株主・投資家情報(IR)

CROメッセージ—ソフトバンクグループレポート 2023

不安定な市場環境の中、
投資会社としてのリスク管理を強化

ソフトバンクグループ(株)
CRO
リスク管理室長

市村 清

Q.この1年間で顕在化したリスクのうち、特に重大と認識しているものは何でしょうか? またそのリスクへはどのように対応していますか?

当社は、AI関連企業を主な対象とする投資会社であり、経済環境および株式市場の影響を非常に大きく受けます。例えば、ハイテク企業を中心に構成されるNASDAQ総合指数が2023年3月末までの1年間で15%近く下落したほか、ベンチャーキャピタル市場の総投資額も2021年末をピークに大幅に縮小しました。このような市場環境下で、当社が保有する公開投資先の価値は下落し、未公開投資先も業績悪化などの影響もあり、評価を大幅に下げました。加えて、当社の投資事業は海外企業への投資が中心ですから、為替変動の影響も大きく受けます。2022年度、ドル円相場は急速に変動しましたが、仮に急激な円高が発生すると、当社の保有株式価値に悪影響をもたらします。

このような環境の中、リスク管理室では引き続き財務部門と連携し、リーマンショックなどの市場危機を想定したストレステストの実施を通じてLTVや手元流動性への影響度の分析などを行い、その結果を取締役会や経営層へ四半期ごとに報告しています。

2022年度は投資先の急激な評価減にみまわれましたが、LTVや手元流動性などの財務指標は良好な水準を維持することができました。これは市場環境の変化を踏まえ、当社の投資や資産売却に関する方針を適切なタイミングで守り重視に切り替えたことが奏功したと考えています。

また、最近の米中対立の激化を背景とする規制強化についても注視しています。特に米国の国家安全保障を目的とした、半導体などのハイテク製品を対象とする投資や輸出に関する規制は今後も厳格化が見込まれます。当社の投資活動や投資先企業の事業に悪影響を及ぼす可能性が懸念されることから、国内外の専門の部署と連携しつつ、状況把握に努めています。

Q.不安定な市場環境がSVFの投資先に及ぼす影響に注目が集まっていますが、個々の投資先のリスク管理をどのように行っていますか?

SVFでは、注視すべき投資先を特定すべく、経済・市場・業界の動向調査だけでなく、投資先の取締役会への参加などを通じて経営方針と課題の把握や業績見通しと資金計画の分析を行っています。その結果はSVFの経営層へ報告され、その対応についての議論がなされます。

SVFは通常、投資先の少数株主であり、日々の経営を直接コントロールすることはできません。しかし、多くの投資先において取締役会での議決権に加え、希薄化を伴う資金調達・追加の借入・会社の売却に対する拒否権などの一定の権利を持っており、これらの権利を最大限に行使するべく努めています。

特に最近では投資先の資金調達環境が悪化している点を踏まえ、将来の調達への依存を低減すべく、事業拡大のための新規投資を抑え、手元資金の確保を促す提案を投資先に対して行っています。2023年3月末時点において、SVF未公開投資先の94%で12カ月超の資金を確保できており、当面の危機への備えはなされているとみています。

これらの個々の投資先のリスク管理はSVFの投資リスク管理チームが主体となって行っていますが、重大なリスクと判断された事項については定期的にソフトバンクグループのリスク管理室に共有され、必要に応じてソフトバンクグループの取締役会にも報告されます。

変動の大きい一年でしたが、社内やグループ内で連携を日々強めながら、どのような環境変化にも柔軟に対応できるリスク管理を目指しています。

  • SVF1、SVF2およびLatAmファンドの未公開投資先の公正価値合計のうち、12カ月以上の運転資金を保持している投資先の公正価値の割合です。データが入手不可能な投資先を除きます。

  • 本ページにおける情報は2023年7月27日現在のものです。

  • 本ページにおける社名または略称はこちらよりご確認ください。

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