株主・投資家情報(IR)

CFOメッセージ—ソフトバンクグループレポート 2022

不安定な環境下でも財務方針を堅持。
当面は「守りに徹する」
慎重な運営を続ける

ソフトバンクグループ(株)
取締役 専務執行役員 CFO 兼 CISO
財務統括 兼 管理統括

後藤 芳光

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外部環境の変化

投資会社にとって、外部環境の認識は非常に重要です。この1年は、過去5~10年のスパンで見ても、特に大きく外部環境が動いた年でした。米国ではインフレを背景に金融引き締めが進み、金利が上昇を続けているほか、ロシアのウクライナ侵攻に伴う地政学リスクの高まりの中で原油価格の高騰が続いています。これらの動きは、結果として株式市場に大きな影響を与えており、NASDAQ総合指数やS&P500が年初から軒並み下落しています。また、米中両国の政策・規制を受けて、米国に上場する中国株式で構成されるNASDAQゴールデン・ドラゴン中国指数はこの1年で半分にまで低下しました。

このような環境下で、当社の保有株式価値も2022年3月末で23.2兆円と、1年前の30.4兆円から大幅に減少しました。しかし、当社の投資ポートフォリオの約7割を中国銘柄が占めていた3年前にこの状況が起こっていたら、保有株式価値はさらに下落していたでしょうが、ポートフォリオの分散が進み、中国銘柄の構成比率が低下してきたことが、相対的に下落幅を小さくしたといえます。当社は社債も発行しているものの、発行済みの社債は固定金利ベースであるため米国における金利上昇の影響を受けません。投資先の一部には金利の動向から直接影響を受けるビジネスモデルの企業があり、その影響度合いは冷静に見ていく必要がありますが、そのような企業はポートフォリオ全体から見ると多くありません。

資本市場ではリスクオフの動きが継続しています。地政学リスクの高まりと中国の政策動向、さらには各国の金融政策の動向によって、この不透明感は当面続くことが予想されます。当社は、さらなるダウンサイドに備えつつ、今後6~12カ月間はリスク要因の見極めを図り、とにかく「守りに徹する」慎重な財務運営を続けていく考えです。

2021年度の総括:財務方針を堅持の上、投資活動と株主還元を着実に継続

2021年度を振り返ると、不安定な市場環境の中、しっかりと財務方針を堅持した上で、投資活動と株主還元を着実に継続することができた1年でした。

財務方針の堅持

従来より投資家の皆様にお約束している財務方針は、いささかも変更ありません。「通常時にLTVを25%未満で運用(異常時でも上限35%)」「少なくとも2年分の社債償還資金を保持」「SVF1や2、子会社から継続的な配当収入を確保」という3つの重要な財務方針を引き続き堅持しています。2022年3月末のLTVは20.4%となり、十分な財務的余裕を引き続き確保しています。また、手元流動性は2.9兆円※1と、社債償還スケジュールから見てもこの先2年分を優に超える水準を確保しています。

NAV

投資会社である当社を評価する上で最も重要な指標であるNAVは、2022年3月末現在、上場投資先の株価下落の影響を受け、18.5兆円となりました。われわれは、NAVは市況に伴って上下変動を繰り返しながらも、長期的には右肩上がりに成長を続けていくと期待していますが、足元では1株当たりのNAVをソフトバンクグループの株価と比べると、大きくディスカウントし続けており、このギャップを埋めていくことが経営の大きな課題だと認識しています。

財務活動

財務活動については、安定的な財務運営の下、着実に資金調達を実行することができました。当社の保有資産価値を十二分に活用し、アリババ、アーム、Tモバイル、ドイツテレコムの株式を活用したアセットバック・ファイナンスにより、2021年度に合計223億米ドル(純額)の資金調達を実現しました。中でも2022年3月には、未上場のアーム株式を活用して80億米ドルの資金を調達しました。また、2021年度は、総額1.2兆円※2という大きな規模の社債を償還した年でもありました。社債のロールオーバーを期待する投資家の運用ニーズを満たしつつ、国内外で、シニア社債、劣後社債そしてハイブリッド社債などあらゆるメニューの社債を発行することで、市場から2.3兆円※2、償還分との差額で見ると純額で約1兆円の調達を行うことができました。

投資活動

投資活動では、新規投資を進めながら投資回収を行い、結果としてポートフォリオの分散が進展しました。これに加え自社株買いも実行するなど、当社のやりたかったことがしっかり実行できたと評価しています。

2021年度の前半はまだ環境が良かったこともあり、SVF1とSVF2で合計442億米ドル、LatAmファンドで43億米ドルの投資を行い、2021年度は総額500億米ドル近い投資を実行しました。一方、株式市場の悪化が見られ始めた第3四半期以降は、新規投資のスピードを大幅に落としています。環境変化に合わせて柔軟かつ機動的な対応を講じ、LTV水準をコントロールしました。財務方針はどのような環境においても順守しなければならないというのがマネジメントの共通認識です。社長と財務メンバーが有意義な議論をし、当社がとるべき行動の優先順位を共有・決定し、着実に実行してきたことが、財務の安全性をしっかりと確保することにつながっています。また、投資の売却・資金化やファンド事業からの分配も着実に進み、SVF1とSVF2からは合計152億米ドルの分配金を受領し、アセットバック・ファイナンスや手元資金と合わせて、ファンド事業への再投資の原資となっています。ポートフォリオバランスにも留意しています。2022年3月末の保有株式価値全体に占めるアリババ株式の比率は約23%と、一時期の6割強から大幅に縮小しました。この一方で割合を増やしたのがソフトバンク・ビジョン・ファンドです。ファンド事業の投資先数も475件※3となり、ポートフォリオの分散が進んだと評価しています。

ポートフォリオの分散が進む

保有株式価値(アセットバック・ファイナンス除く)の内訳

保有株式価値(アセットバック・ファイナンス除く)の内訳

2021年11月には、向こう1年間で1兆円を上限とする自社株買いプログラムを発表しました。財務方針の堅持を前提に、投資機会、NAVディスカウントの水準などを考慮しながら、機動的に進めています。発表から8カ月がたった2022年6月末までに6,381億円の自社株買いを行いました。これまでのところ、時機を捉えて順調に進捗していると評価しています。

2021年度の投資と回収のサイクル

2021年度の投資と回収のサイクル
  • (注)各四半期の期中平均レートで換算しています。

  • ※1 現金及び現金同等物+流動資産に含まれる短期投資+コミットメントライン未使用枠。2022年3月末のコミットメントライン未使用枠は1,247億円です。ソフトバンクグループ単体ベースです(SB Northstarを除きます)。

  • ※2 ソフトバンクグループの社債償還額は120ページ、社債発行額は119ページをご覧ください。

  • ※3 2022年3月末現在。ただし、SVF2のみ2022年5月6日現在。全持分売却済みの投資と、投資委員会承認済みで投資完了前の15社を含みます。

  • ※4 SVF1のインセンティブスキームへの分配金(10億米ドル)を含みます。

  • ※5 先渡売買契約およびマージン・ローンなどによる調達額(純額)です。

引き続き財務方針を堅持しつつ、外部環境の変化には柔軟に対応

不透明な投資環境が続く中、2022年度は「財務方針の堅持」と「あらゆる変化に対応できる柔軟かつ機動的な財務運営」の2つを財務戦略の柱として進めていきます。財務方針は変えないことが正しい姿です。今後どのように環境が変化しても、先に述べた3つの財務方針は堅持していきます。

ここ数年、当社は投資会社として、投資から回収・資金化、そしてその資金を元にした再投資というサイクルをしっかりと確立してきました。過去2年を振り返ってみましょう。2020年度は、コロナ禍で市況が悪化する中で「4.5兆円プログラム」での資金化で得られた資金を原資に、大規模な自社株買いと財務改善を実施し、2020年度末のLTVは12.2%となりました。2021年度は、ファンド事業からの分配と資金化などで得た資金をファンド事業での新規投資に充当するとともに、自社株買いにも活用しながら、市場環境が悪化する中でも年度末のLTVを20.4%に着地させました。冒頭にも述べたように、今後は、投資と回収のサイクルを維持しつつ、さらなるダウンサイドに備え、慎重に運営を続け、リスク要因を見極めながら外部環境のあらゆる変化に柔軟かつ機動的に対応していきます。

2022年2月には、当初予定していたアームの米国NVIDIA社への売却契約を解消し、アームの株式上場に向けた準備に入ることを発表しました。時期については最善のタイミングを見極めていきたいと思っています。われわれは、自分たちを「情報革命の資本家」と位置付け、投資を通じて、将来の成功が期待されるIT・AIを駆使した企業を早い段階からサポートしてきました。そのIT・AIの基幹インフラを提供するアームを中心に、新たな生態系を作り上げることで、さらに力強く情報革命を牽引していきます。アームは、買収以降の研究開発が功を奏し、2021年度の調整後EBITDA※6が10億米ドルと大きく成長しています。よって、この段階において上場を目指すのは、われわれと株主にとって有益といえるでしょう。当社の保有株式価値における上場株式の比率も再上場によって上昇するため、当社格付の判断にもプラスの影響をもたらすことになると思います。

2022年度の財務運営方針(イメージ)

2022年度の財務運営方針(イメージ)
  • ※6 IFRSを基準としていますが、完全に準拠しているとは限らず、未監査、暫定的なものとして変更になる可能性があります。

ESGの本質的な取り組みを充実させる

2021年度はESGの取り組みをさらに進めました。まず、ソフトバンクグループとして重要性の高いESG領域に関するグループポリシーを整備しました。主要なグループ会社には独立した上場企業もありますが、各社の定めるポリシーを理解・尊重しながらもグループとしての方針を明確に示すため、「環境ポリシー」や「サプライヤー行動規範」を新設しました。グループポリシーの整備は、今後も積極的に進めていきます。

また、投資事業におけるESGの取り組みも推進しています。すでに当社投資先の多くが、気候変動への対応、資源循環の推進、多様性や包摂性の確保、格差や差別の解消などに取り組んでいます。今後も、投資基準にESGをいかに自然に組み込んでいくかが重要なテーマだと考えています。ESGの視点が足りない企業は中長期的に成長が劣る可能性を孕んでおり、そのような企業への投資は、結果として当社の投資パフォーマンスにも影響しかねません。社会的要請に正面から取り組むことは重要です。投資基準に組み込む以上は、投資後も継続的なモニタリングを通じて投資先の状況を把握し、必要に応じてエンゲージメントも行っていきます。ESG推進における「E」の環境分野については、2022年6月に当社グループの温室効果ガス排出量の削減目標とともにTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に沿った情報開示を行いました。ソフトバンクグループ単体ではすでにカーボンニュートラルを達成しており、複数の主要子会社でもすでに独自の目標を打ち出している中で、今後はグループ一丸となった取り組みを進めていきます。

「S」の社会分野に関しては、人権リスクの特定など人権への取り組みの強化を進めています。また、新型コロナウイルス感染症対応にも引き続き積極的に取り組み、ワクチン接種の全国的な実施や「移動式PCR検査車」の開発などを行いました。昨今、より重要性が高まっている人的資本にも注力しています。投資事業の最大の資本はまさに「人」です。人材の質の継続的な向上が当社の成長を牽引すると考え、社員一人ひとりが能力を高めグローバルに活躍する人材となっていけるよう、会社としてもサポートしていきます。

「G」について、ガバナンスの中核であるソフトバンクグループの取締役会は、取締役のスキルマトリックスからも明らかなように、グローバルな企業経営者や一流の学識経験者を中心に、スキル面の多様性に富んでいます。また、社外取締役比率が5割超という特徴ある構成となっています。

ソフトバンクグループのESGに対する取り組みは第三者評価機関からもすでに高く評価いただいていますが※7、さらに本質的な取り組みを充実させていきたいと考えています。今後も、社会的要請も踏まえながら、継続的な改善を怠ることなく、より良き姿を志向してESGを推進していきます。

  • ※7 サステナビリティに関する社外からの評価は39ページをご覧ください。

  • 2022年6月24日付でIR部長の上利 陽太郎がチーフ・サステナビリティ・オフィサーおよびサステナビリティ部長に新たに就任しました。
    57ページのメッセージをご覧ください。

  • 「ソフトバンクグループレポート 2022」は2022年7月27日に発刊しました。

  • 本ページにおける社名または略称はこちらよりご確認ください。

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