株主・投資家情報(IR)

CROメッセージ—ソフトバンクグループレポート 2024

変化に対応するリスク管理で
持続的成長をサポート

ソフトバンクグループ(株)
CRO
リスク管理室長

市村 清

Q1.CRO就任から3年がたちましたが、振り返っていかがでしたか?

私が入社した2020年は、SVFを中心とした投資事業が好調で、日本企業として歴代最高の連結純利益を記録した年でした。しかしその後、状況は大きく変わり、巨額赤字の期間が続きました。保有資産の構成にも変化があり、当時はアリババがポートフォリオの中心でしたが、一度はNVIDIAへの売却を目指したアームが2023年に上場を果たし、今では当社の中核となっています。監査法人で多くの企業を見てきましたが、これほどの規模とスピードで変化する会社はなかなかありません。それから、決算書だけでは当社を理解できないところも会計士の私にとっては新鮮でした。通常は会計上の利益と資産の状況を把握すれば会社の中身は分かるのですが、当社の場合、それだけでは本質を読み解くことはできません。

そんな中で、当社グループのリスク管理の複雑さ、一方でその重要性を強く実感させられました。まずは保有資産や負債を分析し、実態を理解することからはじめ、各部・各子会社などあらゆるソースから情報を入手し、重大リスクの特定や対応について検討を重ねてきました。2023年度は当社の保有資産のAIシフトが進展したほか、反転攻勢に向け投資を再開しました。また、国際情勢の混乱からビジネス環境の不確実性が非常に高い状況が続いています。あらゆる面からリスクを検討し、当社の持続的成長をサポートしていきたいと考えています。

Q2.保有資産の構成が変わったことで、リスクはどのように変化しましたか?

かつてはアリババが保有資産の中心で、SVFでも中国企業への投資を数多く行っていました。リスク管理室では中国国内の規制強化や米中対立などのリスクの早期把握に努めるとともに、ポートフォリオ全体に占める中国投資の割合や保有資産価値が急落した場合の当社への影響を取締役会およびGRCCに報告してきました。現在はアリババの保有が実質ゼロになり、保有資産に占める中国投資が低下していることから、中国リスクは大幅に緩和されたと思います。

一方で新しいリスクもあります。現在、当社の保有資産はアームを中核として、AIを活用する企業群へと変化しています。2023年はChatGPTが火付け役となり、AIは急激に進化、普及し、経済・金融市場に大きな影響を与えました。それと同時にAIリスクへの懸念も増大し、EU、米国、日本など、多くの国・地域でAI の開発や利用に関するルールメイキングの議論が活発になっています。当社においては、規制の動向把握やグループ会社間の連携強化を通じて、AIガバナンス強化に向け取り組んでいます。

Q3.投資を再開していく中で注視しているリスクはありますか?

ここ最近投資額が徐々に増加している戦略投資に注目しています。純投資を基本とするSVFと異なり、より長期目線での事業投資であるため、事業がうまくいかない可能性や、子会社となった投資先の管理など、さまざまなリスクを検討する必要があります。

現時点では投資初期段階のものが多く、今後の事業展開によっては注視すべきリスクが変わる可能性もあります。それぞれの投資先の事業状況を理解し、各関係者との連携を密に行い、必要に応じて支援することが重要だと思います。

また、SVFにおける既存投資先の管理も重要だと考えています。SVFでは、効果的な関与を通じて投資先の企業価値向上の支援をするなど、戦略的な投資先管理方針を構築しています。リスク管理室ではその取り組み状況を注視し、モニタリングを行っています。

  • 本ページにおける情報は2024年7月29日現在のものです。

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