世界で最も普及しているコンピュートプラットフォーム
アームは、半導体技術開発のグローバル・リーダーとして、未来のコンピューティングの在り方を左右する存在となりつつあります。CPU設計のリーディングカンパニーであるアームと、何十億ものデジタル機器を生み出す1,000社以上のパートナー企業から成る、世界最大級のテクノロジー・エコシステムが創る未来です。
スマートフォン革命を牽引してきた私たちは今、クラウドコンピューティングの可能性を再定義し、自動車産業の変革やIoT社会の繁栄を実現するとともに、データセンターからエッジコンピューティングに至るまで、あらゆる場所でAIを現実のものにしようとしています。アームの注力分野であるエネルギー効率と継続的なイノベーションは、「スマート」コンシューマー・エレクトロニクスという新たなカテゴリーを生み出しました。そして今日、エネルギー効率は、企業や消費者が電気代を削減することに留まらず、地球のサステナビリティのために欠かせない要素となっています。より多くのアプリケーションにAI技術が導入される中、演算処理能力への要求は高度化しており、高性能と高エネルギー効率を両立するアームのCPUテクノロジーは、現代、そして未来のコンピューティング・アプリケーションにふさわしい存在となっています。
アームのビジネスモデル
アームは、アームのCPUデザインを基に半導体チップを開発する主要なテクノロジー企業に対し、デザインのライセンスを供与します。顧客企業は、アームのテクノロジーを利用するにあたりライセンス料を支払い、また、アームのテクノロジーを使用したチップごとにロイヤルティーを支払います。
ライセンス料は通常、ライセンス供与されるテクノロジーの量および先進性、そしてその期間によって異なります。アームは最近、顧客がより広範なアームのテクノロジーポートフォリオにアクセスできるよう、サブスクリプション型のライセンス契約である「アーム・トータル・アクセス」を導入しました。「アーム・トータル・アクセス」の多くは3年契約で、その後も更新され続けるため、アームは長期にわたってライセンス収入を得ることができます。
チップ当たりのロイヤルティー収入はチップの販売価格に関連しており、通常、チップにアームベースのプロセッサーが多く含まれるほど、また、アームの最新プロセッサーが使用されるほど、ロイヤルティー単価は高くなります。例えば、アームの最新CPUテクノロジーである「Armv9」は、特にスマートフォンやデータセンターのサーバーにおいて前世代の「Armv8」を徐々に置き換えており※、2023年度において、「Armv9」の標準的なロイヤルティー単価は「Armv8」の約2倍となっています。
アームのデザインはさまざまなエンドアプリケーションに適応しており、複数の市場向けに再利用され、新たなロイヤルティー収入を生み出すこともあります。一つのデザインが、さまざまなチップで使用され、開発当初から25年超にわたってロイヤルティー収入を生み続ける例もあります。
長期視点での投資
世界はめまぐるしく変化を続け、新しいアプリケーションやデバイスのカテゴリー、市場が次々と誕生しています。その多くが、性能を発揮する上で高度な半導体チップを必要とします。一方、新しいデバイスで使用されるテクノロジーの開発には長い年月を要します。アームの現在の投資は、5~10年後に消費者や企業が使い始める製品のためのものです。
アームは次のような目的の下、新技術の開発に継続的に投資しています。
- スマートフォン、コンシューマー・エレクトロニクス、クラウドサーバー、自動車、組込コンピューティングなどの長期的に成長が見込まれる市場でシェアを拡大または維持する
- 追加機能や高性能化・高効率化、そしてより専門的なデザインの提供を通じて、あらゆるスマートデバイスに搭載されるアーム・プロセッサーの価値を向上させる
- 複数のアームIPを事前統合したコンピュート・サブシステム(CSS)のような、より完全なシステムを含めた製品ラインアップの拡充を通じて、顧客の製品価値向上につなげる
- AIや機械学習などの次世代テクノロジーに投資する
- 柔軟なビジネスモデルでアーム製品へのアクセスを拡大し、顧客企業の製品にアームのテクノロジーを搭載する新しい方法を創造する
過去の投資が今日の収益の源泉
顧客企業がアームのテクノロジーを搭載した複雑なチップを開発するまでには時間を要します。今日供与されたライセンスからロイヤルティー収入を得るまでには少なくとも2~3年間待たなければなりませんが、チップが商業的な成功を収めれば、その後数年から数十年にわたる追加的なロイヤルティー収入源となります。
過去数年にわたる投資強化の結果、最新製品を市場に投入したことで、2023年度のアームの売上高は、米ドルベースで前年度から13.6%増加し、過去最高となりました。
2023年度のアームのライセンスおよびその他の収入は、前年度から38.5%増加しました。主要なテクノロジー企業がアームの製品ポートフォリオと自社の将来のロードマップを一致させた結果、これらの企業の多くが高額かつ長期の「アーム・トータル・アクセス」を締結しました。サーバーからスマートフォン、センサーに至るまで、幅広いエンドマーケットにおいて、エネルギー効率の高いAI機能に対する需要が高まっており、その分野でアームの技術が唯一無二の存在となっています。
2023年度のロイヤルティー収入は前年度からわずかに減少しました。ロイヤルティー単価が高いアームの最新テクノロジーがハイエンドのスマートフォンで普及したことや、自動車用アプリケーションやクラウドサーバーにおけるアームの市場シェアが拡大したことが、スマートフォンの販売台数減少による影響を補いました。
アームの物語は新章へ
私にとって2023年度の最大のハイライトは、2023年9月14日にアームが米Nasdaq Global Select MarketにIPOしたことです。会社と従業員にとって歴史的な出来事であり、世界中のすべてのオフィスでこの記念すべき日をお祝いしました。アームは30年以上にわたって最先端テクノロジーを開発してきましたが、2016年にソフトバンクグループの傘下に入ってからの数年間には、多くの変化がありました。
今後も、アームのさらなる発展においてソフトバンクグループは引き続き大きな役割を果たします。マサ(当社代表取締役 会長兼社長執行役員孫 正義)はアームの取締役会 会長として、重要戦略におけるリーダーシップを発揮します。また、ソフトバンクグループは現在アームの株式の大部分を保有しており、アームの価値向上はソフトバンクグループの直接的な利益につながります。
半導体業界の成長、クラウドからエッジコンピューターに至るまでのAI機能の拡大、そして最新のアームテクノロジーがもたらすチップ当たりの価値向上といったトレンドが、今後数年、あるいは数十年にわたってアームの成長を支え、私たちに恩恵をもたらすでしょう。
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