株主・投資家情報(IR)

ソフトバンク・ビジョン・ファンドの投資戦略—ソフトバンクグループレポート 2022

AI革命への確信は不変

ソフトバンクグループ(株)副社長執行役員
CEO, SoftBank Investment Advisers

ラジーブ・ミスラ

2021年度は前半と後半で様相の異なる市場環境となったことが投資家にとって印象的な1年でした。通年では、NASDAQ株式市場は16,212.23ポイントの最高値を記録し、市場全体の平均PERは20倍を超えました。未上場テクノロジー企業に対する上場への需要も高く、過去最高の384社が上場し、前年の2倍以上となる920億米ドルの資金調達がなされました※1。昨年度のこのレポートでは、世界的なパンデミックがもたらした急速なデジタル化の進展についてお話ししました。2021年度に入り、新型コロナウイルス感染症による悪影響は解消し始めましたが、われわれの投資先が提供するデジタル製品やサービスに対しては、引き続き高水準の需要が続いています。一部の購買習慣は元に戻るかもしれませんが、デジタル消費の利便性とスピードは、購買行動の水準を大きく塗り替えてしまいました。このため、年度前半はAI企業に対する投資家の関心が大いに高まり、われわれのポートフォリオに大きな恩恵をもたらしました。

対照的に、年度後半は、厳しさを増す中国の規制環境やサプライチェーン問題、ロシアのウクライナ侵攻が、マクロ経済におけるボラティリティーを高めました。インフレの急速な進行による経済影響、複雑化する地政学的リスク、多くの市場で資源価格が高騰していることに象徴される世界的なエネルギー・ショック。この極めて重要な3つのテーマによって、不確実性が定着しつつあります。上場・未上場銘柄に投資するほとんどの投資家にとって厳しい状況です。ソフトバンクグループも例外ではなく、市場の不確実性が継続する懸念から、投資先の公正価値が減少しました。しかし、設立来累計では、ソフトバンク・ビジョン・ファンドは2022年3月末現在で288億米ドル※2の利益を上げています。ソフトバンク・ビジョン・ファンドが、長期投資ビークルとして、市場の変動を越えて、多様な地域、セクター、テクノロジーにまたがる比類ないエコシステムを作り上げるべく意図的に設計されていることが、われわれの強みになっています。

テクノロジーによるディスラプション(創造的破壊)は、今後何十年にもわたって実感されていくであろう、世代を超えた潮流です。この事への確信は変わりません。われわれの投資ポートフォリオがそれを裏付けています。設立以来、ソフトバンク・ビジョン・ファンド1は90社以上に875億米ドル※2を投資してきました。2021年度には12社が世界各地の証券取引所に上場し、これまでに上場した投資先数は26社に達しました。これは、ソフトバンク・ビジョン・ファンド1の構成が成熟してきたことの表れです。2022年3月末現在、ソフトバンク・ビジョン・ファンド1の資産のうち58%がエグジット済みまたは上場済みです。だからこそ、われわれのキャピタル・マーケッツチームはこれらのポジションを資金化し続けることができ、ファンドの設立から5年で387億米ドルをリミテッド・パートナーに分配するという、目覚ましい成果を挙げてきました。

ソフトバンク・ビジョン・ファンド2も引き続き力強く前進しています。2021年度は208件に新規投資し、投資先は現在250社を超えました。コミットメント総額は560億米ドルに達し、現在、世界第2の規模のテクノロジー・ファンドです。より小規模、アーリーステージ、地域・セクターの分散に重点を置いた投資スタイルをとっており、株主の皆様にも納得いただけると思います。さらに、直近では、ソフトバンク・ラテンアメリカ・ファンドをSoftBank Investment Advisersのプラットフォームに統合しました。ソフトバンク・ラテンアメリカ・ファンドは2019年に設立され、ラテンアメリカ地域の投資先100社以上に約70億米ドルを投資しています。設立来のブレンドIRR(内部収益率)※3は32%と、力強い成果を挙げています。

  • ※1 PwC「Global IPO Watch 2021」

  • ※2 当社連結ベース

  • ※3 ブレンドIRRとは、管理報酬、成功報酬、優先出資持分に係る定率の固定分配額(Preferred Equity Coupon)およびその他の諸経費が支払われた後の普通出資持分および優先出資持分を含めた正味の内部収益率を指します。2022年3月末現在のリミテッド・パートナーからの資金拠出・分配、投資資金融資枠の実行額、投資関連の純資金調達額およびLatAmファンドの純資産価値を基に算出されています。なお、これは、Preferred Equity Coupon(分配済み・未払い含む)を反映したものです。当該数値は、ソフトバンクグループの普通出資持分に係る内部収益率を表しています。該当がある場合は、マネージャーとしての成功報酬(支払済み・未払いを含みます)の影響が加味されます。

グローバルプラットフォームが進化

われわれの投資能力は、このように着々と、単一の投資ビークルからグローバルなマルチファンド・プラットフォームへと進化してきました。SoftBank Investment Advisersは、5年前にソフトバンク・ビジョン・ファンド1を運用するために設立されました。その後、ソフトバンク・ビジョン・ファンド2の立ち上げと拡大、そしてソフトバンク・ラテンアメリカ・ファンドの統合によって、われわれの投資能力はグローバル規模で飛躍的に拡充しました。現在では、世界14の主要地域で活動する経験豊富な投資および各管理部門の専門家チームによって、合計1,750億米ドルを超える資産を運用しています。

キーとなる市場において現地で強い存在感を示すという、われわれの努力は実を結びつつあります。2021年度には、イスラエル、日本、サウジアラビア、トルコおよびアラブ首長国連邦で初めて投資を手掛けました。人材に投資し続けると同時に社内の人材育成にも力を入れ、2021年度はグローバルな見識・専門知識を豊富に備えた6名を新たにマネージング・パートナーに任命しました。また、投資チームの強化のため新たに59名を採用し、そのうち46%は女性です。継続的な成功に必要な、適切な人材とリソースが備わっていると思います。

ソフトバンクグループのネットワークが持つ力は、世界中の創業者の羨望の的です。ソフトバンクグループのポートフォリオによるエコシステムは、現在450以上の投資先をはじめ、アリババ、アーム、ソフトバンクなどから成っており、共に成長することを目指して、連携や共有が図られています。

ソフトバンク・ビジョン・ファンドには前例というものがなく、成功を疑問視する声が多くありました。しかし、ビジョンと規律があればベンチャーキャピタルはうまくスケールアップできることをわれわれは証明したのです。

このトレンドは、未上場テクノロジー企業のイノベーション・スーパーサイクルを促し、資産クラスとしてのグロース・エクイティのあり方を不可逆的に変えました。機関投資家によるこの分野への投資は、過去10年間のほかのあらゆる未上場の資産クラスへの投資を凌駕しています。その結果、世界中のユニコーンの数は急速に増加し、現在では1,000社を超えました※4。そのうち195社がわれわれの投資先なのは、胸を張れることでしょう。

もちろん、現在の環境下では慎重な姿勢と規律が必要です。マサ(当社代表取締役 孫 正義)が言うように、状況に応じて守りを固めることが大切です。われわれは投下資本を厳選していかなければなりません。投資チームは引き続き積極的に活動していますが、新規投資の承認のための要求水準は厳しくなっており、必然的に投資のペースは鈍化しています。また、資本市場の見通しが悪化していることから、2022年度には新規上場が減少するでしょう。不確実な状況が続く中で、企業がユニット・エコノミクスの強化を優先させるためです。新型コロナウイルス感染症の大流行時と同じように、われわれは投資先と密接に連携し、市場環境が改善した時には、これらの企業がより強固な存在となっているよう支援しています。

選好されるグロース株投資

世界的にユニコーンの数が増加

世界のユニコーン数

世界のユニコーン数

グロース・エクイティはほかの資産クラスを上回って成長

ドライパウダー(投資待機資金)の増加率(2010~2020年)※5

ドライパウダー(投資待機資金)の増加率(2010~2020年)
  • ※4 Statista「Global Unicorn Herd Now Counts 1,000+ Companies」2022年4月

  • ※5 Bain & Company「Global Private Equity Report」2021年

  • 「ソフトバンクグループレポート 2022」は2022年7月27日に発刊しました。

  • 本ページにおける社名または略称はこちらよりご確認ください。

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