ソフトバンク株式会社
宮川 潤一
代表取締役 社長執行役員 兼 CEO
ソフトバンク株式会社は、通信サービス(4000万件)、インターネットメディア(8500万人)、コミュニケーションサービス(9700万人)、キャッシュレス決済サービス(6600万人)など幅広く事業展開しています。膨大なデータ量が生まれるAIと共存する社会を実現するために、ソフトバンクは分散型AIデータセンター、AI向けの計算基盤プラットフォームなどの次世代社会インフラを構築しています。
代表取締役 社長執行役員 兼 CEOの宮川潤一が、同社の今後の展望と、AIが今後どのように私たちのコミュニケーションのあり方を変えていくのかについて語ります。
「ソフトバンク」として、いま取り組んでいること、これから実現したいことは何でしょうか?
私が2021年4月に社長に就任して以来、「ソフトバンク」という会社は、社会に必要不可欠な会社にならないといけないと社内外に言い続けてきました。どういうことかというと、これからの社会の根幹となるデジタルとAIの領域で、それらのサービスを支えるインフラ・プラットフォームを担う企業になるということです。
今後、日常生活からあらゆる産業において、IoTを含むさまざまなデバイスがこれまで以上に繋がっていき、関連するサービスやソリューションはAIが搭載されたプラットフォームで運用されます。このインフラをソフトバンクが構築し、運用していくというわけです。
現在取り組んでいる主なものを挙げると、日本語に特化した大規模言語モデルの構築、生成AIの自社開発や高まるAI関連の利用ニーズに応えるための北海道に大規模なAIデータセンター構築、AI-RANの整備などがあります。このように、ソフトバンクは、ネットワークインフラ、データセンター、生成AIなどAIの垂直統合型の経営資産を強みにしたビジネスを展開していくことを目指しています。
現在世界では凄まじいスピードで、AI向けの計算基盤が構築されており、生成AIを中心としたさまざまなAIが開発されています。米国や中国での開発・整備が特に突出していると認識しています。これほどのスピードで整備されているのは、それを持つ企業や国の富を生み出す源泉になっていくことが自明であるからです。翻って、私は、日本はこのままでいいのかという危機感を持っています。現在の日本の国際サービス収支におけるデジタル赤字は約6兆円の規模になりますが、生成AIサービスの出現で、日本のユーザーがどんどん日本以外のAIサービスを利用することで、この赤字幅はさらに急拡大してしまいます。私は日本の企業の社長として、AIが社会インフラの要になるのなら、日本の文化や言語に適した国産のAIが必要だと考えています。日本の利用者が利用しやすい、日本特有の文化・慣習を理解したAIがあれば、より多くの人に使ってもらい、あらゆる生活やビジネスシーンにより多くの価値を提供でき、日本社会にAIが根付いていくきっかけにもなるでしょう。それがひいては、デジタル赤字の是正にも繋がるのではと考えています。
AIが社会に浸透していく中でどのような影響があるとお考えでしょうか?また、人々や社会のコミュニケーションはどのように変化していくのでしょうか?ソフトバンクはその変化に対してどのような準備をしているのでしょうか?
AIが今後、どのように社会に浸透し、そのAIプラットフォーム上でどのようなアプリケーションで出てきて、人々にどのような影響を及ぼすのかという質問は、そもそもAIが凄まじい勢いで高度化し続けている現状では、回答が非常に難しいですね。現在、日々学習を続けて進化し続けるAIで、将来どのようなプラットフォームサービスやアプリケーションが生まれてくるのか、または使われていくのかという点は、世界中のテック・AI企業にとっても一番の関心事であり、ビジネス戦略に直結しているところですから、そう簡単に手の内は明かしてくれないでしょう。ソフトバンクのグループ全体の方向性としては、ASIの実現があり、そこから生まれるエコシステムを作り上げてグループ全体の成長を狙っていくことは明確ではありますが。
GPT-3.5の登場以来、加速度的に進化しているAIの潮流は、現在の産業の前提を大きく覆す可能性を秘めていることは間違いなく、社会インフラの基盤(OS)が入れ替わってしまうようなものになるでしょう。過去を振り返って、グローバルレベルでOSを制した企業がどうなったのか、そのビジネスのエコシステムやビジネスモデルはどうなったのか、またそこから生まれた各種サービスがどれだけ人々の生活に入り込み、コミュニケーションや仕事の仕方を変えていったのかについては、皆さんが、スマホの利用者としてすでに体験されてきたことかと思います。GPT-3.5の登場以前から、AIと共存していく社会は必ずやってくると想定していたので、次世代社会インフラ構想を掲げ、そのための準備を進めています。
社会に大きな影響を与えるAIの進化は、同時に、人と人を疎遠にしてしまうのではと危惧する見方もありますが、AIと共存する社会はどうなっていくのでしょうか?
スマホの普及と通信インフラの高度化に伴い、より便利で生活を豊かにするサービスがどんどん出てきました。それと同じようにAIが高度化し、社会に浸透すればするほど、AIをベースにした多様なサービスが生まれ、生活をより便利にし、産業を効率化し、社会全体の最適化を実現していくとみています。スマホが多種多様なコミュニケーションサービスの形を提供して、人と人を繋げてきたように、AI共存社会でも、人と人との繋がりはより密になっていくのではないかと考えています。人が人とコミュニケーションしたいという欲求は普遍的なものだからです。
AIが人類や社会全体に与える影響について、様々な意見があることは理解していますが、基本的にポジティブな影響が多いのではと楽観視しています。というのも、これまでソフトバンクがその時代の最先端テクノロジーの提供を通じて、たくさんのビジネスパートナーや行政機関の皆さんと一緒になって知恵を出し合いながら、社会課題の解決へ向けて取り組んできたからです。今後、AIは、世界各国で、目的・用途に合わせて多種多様なレベルのものが開発されていきます。中には、AI同士が会話していき互いに学習していくパターンもあるでしょう。AI共存社会では、社会課題の解決に向けて、AIがより多くの知識や知恵を生み出し、これまで思いつかなかったような解決方法を提示してくれるかもしれません。将来私たちは、このようなAIの恩恵を受け、活用することで、より快適で豊かな社会を築いていけると信じています。
ドリームメーカーたちとの出会い
リレーションシップと社会的交流の将来を形作る、ソフトバンクグループのポートフォリオ企業を率いるビジョナリーに話を聞いてみましょう。