IR情報
監査役メッセージ
グループ規模の拡大により
さらに重要性が増す
監査役の役割
ソフトバンクグループ(株)監査役
宇野 総一郎
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本ページにおける情報は2018年7月末現在のものです。
ソフトバンクグループにふさわしいガバナンスのあり方とは
私が最初に監査役に就任した2004年は、業績がなかなか上向かない中、通信事業への本格参入を見据えた買収が相次いだ時期でした。当時の取締役会では、孫社長が投資案件を持ち込んでも、資金面での理由などにより、否決になることも少なくなかったと記憶しています。今や国内通信事業の収益基盤は、他の国内通信会社に劣らないレベルとなりました。ここ数年で、グループが展開する事業の裾野がグローバルに拡大するにつれ、取締役会も外国人取締役の占める割合が大きくなりました。また、ソフトバンク・ビジョン・ファンドを設立するなど、ソフトバンクグループ(株)は軸足を事業会社から戦略的持株会社へと移しつつあります。これらは、当社の歴史の中でも大きな変化だと思います。
一方、事業基盤が海外に広がっても、ソフトバンクグループ(株)は欧米で主流の委員会設置会社ではなく、従来の監査役設置会社の採用を継続しています。実績のある優秀な経営者が集うソフトバンクグループ(株)の取締役会は、大局的な視点で戦略や大型投資を吟味し、決議する場としてとてもよく機能している反面、コンプライアンス上の課題やリスクまで詳細に議論することは時間的にも困難になっています。監査役設置会社を採用するソフトバンクグループ(株)では、監査役が独立した立場から監査することにより、取締役会を通じて経営の監視機能を果たすだけでなく、監査役設置会社の利点である常勤監査役の存在を生かし、社内や現地など各現場に精通した常勤監査役が日頃から国内外の現場をチェックすることで、効率的な監査を行っています。ソフトバンクグループ(株)の元執行役員法務部長で、現場にも精通している須﨑監査役や、海外子会社の会議に積極的に参加している遠山監査役が共有してくれる現場の最新情報はとても有用です。
社外取締役および社外監査役の在任年数については、柳井取締役や私を含む社外監査役の在任年数は、一般的な社外取締役や社外監査役と比べて比較的長期になっています。しかし、事業の裾野が広く、かつ変化がとても速い当社を理解するまでにかなり時間がかかることを考えると、在任年数の長短だけで適任か否かは判断できないと思います。これに加え、グループ全体の事業規模が大きくその内容が多岐に及び、また孫社長を始めとする経営陣の意思決定が柔軟かつ迅速であるため議論すべき案件が多い、というソフトバンクグループの特徴を踏まえると、取締役会の議論においても論理的判断力だけでなく、問題点を嗅ぎ取るような、これまでのグループ内外での経験に裏打ちされた直感もとても重要だと思います。柳井取締役は、ソフトバンクグループのあるべき戦略という観点からいつもぶれない意見を発言されており、孫社長含め取締役会に良い緊張感を生んでいると思います。
意思決定プロセスの透明性・公正性の向上に向けて
グループ全体の収益構造が変わり、キャッシュ創出力も大きく向上した今では、取締役会において孫社長を始めとする経営陣が持ち込んだ投資案件を、資金面を理由に否決することは少なくなりましたが、ソフトバンクグループとしての戦略を前提に投資案件を議論し合うところは、これまでと変わりありません。一方、取締役会で取り扱う案件の規模はとても大きくなりました。
規模の大きな案件は知るべき情報も複雑であり、中でも急に付議されるような案件は、内容を十分に理解されないまま決議されることにもなりかねません。そこで、須﨑監査役が常勤監査役に就任した2017年6月を機に、議案については監査役に対する事前説明をお願いし、その説明、特にリスク分析とリスク説明が分かりにくければ、取締役会の資料の追加や修正をお願いすることとなりました。このようなプロセスを加えることで、われわれ監査役が必要十分な理解をもって取締役会に臨むことができるとともに、取締役会における議案説明をより分かりやすくするという点で、社外取締役の理解向上と議論の深化にも貢献できていると感じています。
監査役から見たソフトバンク・ビジョン・ファンドについて
これまでソフトバンクグループ(株)は、スプリントやアームの案件のように、大型買収を自ら行い、行った後は積極的に経営に携わってきました。しかしながら、今後も同様の手法を大型の買収案件で取り続けることは財務的にも人材的にも難しくなってきています。ソフトバンク・ビジョン・ファンドは、ソフトバンクグループ(株)のリスクを抑制しつつ投資対象を広く大きくできるメリットがあります。また、一般的に、海外、特に欧米でのファンドによる投資は監督官庁による規制が厳しく、より規律あるガバナンスが求められますが、ソフトバンク・ビジョン・ファンドは欧米の厳しい規制に服するファンドであり、ガバナンス面での不安がある程度払拭できる点もメリットです。
ソフトバンク・ビジョン・ファンドの立ち上げ当初は、管理体制が十分に整わないこともありましたが、それも徐々に解決されてきました。今後も、ソフトバンクグループ(株)の強みでもあるスピード感と効率性を理解しつつも、監査役としてしっかり海外のガバナンス体制の整備を監視していきたいと思います。
ガバナンスおよび監査体制の課題について
私はこれまでにいくつかの会社の取締役会において弁護士として助言してきましたが、ソフトバンクグループ(株)ほど変化や成長が速い会社は無く、また、前述のとおりソフトバンクグループ(株)は事業規模も大きく、事業内容もグローバル展開する中で多岐にわたっているため、その監査は容易ではありません。そのため最近では、社外監査役も、社内の主要部門から事業などの説明を受ける会議にできる限り出席するようにしています。
現場を知る中で懸念と感じることは、グループの規模や成長速度に対する人材の不足です。ソフトバンクグループ(株)では、営業の人員がバックオフィス(管理系)の業務を同時にこなすこともまだ多く、もし営業面で問題があった時に、客観的にその問題を指摘し解決できるか懸念を抱いています。この問題は取締役会の人材構成においても同様で、管理部門担当者の取締役への登用が今後必要なのではないかと考えています。また、ソフトバンク・ビジョン・ファンドやデルタ・ファンド、およびそれらの投資先企業と、ソフトバンクグループ間の利益相反の防止のための体制の確保も重要な問題として認識しています。
ガバナンスには、経営の効率性とコンプライアンスの両方が求められます。コンプライアンスばかりに配慮すると、会社の勢いが損なわれてしまいますが、だからといってコンプライアンスを軽視してもいいということにはなりません。取締役会では、投資のことばかりでなく、日頃のガバナンスの実効性やコンプライアンスについて報告を求める意見も出ています。取締役は大変忙しく、どうしても議案を絞らざるを得ませんが、グループのガバナンスについてもう少し議論する時間を確保できるよう、監査役として働きかけていきます。
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