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アームの事業戦略—ソフトバンクグループレポート 2022

アームの物語は次の章へ

CEO, Arm Limited

レネ・ハース

CFO, Arm Limited

インダー・M・シン

半導体テクノロジーで世界をリード

アームは、半導体技術開発におけるグローバル・リーダーとして、あらゆるものがつながっている今日の世界を形成するパーベイシブ・コンピューティング※1の中心的役割を担っています。アームのプロセッサー・テクノロジーは、この種の半導体デザインとしては世界で最も広くライセンス供与・採用されており、スマートフォンではほぼすべて、タブレットとデジタルテレビのほとんどでも使用されているほか、組込プロセッサー用チップでも高い割合で搭載されています。IoTや自動運転車、産業オートメーションなど、新たに顕在化しつつあるエレクトロニクスの新市場でも、アームの高機能プロセッサー・デザインが数多く採用されています。

  • ※1 モバイル、自動運転、IoTなど、すべてのテクノロジーをネットワーク環境下において融合するコンピューター技術であり、必要な情報に「いつでもどこでも」簡単かつ安全にアクセスできる状態のことです。

アームのビジネスモデル

アームは、アームのテクノロジーを搭載したチップを製造する半導体企業に対し、プロセッサー・デザインのライセンスを供与します。ライセンス供与される企業は、アームのテクノロジーを利用するにあたって、初期費用としてライセンス料を支払い、また、アームのテクノロジーを使用したチップごとに、その販売価格などに基づきロイヤルティーを支払います。

アームのデザインは、幅広いアプリケーションで利用可能です。異なるチップ・ファミリーとして複数の市場向けに再利用され、新たなロイヤルティー収入を生み出すこともあります。一つのデザインが、さまざまなチップで使用され、25年超にわたって出荷され続けることもあります。

長期を見据えた投資

世界は目まぐるしく変化を続け、新しいアプリケーションやデバイスのカテゴリー、市場が次々と誕生しています。その多くが、性能を発揮する上で高度な半導体を必要とします。一方、新しいデバイスで使用されるテクノロジーの開発には長い年月を要します。アームは、5~10年後に消費者や企業が使い始める製品を見据えた投資を、現在行っています。2016年のソフトバンクグループによる買収以降、アームは研究開発投資を大幅に増やし、新たな事業機会にふさわしいテクノロジーの開発を進めてきました。

新プロセッサー・テクノロジーの開発投資は次のような目的の下で行われています。

  • スマートフォンやコンシューマー・エレクトロニクス、組込コンピューティングなど、すでにアームが強みとしている領域での市場地位を維持する
  • より多くのテクノロジー(グラフィックプロセッサーや機械学習プロセッサーなど)と、より付加価値の高いテクノロジー(パフォーマンスとセキュリティーの強化など)が提供できる領域での価値向上を図ることで、より高いロイヤルティー単価を実現する
  • 自動運転車やIoT、拡張現実(AR)ヘッドセットなどの新興技術分野で、マーケットリーダーの地位を確立する
  • OEMやクラウドサービス企業へのテクノロジーの直接ライセンス供与など、競争環境に変化をもたらすような新しいビジネスモデルを導入する

数年前の投資が今日の収益の源泉

顧客企業が、アームのテクノロジーを搭載して複雑なSoC(システム・オン・チップ)※2を開発するまでには、時間を要します。今日供与したライセンスからロイヤルティー収入を得るまでには少なくとも2~3年間待たなければなりませんが、チップが商業的な成功を収めれば、その後数年から数十年にわたる追加的なロイヤルティー収入源になります。

過去数年にわたる投資強化の結果、より多くの新製品の市場投入が進み、2021年度、アームの増収幅はさらに拡大しました。

アームの非ロイヤルティー収入(ライセンス収入およびソフトウエア・サービス収入)は2020年度から61.0%増加しました。主な要因は次の通りです。

  • 最新の「Armv9」アーキテクチャーをベースにした「Cortex-X2」、「Cortex-A710」、「Cortex-A510」などの新製品の導入
  • 複数の大手グローバル企業との間での、アームのプロセッサーおよび関連テクノロジーのポートフォリオを幅広く網羅する長期契約の締結
  • 自動運転からデータセンター用サーバー、スマートフォン、スーパーコンピューターまで、幅広い最終市場向けにアームのテクノロジーの採用が拡大したことを受けた、通常以上のライセンス契約数

アームのロイヤルティー収入は2020年度から20.1%増加しました。主な要因は次の通りです。

  • スマートフォン(特に4Gに比べ多くのアームのテクノロジーが搭載されている5Gスマートフォン)の販売台数の増加
  • 5Gネットワーク構築の世界規模での進展
    (より多くの基地局や無線ネットワーク機器のシステムがアームベースチップを搭載)
  • クラウドサービス提供企業のデータセンターにおけるアームベースチップの採用の拡大

2021年度のロイヤルティー収入の大半が、2016年以前に開発したテクノロジーが生み出したものである一方、非ロイヤルティー収入は、ソフトバンクグループによる買収後に市場に投入されたテクノロジーやビジネスモデルなどにより増加したものです。

売上高 (百万米ドル) 2020年度 2021年度 増加 増加率
ロイヤルティー収入 1,278 1,536 258 20.1%
非ロイヤルティー収入 702 1,129 427 61.0%
合計 1,980 2,665 685 34.6%

アームのテクノロジーを搭載したチップの出荷数(単年)※3

アームのテクノロジーを搭載したチップの出荷数(単年)
  • ※2 マイクロプロセッサーをはじめグラフィックスやメモリーコントローラーなどの各種機能が、一つのチップ上にシステムとして統合されたものです。

  • ※3 各年におけるライセンシーからの報告に基づきます。当初の報告から件数が更新された場合は修正後の数値です。

アームの物語は次の章へ

2022年2月に私、レネ・ハースはアームのCEOに任命されました。それまでは、2017年からアームのIPプロダクトグループ(IPG)のプレジデントを務めてきました。在任中、IPGはインフラストラクチャーや自動車などの成長市場向けの新製品への投資に加えて、業界最大のソフトウエア・デベロッパーのエコシステムへの投資も拡大してきました。アリババ、Ampere Computing、Amazon Web Services、Bosch、デンソー、Mobileye Technologies、Telechipsなどがアームのエコシステムに新たに加わったのも、このような投資の成果といえます。

アームの経営陣には、2018年からCFOを務めるインダー・M・シンもいます。私たちは共に事業をリードし、アームの物語を次の章へと進めていきます。2021年度第4四半期には、アームの株式上場の準備に入る方針がソフトバンクグループから発表されています。

  • 「ソフトバンクグループレポート 2022」は2022年7月27日に発刊しました。

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