XAG

Justin Gong
共同創業者
兼シニアバイスプレジデント

2007年に設立されたXAGは、ロボティクスとAIを活用して農家を支援し、より少ない資源で農作物の生産量を増やすことを目指す、世界をリードするスマート農業テクノロジー企業です。

共同創業者兼シニア・バイスプレジデントのJustin Gong氏は、XAGがどのようにしてスマート農業のリーダーとなったのか、そしてAIがどのように環境的、社会的、経済的に持続可能な農業の未来を実現できるかについて語ります。

XAGにはどのようなビジョンがありましたか?

Peng Binと私は子どもの頃からラジコン航空模型に夢中でした。私たちは、社名を「XAircraft」としました。「X」は2007年の会社設立当初に製作したX字型クアッドコプターを象徴しています。同年、AppleがiPhoneを発表し、スマートフォンの大量生産が始まったことで、マイクロCPU、慣性計測ユニット(IMU)、カメラ、リチウム電池などの部品をより入手しやすくなりました。これにより、同様のテクノロジーを商業用ドローンに取り入れることが可能となり、私たちはビジネスの基盤を築きました。

農業用ドローンやロボットの分野に進出する際、「XAircraft」から「XAG」に社名を変更しました。農業の未来を表しており、「X」は限界を押し広げ、新たなフロンティアを探求するという私たちの決意を示すものへと進化させました。

ドローンのさまざまな用途を模索していたところ、2013年にある友人が、彼の故郷の中国北西部に招待してくれたことをきっかけに農業にフォーカスすることに決めました。

その地域は世界有数の綿花の生産地ですが、当時はまだすべての綿花が手摘みで収穫されており、農家は初めて機械式の綿花収穫機を導入しようとしていました。収穫機を使うには、綿の実が開いて完全に成熟するのを助けるために脱葉剤を散布する必要があります。植物の間を通り抜けるのは非常に難しく、トラクターを使用すると作物を踏みつけてしまい、収穫量の約10%を失うことになります。

米国では、農家が有人航空機を使用していましたが、中国にはそのような手段がなく、ドローンが農作物に薬剤を散布する非常に効率的な方法であることに気づきました。中国だけでも300万ヘクタール以上の綿花農地があるため、私たちは農業用ドローンの開発に着手しました。

ドローンには他にどのような農業用途がありましたか?

耕作農業を調べたところ、作物の生育段階ごとに機械化のレベルに大きな差があることが分かりました。耕起や播種といった作業はほぼ100%機械化されており、誰もがトラクターを使用していました。収穫も高度に機械化されており、中国では収穫の約85%に機械が使われています。

しかし、その他に植物保護や作物管理と呼ばれる期間があり、これは全作業時間の約80%、投入資源の70%を占めていますが、主に人力に依存しています。そこで、この期間にさらに多くのテクノロジーを導入することで、農業の生産性と効率を向上できると考えました。ドローンだけでなく、無人地上車両、IoTセンサー、農場管理ソフトウエアの開発を開始し、現在は自動運転トラクターにも取り組んでいます。

AIはどのように役立っていますか?

農家は、植え付けや収穫の重要な時期を機械化することに投資してきましたが、その他の長い期間は依然として人力に依存していました。考えてみると、機械化された作業は比較的単純で、収穫はやや難しいものの、それでも多くの思考を必要としない機械的なプロセスです。しかし、植物の世話は全く別次元の複雑さを伴います。環境や気候、土壌、湿度、熱の蓄積など、あらゆる要素を踏まえて判断する必要があるからです。そして、天候の変化、作物の病気、害虫などに対応する能力が求められるため、多くのツールを使えず、従来は人の知識と判断に頼ってきました。

米国やブラジル、ドイツの大規模農場では単一作物のみを栽培しているため、除草剤を散布して作物以外の植物をすべて除去し、大型機械を使用して生育環境を管理できます。しかし、中国、日本、東南アジア、ラテンアメリカ、アフリカの大多数の農家は小規模で、同じ土地で、時期をずらして複数の作物を栽培しています。植物の管理には時間と労力がかかるため、それをXAGが支援できるのです。

XAGは、単一用途の大型機械ではなく、小規模農家向けによりスマートで小型かつフレキシブルなツールを設計することで事業を作り上げてきました。XAGのドローンはすべて完全自律型で、センチメートル単位の精度とリアルタイムの操作性、40ミリ波レーダー、上部のカメラなどを備えており、コンパクトながら複合マイクロセンサー、強力なチップ、IoT、ロボティクステクノロジーが組み込まれています。

これらすべてがAIによって連携され、さまざまに変化する環境を理解し、意思決定できるインテリジェントで自律的なソリューションを提供しています。AIは、農家で代々受け継がれてきた知識を補完する役割を果たします。

XAGのプロダクトやサービスに共通する理念は何ですか?

XAGのハードウエアやソフトウエアなどのプロダクトラインアップを支えるものはデータです。

ドローンこそ、農家がスマート農業への扉を開く鍵だと私たちは言ってきました。農場でドローンを飛ばすための高精細な圃場マップが必要です。

都市部では距離や予測可能なルートタイムがマッピングされており、フードデリバリーやタクシーなど、私たちが当たり前のように享受している多くのサービスが実現しています。しかし、農場にはベースとなるマップが存在しないため、空中でも地上でも精密な自律運転を可能にし、ナビゲーションネットワークを提供するドローンベースのマッピングシステムを開発しました。このマップが農場の基礎的なデータセットを提供します。

さらに、これらのプロダクトが圃場で稼働することで、さまざまな種類のデータが生成されます。現在、データはローカルサーバーに保存されていますが、将来的にはこのデータが農家にとって非常に価値あるものになると考えています。

サプライチェーンにおいて、例えば、このデータがスーパーマーケットにとって、農家や投入資源、農作業など、農作物に関するあらゆる情報を把握する助けになると想像してみてください。また、このデータは、より良い農業にしていくためにも活用できます。

保険会社は、このデータによって、問題の特定や損失の計算をより正確に行うことができるようになるでしょう。銀行にとっても、農家に対してより適切な資金を提供することができるようになります。これらすべてを結びつけているのがデータであると確信しています。

農業の未来についてどのようなビジョンを持っていますか?

XAGにとっての未来とは、AIを活用して農業を発展させることです。これは単に生産性を向上させるだけでなく、まったく新しいエコシステムを構築することを意味します。

現在、空には飛行機やドローン、圃場にはロボットなど、多くの機械やツールがありますが、農業生産の大部分は依然として人の手によって行われています。また、農家に必要な知識は、世代から世代へとほとんど変わらず受け継がれてきたものが中心となっています。

しかし、環境の変化に伴い、その状況は急速に変わりつつあります。現在、ほとんどの農家が気候変動の現実を受け入れていると思いますが、5年前はそうではありませんでした。農業の伝統的な知識は変化に対応する必要があり、あらゆるツールや農業手法の考え方も変えていかねばなりません。ここでAIが役立ち、変化する状況の中で農場を理解し、管理する新しい方法を開発できるのです。

また、世界の人口は増加し続けていますが、多くの国で次世代の農家が減少しています。農家は家族で都市へ移住し、農業に携わる人が少なくなっています。農場を所有したいものの、農作業はしたくないと考えるようになっています。ここでロボティクスとAIが役立つのです。

さらに、農業をエコシステムとどのように統合するかという課題もあります。環境面では、産業革命以来、多くの地球上の種が農業などの人間の活動によって失われてきました。過去20年で生物多様性が大きく減少し、例えばミツバチや蝶の個体数も減少しています。

今こそ、土地の使い方を工夫することで、生物の多様性を高めつつ、より少ない耕作面積で現在と将来の世代に十分な食料を生産する世界を実現できる時でもあるのです。

XAGにとって、これが農業の未来です。テクノロジーとAIを統合し、農業をより持続可能で自律的かつ効率的にする、そして農家が家族でその土地に住み続けられるようにする、さらに私たち皆が十分な食料を手に入れることができるようにすることが目標です。

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