たとえば田舎に住むおじいちゃんの家で考えてみます。おじいちゃんは電話だけでいいので、今まで使っていた電話機をそのまま使います。ただし家の壁のところまで「光」が来ているので、家の内側に電話機を使うためのターミナルアダプターを取り付けます。そこからWi-Fiを使った無線LANが使えますので、遊びに来た孫が持ってきた電子教科書が、そのまま使えるようになる。あるいは診察に来たお医者さんが持ってきた電子カルテがそのまま使える。つまりおじいちゃんは、今までどおりの電話代のまま、追加コストなしで21世紀の生活の一部を得ることができるようになるのです。
「光」にはほかにも、さまざまな利点があります。たとえばオンラインショッピング。あらゆるところに光が引かれると、大容量のデータを瞬時にやり取りできるようになるため、新鮮なみずみずしい野菜や、おいしそうな湯気を立てている団子を、動画でそのまま見ることができます。日本には世界でもっとも優れた商品の配送システムがありますから、すぐに商品が届きます。残念ながら日本にはさまざまな規制がありますが、成長を促進するために規制緩和をすれば、一気にオンライン店舗は増えていきます。
教育にも恩恵があります。まずクラウドコンピューティングに、今ある教科書の素材をすべて入れてしまい、教科書は紙から電子に100%置き換えます。そして1,800万人の学生すべてに、国から無料で電子教科書を配ります。その費用は儲けを考慮しなければ、1台2万円×1,800万人=3,600億円でできます。先ごろ話題になった「八ツ場ダム」の建設費が約4,600億円。ダムの建設をたった1つあきらめるだけで、日本のすべての学生に電子教科書がいきわたります。しかも3,600億円というのは初年度だけで、翌年以降は新小学1年生への支給と、新中学1年生への機種変更を考慮しても、年間400億円で済んでしまいます。
教科書と同じ端末を病院で利用すれば、電子カルテにもなります。日本中をすべて「光」でつなぎ、地域医療からあらゆる情報をクラウドコンピューティングに入れる。端末をすべての医師や看護士に無料で提供すれば、医療関係者はいつでも必要な情報を手に入れることができ、また患者本人も自らの情報を入手できます。本来医療情報は患者本人に帰属しているはずですから、たとえば一度どこかの病院でレントゲンを撮れば、別の病院に行っても、その情報をクラウドコンピューティングから引き出せばいい。こうしたことを活用していくと医療費は減り、誤診も減る。遠隔地の医者に、優れた医者がリアルタイムに情報提供をできれば、医師不足の緩和にもなります。今日本の歳出約90兆円に対して、税収は約40兆円。その90兆円の費用の中で、一番大きいのが医療費であり、5年後には47兆円になると言われていわれています。ところが医療情報をクラウド化し電子カルテにするだけで、医療費を三分の一に減らすことが可能となるのです。
20世紀の日本は、「電気の道」によって1,000万人の雇用が生まれました。21世紀は光回線で日本中すべてがつながり、すべての産業がつながります。農業も漁業も流通も金融も、すべての産業が「光」化する。そうすると、20世紀の「電気の道」がそうであったように、21世紀は「光の道」が新たな多くの雇用を生み出します。世界一の高速通信、世界最高品質のネットワークインフラを持つことで、豊かな国民生活を得ようじゃありませんか。もう一度日本を成長軌道に乗せようじゃありませんか。日本のためにすべての国民が目覚め、古いしがらみを取り払う。それは誰のためでもない、日本のため、自分たちのため。そして我々の子のため孫のため、腹をくくろうじゃありませんか。