株主・投資家情報(IR)
アームCEOメッセージ—ソフトバンクグループレポート 2023
半導体テクノロジーで世界をリード
アームは、半導体技術開発のグローバル・リーダーとして、未来のコンピューティングの在り方を左右する存在となりつつあります。CPU設計のリーディングカンパニーであるアームと、何十億ものデジタル機器を生み出す1,000社以上のパートナー企業から成る世界最大級のテクノロジー・エコシステムが作っていく未来。スマートフォン革命を牽引してきた私たちは今、クラウドコンピューティングの可能性を再定義し、自動車産業の変革やIoT経済の活性化を実現するとともに、メタバースを現実のものにしようとしています。
アームの注力分野である低消費電力性と継続的なイノベーションは、「スマート」コンシューマー・エレクトロニクスという新たなカテゴリーを生み出しました。今日、低消費電力性はビジネスにとって重要なだけでなく、地球のサステナビリティのために欠かせない要素といわれています。消費電力抑制と効率性向上が求められながら演算処理能力への要求も高度化する中、アームのCPUテクノロジーは現代、そして未来のコンピューティング・アプリケーションにふさわしい存在となっています。
アームのビジネスモデル
アームは、アームのテクノロジーを搭載したチップを製造する半導体企業に対し、プロセッサー・デザインのライセンスを供与します。ライセンス供与される企業は、アームのテクノロジーを利用するにあたってライセンス料を支払い、また、アームのテクノロジーを使用したチップごとに、その販売価格などに基づきロイヤルティーを支払います。
アームのデザインは幅広いアプリケーションで利用可能です。異なるチップ・ファミリーとして複数の市場向けに再利用され、新たなロイヤルティー収入を生み出すこともあります。一つのデザインが、さまざまなチップで使用され、開発当初から25年超にわたってロイヤルティー収入を生み続けることもあります。
長期を見据えた投資
世界は目まぐるしく変化を続け、新しいアプリケーションやデバイスのカテゴリー、市場が次々と誕生しています。その多くが、性能を発揮する上で高度な半導体を必要とします。一方、新しいデバイスで使用されるテクノロジーの開発には長い年月を要します。アームが今行う投資は、5~10年後に消費者や企業が使い始める製品のためのものです。2016年のソフトバンクグループによる買収以降、アームは研究開発投資を大幅に増やし、新規事業機会を的確にとらえるためのテクノロジーの開発を進めてきました。
新プロセッサー・テクノロジーの開発投資は次のような目的の下で行われています。
- スマートフォン、コンシューマー・エレクトロニクス、自動車、組込コンピューティングなどの長期的に成長が見込まれる市場でシェアを拡大または維持する
- 追加機能や高性能化・高効率化、そしてより専門的なデザインの提供を通じて、すべてのスマートデバイスに搭載されるアームプロセッサーの価値を向上させる
- より完全なシステムも含めた製品ラインアップの拡充を通じて、顧客の製品価値向上につなげる
- AIや機械学習などの次世代テクノロジーに投資する
- 柔軟なビジネスモデルでアーム製品へのアクセスを拡大し、顧客企業の製品にアームのテクノロジーを搭載する新しい方法を創造する
数年前の投資が今日の収益の源泉
顧客企業が、アームのテクノロジーを搭載して複雑なSoC(システム・オン・チップ)※1を開発するまでには時間を要します。今日供与されたライセンスからロイヤルティー収入を得るまでには少なくとも2~3年間待たなければなりませんが、チップが商業的な成功を収めれば、その後数年から数十年にわたる追加的なロイヤルティー収入源になります。
過去数年にわたる投資強化の結果、より多くの新製品の市場投入が続いた2022年度、アームの売上はさらなる拡大を見せました。
アームのテクノロジー・ロイヤルティー収入は、2021年度から16.1%増加し、過去最高となりました。主な要因は次の通りです。
- プレミアムスマートフォン向けチップ(特に4Gより多くのアームのテクノロジーを搭載する5Gスマートフォン向けチップ)からの収入の増加
- クラウドサービス提供企業のデータセンターにおけるアームベースチップ採用の継続的な拡大
- 自動車市場でのアームベースチップの採用拡大
2022年度の半導体市場は、自動車や産業用電子機器向けの市場が成長したものの、格安スマートフォンやコンシューマー・エレクトロニクス、PCの売上が減少したことなどにより3.2%のマイナス成長※2となりましたが、アームの成長はこのトレンドに逆行するものとなりました。
非ロイヤルティー収入は、2021年度から8.5%減少しました。高額の複数年契約に係る売上が認識された前年度に比べれば減収になりましたが、最近導入した「アーム・トータル・アクセス」など、アーム製品のポートフォリオを長期にわたってライセンシーに提供する新たな高価値ライセンスが収益の下支え要因となりました。
アームのテクノロジーを搭載したチップの出荷数(単年)※3
売上高 (百万米ドル) | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 |
---|---|---|---|
ロイヤルティー収入 | 1,278 | 1,536 | 1,783 |
非ロイヤルティー収入 | 702 | 1,129 | 1,034 |
合計 | 1,980 | 2,665 | 2,817 |
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マイクロプロセッサーをはじめグラフィックスやメモリーコントローラーなどの各種機能が、一つのチップ上にシステムとして統合されたもの。
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World Semiconductor Trade Statistics
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各年におけるライセンシーからの報告に基づきます。
アームの物語は新章へ
私たちは経営陣を刷新し、2022年11月にジェイソン・チャイルドを新CFOとして迎えました。ジェイソンはこれまで複数社でCFOを務めた経験がある人物です。ほかにも経営経験が豊富な4名の独立取締役を新たに迎え入れ、取締役会の拡充と多様化を進めました。
加えて私自身は2023年6月にソフトバンクグループの取締役に就任しました。ソフトバンクグループが起こす情報革命の旅に加われることにワクワクしています。AIや高度なチップの設計・製造、IoTといった新しいテクノロジーについて、その動向やこれらのテクノロジーがソフトバンクグループとその投資先にもたらす恩恵について私自身の洞察を共有することで、ステークホルダーの皆さんに貢献できると確信しています。
2022年2月に、ソフトバンクグループは、アームによる新規株式公開(IPO)に向けた準備開始を公表しました。その後、2023年4月に、アームは米国証券取引委員会に対して、IPOに関するForm F-1登録届出書ドラフトを非公開で提出しました。
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本ページにおける情報は2023年7月27日現在のものです。
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