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トップメッセージ—ソフトバンクグループレポート 2023

情報革命の先端を担うべく反転攻勢へ

ソフトバンクグループ(株)
代表取締役 会長兼社長執行役員

孫 正義

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人類の未来のアーキテクトに

2022年秋、「事業家としての人生はあと何年あるのだろうか」と考え込み、なんだかとても虚しくなってしまうことがありました。「この程度で終わっていいのか」と。事業家としての残りの人生は、やらなければいけないことを義務感にとらわれてやるのではいけないと思いました。そこで「一番やりたかったことは何か」と自分に問いかけた結果、人類の未来のアーキテクト(設計者)になりたかったのだと改めて気づいたのです。もし自分がその役割をいささかでも果たすことができたら、道半ばで倒れたとしても、一番わくわくどきどきすることだと思ったのです。その日から、「人類の未来はどうあるべきか」「どうすれば未来の人々がさまざまな困難から逃れて、素晴らしい豊かな社会で暮らせるようになるのだろうか」と純粋に考えるようになりました。それからは寝ても覚めても人類の未来のために考え続けるという状態になっています。

米国で学生生活を送っていた19歳のとき、1年間で約250件の発明を行いました。そのときは創造性を司る右脳が非常に活発に動いていましたが、その後会社を始めてから42年間は、経営者としての責任を果たすために論理的思考を司る左脳を主に使ってきました。しかし、大きな転機となった2022年秋からは右脳を再び活発に動かして8カ月で約630件の発明を行いました。AI(人工知能)が人類の未来に与える影響の根源に関わる発明をせっせとやっているのです。夜中に夢から目覚めてすぐに発明ノートに書き綴り、その写真を撮ってスタッフに送ることも珍しくありません。この勢いで行くと、1年間で1,000件弱の発明をすることになります。大半は駄作でしょう。しかし、中には間違いなく人類の未来に大きな影響を与えるものもあるはずです。

2022年度第2四半期から決算説明をCFOに任せるようになったので、「大赤字を出して恥ずかしくて引っ込んでいるのではないか」という声も聞こえてきますが、実際には、このようにとても忙しく、楽しく、活発に動いています。会社の日々の運営についてはCFOを中心としたマネジメントチームに任せて、私は人類の未来の本質に関わることに邁進しているのです。人類はこの地球上で最も優れた頭脳を持つ動物ですが、10年以内にAIの知性が人類の英知の総和を超える「シンギュラリティー」が到来し、状況が一変するでしょう。当社グループを挙げて、このAI革命、情報革命の先端を担っていきたいと思っています。それが結果的に当社グループの利益の大幅な拡大にもつながっていくでしょう。

毎日GPT-4と知恵の壁打ち

サム・アルトマン氏が率いるOpenAIが2022年11月に生成AIであるChatGPTを華々しくデビューさせて、たった2カ月の間に世界中で1億人が使う状況になりました。2023年3月に公開されたGPT-4はマルチモーダルモデルであり、従来のようにテキストや音声1種類だけではなくて、テキストや音声、画像、動画などの複数の種類の情報を全部取り込んで一度に処理することが可能になりました。GPT-3.5では大学入試にまだ合格できないレベルだったのに対し、GPT-4では米国の司法試験を上位10%前後で合格するなど、ほとんど上位の成績で大学に合格するレベルになりました。

この生成AIに関して、現在われわれもグループを挙げて活用に取り組んでいます。例えば、2023年5月から6月にかけて、グループ従業員を対象とした生成AIの活用アイデアを競うコンテストを行いました。生産性の向上、新たなビジネスの創出、さまざまな社会課題の解決につなげることを目的としたものです。10日間の募集期間で約5万2千件ものアイデアが集まり、事前審査を勝ち抜いた上位11件が私やAI研究の第一人者であり、当社の社外取締役でもある松尾 豊先生の前で披露されました。いずれのアイデアも素晴らしく、そのまま事業化できるものもありました。

コンピューティングの歴史を俯瞰して見ると、AIによって、その役割は大きく進化しようとしています。コンピューターは最初計算マシンでした。そのうち、地球上のありとあらゆる情報を記憶できるようになり、記憶マシンになったのです。そして、格納された情報の中から自分が知りたい情報を素早く見つけ出すために、Yahoo!やGoogleが検索マシンへと進化させました。さらに今、AIはその強みによってコンピューターを推論マシンへと進化させたのです。私自身、思いついたアイデアについて毎日GPT-4と「知恵の壁打ち」をしており、推論マシンとしてのAIは底知れない力を持っていると感じています。

AIは進化を続け超人類へ

コンピューターはさらに進化を続け、創造マシンになっていきます。創造すること、例えば芸術は人間だけの領域だと思っている人がたくさんいるのではないでしょうか。しかし、すでにAIは芸術や創造性の世界に足を踏み入れています。画像や映像の作成から作詞作曲までこなす上、詩を詠んだり、物語をつくったりすることもできます。

情報の学習、記憶、検索までは知識の部分です。一方、知識をもとに推論し、創造するのは知恵といえます。あらゆる知識を身に付けた上に、推論・創造する知恵も兼ね備えた人間はまずいませんが、AIにはそれが可能ですし、その進化は留まることがありません。人間との優劣が議論になるのは今から数年のうちだけで、いずれAIの知性は少なくとも人類の英知の総和の1万倍に達すると予想しています。私は、それが今から数十年以内にやってくると信じています。そのような時代が到来したとき、AIは超知性になり、ありとあらゆる社会のシステムがAIにつながっていくでしょう。そして、自ら進化し、増殖するようになります。超知性を持ったロボットを自ら設計・生産し、自己増殖を繰り返すことで、AIは全知全能の存在、人類をはるかに超えた超人類ともいえる存在になっていくのです。

今まで人類が解決できなかったようなさまざまな難しい問題を、この超人類が人類に代わって解決してくれるようになります。例えば、事故がない快適な移動、健康に長く生きられる人生、天災で止まることのない社会が実現可能になります。温度計、湿度計、信号機、電球、センサーなどのIoT(モノのインターネット)デバイスから、さまざまなデータがAIにリアルタイムに流れることで超知性への進化を加速させることが可能になります。無数のIoTデバイスにつながった超知性のAIはあらゆる災害の予知や発生場所の特定をより迅速かつ正確に行うことができ、これにより人々に素早く安全な避難を呼びかけることもできるようになるでしょう。低コストで、汗を流さず、ほぼ無限に人々が衣食住を手にできるようになり、さまざまな病気や災害からわれわれ人類を守ってくれる、そういうありがたい超人類がもうじき誕生しようとしているのです。先ほど言及した約630件の発明の大半が、このテーマに関するものです。人々がまだ見たことも、聞いたことも、触れたこともない、世の中に存在しないものを考えるのが発明です。世の中に存在しないものを想像し、具体性を持たせられたときに発明になるのです。これらの発明を通じてAIの進化をさらに加速させることが、多くの人々の不幸を減らして、幸せを増やし、より豊かでより楽しい社会の実現につながると信じています。

もちろん、この超人類が間違った使い方をされてしまうと、恐ろしい結果をもたらすリスクもあります。ですから、間違った使い方をされないように規制の議論が行われ、しかるべきルールが導入されるべきだと考えています。ただ、恐れるがあまり規制し過ぎるのもよくありません。きちんと軌道修正しながら、積極的にAIを進化させていくべきです。それに進化の過程でAIに理性を持たせることは可能だし、すべきだと思います。そうすれば、平和で安全に運用することができると信じています。

  • コンピューティングの進化
  • 進化の速度(イメージ)

アームはコンピューティングの成長から恩恵

AIの進化を加速させる上で、その中核となり、非常に重要な役割を果たすのがアームです。アームのテクノロジーを搭載したチップはすでに累計で2,580億個(2022年12月末現在)も出荷されています。ありとあらゆるデバイスにアームベースのチップが入ってきたことにより、その累計出荷数は成長してきました。

2016年にわれわれはアームを買収して、エンジニアを倍増させました。売上よりも先にエンジニアを増やしたので大幅にコストが先行する形となりましたが、その結果、急激な成長を遂げました。スマートフォン用チップの世界では、買収時から変わらず圧倒的No.1ですが、それだけに留まりません。コンピューティングの世界において、CPU(中央演算処理装置)やGPU(画像処理半導体)の発達とともに、アームベースのチップは、これらが合体された一つのAIチップとして、ありとあらゆるデバイスに組み込まれてきています。ここからさらに成長する余地があると信じています。

ソフトバンク・ビジョン・ファンドもAIの進化に貢献できるでしょう。当初から、投資判断を下す際には、AIが基盤となっているか、ベストアプリケーションであるかという点に必ず注目してきました。うまくいっていない投資先も多々ありますが、500社弱のポートフォリオの中には、AIが鍵となってソリューションを提供できるような、非常に素晴らしい会社もいくつかあります。これらの投資先もAIの進化、そして将来の当社グループの成功の鍵となると信じています。

情報革命は人々を幸せにするための革命

情報革命の中心は、間違いなくAIに、中でも超知性としてのAIになっていきます。コンピューティングを単なる計算・記憶・検索マシンと思っている方は、その認識を改める必要があるでしょう。AIは超知性として、知識だけではなくて創造を含む知恵の世界にまで及び、われわれ人類の未来がより豊かに、より幸せに、より素晴らしいものになる手助けをしてくれると心の底から信じています。

このような中、当社グループは、いよいよ反転攻勢に出ようとしています。準備は万端です。2022年度には資産の資金化を進めるとともに投資を大幅に抑制し、「守り」を徹底してきました。その結果、2023年3月末現在、手元流動性※1は5兆円超、LTV※2(Loan to Value、調整後純有利子負債÷保有株式価値で算出)は11%と「攻め」に向けて財務基盤は盤石となっています。この1年間は非常に重要です。土日も寝ているときも考えていて、今どんどんアクションを起こしています。わくわくしています。何年か前には後継者にバトンを渡そうと思ったこともありましたが、わくわくし過ぎて、楽し過ぎて、もうしばらく引退したくないというのが正直な気持ちです。情報革命は何のための革命かといえば、人々を幸せにするための革命です。頑張りますので、ぜひ引き続き応援していただきたいと思います。

  1. 現金及び現金同等物+流動資産に含まれる短期投資+コミットメントライン未使用枠。ソフトバンクグループ単体ベースです(SB Northstarを除きます)。

  2. 詳細は21ページをご覧ください。

2023年7月
ソフトバンクグループ株式会社
代表取締役 会長兼社長執行役員
孫 正義

  • 本ページにおける情報は2023年7月27日現在のものです。

  • 本ページにおける社名または略称はこちらよりご確認ください。

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