆衛生などの分野の学校に拡大する大きなチャンスがあります。

私たちは、個人に直接提供することから始めましたが、企業もまた、従業員のスキルアップやリスキリングに苦慮しています。企業が労働力を将来に備えるにあたり、当社の優れたコンテンツと配信メカニズムを活用し、どのような付加価値を提供できるかを考えています。

これまでに成し遂げたことで最も誇りに思うことは何ですか?

過去12カ月間で、約25万人の学生が私たちのコースに登録しました。もし私たちが存在しなければ、そのうちの約90%の学生はこれらのコースにアクセスできなかったでしょう。

学生の30%は女性であり、おそらく男性の学生よりも多くのことを同時にこなしており、当社の柔軟なオンラインモデルを通じて、質の高い学習に身近にアクセスできるようになっています。

今後100年間、仕事と教育はどのように変化していくと思いますか?

人類がより長生きすることを示す研究はますます増えています。そのため、20代前半に取得した学位が、プロフェッショナルとしてその後のキャリアで成功を収めることを保証するという考え方はなくなっていくでしょう。そのような状況になるまでに100年もかかるとは思いません。トップに立つ人たちとは、教育は継続的なものであり、キャリアとの関連性を保ち、潜在能力を十分に発揮するためには、常に教育へ投資し続けなければならないことを理解しているのです。

将来的には、学位取得を目的とする学習から、ハードスキルまたはソフトスキルといった特定のトピックに関する短期コースを1つずつ受講する学習にシフトしていくかもしれません。

企業もまた、学び方は人それぞれであり、ニーズに応じてさまざまな方法で個々のペースで学ぶことが許容されるべきだと考えるようになっています。企業が従業員に必要なトレーニングを受けるよう強制するのではなく、従業員自身でトレーニングを決定し、企業が特定の役割やプロジェクトに人材をマッチングする際に利用するスキルバンクとなるプラットフォームが登場するなど、分散化が進んでいくでしょう。

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