株主・投資家情報(IR)
SVF:マネジメントメッセージ—ソフトバンクグループレポート 2023
厳しい市場下でのレジリエンスと規律
(左から)
Member of the Executive Committee, SB Global Advisers
Co-CEO, SB Investment Advisers
アレックス・クラベル
Member of the Executive Committee,
SB Global Advisers
グレッグ・ムーン
CFO, Member of the Executive Committee,
SB Global Advisers
CFO, SB Investment Advisers
ナブニート・ゴビル
2022年5月の決算説明会で、マサ(当社代表取締役 会長兼社長執行役員 孫 正義)は投資家やメディアを前に、激動の時代における「守り」の徹底の重要性を説きました。その後1年を通して世界市場が不安定さを増していったことを考えると、このメッセージは、タイミング良く発信されたといえるでしょう。ウクライナ情勢の激化は世界のエネルギー価格の高騰をもたらし、米中間で地政学的緊張が続いたことで、テクノロジー・スタートアップ企業に対し双方の規制当局が介入スタンスを取るようになりました。また、金融政策の引き締めにより資本コストが上昇しました。消費者インフレが続く中、中央銀行は対策を講じ、2022年初頭以降FF金利は急上昇し、2023年3月時点では2007年来最高値の5%に達しています。この金利上昇のペースは多くの金融機関を危機に陥れました。シリコンバレー銀行、シグネチャー銀行、ファーストリパブリック銀行の破綻は、私たちが不安定な時代の渦中にいることを改めて認識させるものでした。
このようなマクロ環境の不安定さにより、世界市場は大幅な調整局面となりました。NASDAQ-100 Technology Sector指数は上半期に40.2%下落、Refinitiv Venture Capital指数は57.7%下落しました。これはソフトバンクグループ固有ではない、市場全体の現象でしたが、われわれはその影響を大いに受けました。2023年3月末現在、ソフトバンク・ビジョン・ファンド全体での、2022年度の公正価値評価の減少額合計は、資産の21%に相当します。運用開始以来のパフォーマンスを詳細に見ると、ソフトバンク・ビジョン・ファンド1は、累計投資利益が114億米ドル※と、依然としてプラスを維持しています。一方、運用開始後まだ日の浅いソフトバンク・ビジョン・ファンド2およびソフトバンク・ラテンアメリカ・ファンドは、市場の影響がより顕著にパフォーマンスに表れており、それぞれ183億米ドルと17億米ドルの累計投資損失※となっています。
市場の不確実性が高まる中、私たちは守りを固める戦略へと舵を切りました。2021年度には多額の新規投資を行いましたが、2022年度には投資規模を根本的に縮小し、新規投資を厳選しました。このような機敏な対応によって、現在の不安定な環境下でも資金を温存することができ、今後市場環境が好転したときに投資を再開できるだけの潤沢なドライパウダー(待機資金)を確保できています。
資本の保全も、2022年度のポートフォリオ運用上の重点施策でした。あらゆるセクター・地域において投資先の経営陣と協力し、財務・オペレーション両面の強靭化をサポートしました。今日のような環境下で、投資先は、ガバナンスや企業文化の強化、サプライチェーンの見直し、コアプロセスの効率化など、より少ないコストでより多くを達成するためのやりかたを学んでいます。ファンダメンタルズを重んじることにより、市場の不確実性が続く中でも、世界の一流投資家からの資金調達につながっています。2023年3月末現在、ソフトバンク・ビジョン・ファンド1の公正価値の98%を占める未公開投資先企業が12カ月以上の資金ランウェイを有しており、ソフトバンク・ビジョン・ファンド2とソフトバンク・ラテンアメリカ・ファンドではそれぞれ90%と84%となっています。市場は今後も変動を続けるかもしれませんが、彼らは、今日の状況から起こりうる影響に備えるとともに、持続的に成長していく決意を新たにしています。
ファンドとしては、ポートフォリオ全体の価値を最大化し、ソフトバンクグループをはじめとするリミテッド・パートナーに還元していくことに引き続き注力しています。資金化の戦略は、戦略的・財務的なものからオポチュニティに連動したものまで、複数の要素によって推進しています。まず、パフォーマンスの期待値、ポジションの規模や流動性、投資リスクプロファイルなど、アセット固有の要因を考慮します。次に、セクター・地域の見通し、マクロ経済の動向、IRRやMOICの最適化など、市場やファンド要因を幅広く検討します。このような、資金化への規律性あるアプローチは、設立以来一貫して、リターンプロファイルの土台となっており、累計資金化額は毎年堅調に増加しています。市場が好調な時期に戦略的に資金化を実行した結果、2021年12月末までの累計資金化額は460億米ドルと、前年末の165億米ドルから約300億米ドル増加し、累計実現利益は229億米ドルに達しました。
守りの姿勢の維持は、投資活動やポートフォリオ管理にとどまりません。日々のわれわれの業務効率性を向上させるための措置も講じています。その一環として、ソフトバンクグループの海外投資をSB Investment AdvisersとSB Global Advisersに集約しました。グループの持つ投資能力を一つのチームに統合し、複数の機能チームを横断的に活用することで業務シナジーを実現しています。この効果はすでに発揮されており、われわれは「One SoftBank」としてこれからも密接に連携していきます。
世界市場は引き続き警戒が必要ですが、われわれの投資先は水面下で前進を続けています。われわれのポートフォリオには、公正価値で370億米ドル超相当の強力かつ安定したレイトステージ企業があり、時機を見て上場する準備が整っています。
用心に用心を重ねながらも、2023年度に起こるであろう変化への備えは万端整ったと感じています。厳選投資、価値の最適化、規律ある資金化を通じて、市場機会に適応しながら、この投資プラットフォームを進化させていきます。
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当社連結ベース。本項におけるその他の数値は、SVF単体ベースです。外部投資家持分および税金等の控除前の数値です。
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本ページにおける情報は2023年7月27日現在のものです。
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