IR情報
アニュアルレポート 2021 アームの事業戦略
長期的投資からの
収穫が進む
CEO, Arm Limited
サイモン・シガース
半導体テクノロジーで世界をリード
アームは、半導体技術開発のグローバル・リーダーとして、あらゆるものがつながっている今日の世界を形成するパーベイシブ・コンピューティング※1の中心的役割を担っています。アームのプロセッサー・テクノロジーは、高機能プロセッサーとしては世界で最も広くライセンス供与・採用されており、スマートフォンではほぼ全て、タブレットとデジタルテレビのほとんどで使用されているほか、組込プロセッサー用チップでも高い割合で搭載されています。IoTや自動運転車、産業オートメーションなど、新たに顕在化しつつあるエレクトロニクス市場でも、アームの高機能プロセッサー・デザインが数多く採用されています。
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※1:モバイル、自動運転、IoTなど、全てのテクノロジーとネットワーク環境が融合した、コンピューター技術やその環境。必要な情報に「いつでもどこでも」簡単かつ安全にアクセスできる状態
アームのビジネスモデル
アームは、アームのテクノロジーを搭載したチップを製造する半導体企業に対し、プロセッサー・デザインのライセンスを供与します。ライセンス供与される企業は、アームのテクノロジーを利用するにあたって、初期費用としてライセンス料を支払い、また、アームのテクノロジーを使用したチップごとに、その販売価格などに基づきロイヤルティーを支払います。
アームのデザインは、幅広いアプリケーションで利用可能です。異なるチップファミリーとして複数の市場向けに再利用され、新たなロイヤルティー収入を生み出すこともあります。一つのデザインが、さまざまなチップで使用され、25年超にわたって出荷され続けることもあります。
長期を見据えた投資
世界は目まぐるしく変化を続け、新しいアプリケーションやデバイスのカテゴリー、市場が次々と生まれています。その多くが、性能を発揮する上で高度な半導体を必要とします。一方、新しいデバイスで使われるテクノロジーの開発には長い年月を要するため、アームは、5~10年後に消費者や企業が使い始める製品を見据えた投資を今日行っています。2016年のソフトバンクグループによる買収以降、アームは研究開発投資を大幅に増やし、新たな事業機会にふさわしいテクノロジーの開発を進めてきました。
アームは、以下を念頭に新プロセッサー・テクノロジーの開発を行ってきました。
- スマートフォンやコンシューマー・エレクトロニクス、組込コンピューティングなど、すでにアームが強みとしている領域での市場地位を維持する
- より多くのテクノロジー(グラフィック・プロセッサーや機械学習プロセッサーなど)と、より付加価値の高いテクノロジー(パフォーマンスとセキュリティーの強化など)が提供できる領域での価値向上を図ることで、より高いロイヤルティー単価を実現する
- 自動運転車やIoT、拡張現実(AR)ヘッドセットなどの新興技術分野で、マーケットリーダーの地位を確立する
- OEMやクラウド企業へのテクノロジーの直接ライセンス供与など、競争環境に変化をもたらすような新しいビジネスモデルを導入する
投資の収穫期へ
2020年度は、新型コロナウイルスの感染拡大に加え、顧客企業の多くがリモートワークを余儀なくされた1年でしたが、アームにとっては、アームのテクノロジーを搭載した新製品が市場に登場し始めたことにより、過去何年にも及ぶ投資強化が収入増という形となって現れ始めた年となりました。
アームのロイヤルティー収入は前年度から16.7%増加しました。要因は以下の通りです。
- 通常ロイヤルティー収入の過半を占めるスマートフォン向けチップの中で、5G向けが4Gを上回って伸び、全体に大きく貢献しました。
- 通信事業者による5Gネットワークの世界規模での急速な導入。多くの基地局や無線ネットワーク機器がアームベースのプロセッサーを使用しており、増収を牽引しました。
- アームベースのサーバー向けチップの立ち上がり。チップの販売総数はまだ少ないものの、前年度から大きく増加し、今後数年間は持続的な増加が見込まれます。
アームのロイヤルティー以外の収入(ライセンス収入およびソフトウエア・サービス収入)は、期初に新型コロナウイルスの感染拡大に伴う先行き不透明感によってライセンス契約が一時的に低迷したものの、その後以下の要因によって回復を見せたため、前年度から1.7%の減少にとどまりました。
- 近年提供が開始されたデータセンター向けプロセッサー「Neoverse」やAI活用の場を広げる機械学習プロセッサー「Ethos」などの新規ライセンス契約締結
- アームのテクノロジーを使用し最初の製品を開発するスタートアップ企業などを含む新規顧客
2020年度、アームは160を超えるライセンス契約を締結しました。これは過去平均を大幅に上回る水準です。さらに、高価値のライセンス契約のいくつかが2020年度の売上には計上されておらず、大部分は今後計上される見込みです。
アームの顧客にとって、複雑なSoC(システム・オン・チップ※2)の開発は時間を要します。そのため、今日供与したライセンスはロイヤルティー収入が生じるまで2~3年かかります。しかし、そのチップが商業的に成功すれば、その後数年から数十年にわたりロイヤルティー収入を得ることができるでしょう。2020年度におけるロイヤルティー収入増加の大半は、2017年以前に締結したライセンスに起因するものです。
2020年以降、一部のOEM企業にとって自社製品に必要な半導体チップの調達が困難になっていることが大きく報道されました。チップ不足から生産停止に追い込まれた自動車メーカーもあります。この要因の一つに、5Gスマートフォンやネットワーク機器の需要が非常に高かったことがあります。一部のチップメーカーがこれらの市場向けチップを優先したために、他で供給不足が生じる結果となったのです。アームは、スマートフォンや無線通信機器に搭載されるチップで非常に高い市場シェアを有しているため、これらの市場でのチップの販売増がプラスに影響しました。
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※2:マイクロプロセッサーをはじめグラフィックスやメモリーコントローラーなどの各種機能が、一つのチップ上にシステムとして統合されたもの
世界の可能性を開く
アームは世界中から優秀なエンジニアを採用しており、彼らの能力を結集することで、世界の可能性を開く新しいテクノロジーを生み出しています。2020年度は、より高度なテクノロジーを開発しポートフォリオをさらに拡充するために、技術関連人員を前年度末から11.0%増やしました。今後も、消費者は自身や家族のためにもっとスマートなデバイスを求め続けるでしょうし、企業はAIアルゴリズムを活用してもっと洗練された製品・サービスを提供して顧客のニーズに応えたいと願うことでしょう。アームのテクノロジーが、消費者や企業のこのような願いを実現するきっかけとなっていくことを願っています。
アームのテクノロジーを搭載したチップの出荷数※3
累計ライセンス契約数※4
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※3:各年におけるライセンシーからの報告に基づく。当初の報告から件数の更新があった場合は修正後の数値
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※4:ロイヤルティー収入の発生が見込まれるライセンス契約のみ
NVIDIAとのアーム全株式の売却契約の締結
2020年9月、当社は保有するアームの全株式をNVIDIAに対して取引価値を最大400億米ドルと評価した取引で売却することについてNVIDIAとの間で最終的な契約を締結しました。詳細については、78〜79ページをご覧ください。
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アニュアルレポート 2021(10.5MB/271ぺージ)
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本ページにおける情報は2021年7月末現在のものです。