株主・投資家情報(IR)

アームCEOメッセージ—ソフトバンクグループレポート 2025

アームの戦略をさらに推進するために
投資を拡大していく

ソフトバンクグループ(株)取締役
Arm Holdings plc, CEO and Director

レネ・ハース

役員略歴 →

世界で最も普及しているコンピュート・プラットフォームとして

アームは、半導体技術開発のグローバルリーダーとして、世界有数のテクノロジー・エコシステムを支えながら、未来のコンピューティングの在り方に大きな影響を与えています。また、世界で最も広く使われているコンピュート・プラットフォームの提供企業として、1,000社を超えるパートナー企業と連携し、これまでに何十億ものデジタル機器の開発に貢献してきました。

私たちはスマートフォン革命を牽引してきた実績を基に、現在ではクラウドコンピューティングや自動車、IoT、人工知能(AI)といった分野の進化を支えています。アームの高いエネルギー効率を誇る技術と、継続的なイノベーションの積み重ねは、企業や消費者にかかるエネルギーコストの削減や、地球環境の持続可能性の実現に不可欠な存在です。特にAIの導入が加速する中でアプリケーションの要求も高度化しており、そうしたニーズに応えるアームのコンピュート・プラットフォームは、あらゆる産業にとって理想的な基盤となっています。

アームのビジネスモデル

アームは、自社のテクノロジーデザインをライセンス提供しており、主要なテクノロジー企業はその設計を自社のチップに組み込みます。顧客企業は、アームの技術へのアクセスに対してライセンス料を支払い、さらに、その技術を搭載したチップ1個ごとにロイヤルティーを支払います。

ライセンス料の金額は通常、ライセンス対象となるアームの技術の量、その技術の先進性、およびアクセスが提供される期間に応じて決まります。ライセンスモデルは主に2種類あります。一つは「アーム・トータル・アクセス(ATA)」というサブスクリプション型のビジネスモデルで、顧客はアームの技術ポートフォリオの大部分にアクセスできます。もう一つは「アーム・フレキシブル・アクセス(AFA)」という従量課金型のビジネスモデルで、アクセス権、設計権、必要なサポートを提供し、製造プロジェクトごとのテープアウト時に料金が発生します。近年では、AIの需要変化に柔軟に対応できる設計を実現するため、多くの大口顧客がより幅広いアームの技術にアクセス可能な「ATA」へと移行しています。さらに、「ATA」は複数年にわたるサブスクリプション型ライセンスモデルであるため、アームにとっては長期的な収益の確保にもつながっています。

チップ当たりのロイヤルティー収入は、チップの販売価格に紐付きます。通常、チップにアームベースのプロセッサーが多く含まれるほど、また、アームの最新のプロセッサーが使用されるほど、ロイヤルティー単価は上昇します。例えば、スマートフォンやデータセンター向けサーバーにおいては、前世代の「Armv8」から最新CPU技術である「Armv9」への移行が進んでいます*。2024年度における「Armv9」の標準的なロイヤルティー単価は、「Armv8」の約2倍となりました。さらに、アームのコンピュート・サブシステム(CSS)は、高い性能とエネルギー効率を発揮するよう最適化された、複数の最新アーム技術を事前に統合した製品です。そのため、「Armv9」単体を上回るロイヤルティー単価を実現します。アームの各技術設計は、さまざまな最終顧客向け製品に適応可能であり、幅広い製品への展開を通じて、多様な市場へアクセスできます。新しい製品が発売されるたびに、新たなロイヤルティー収入源が発生します。一つのアーム設計は多様なチップに活用することができ、中には初回の製品投入から30年経った現在でも、ロイヤルティー収入を生み出し続けているアーム設計も存在します。

  • 2024年度第4四半期のロイヤルティー収入の内訳は、「Armv9」が30%、「Armv8」が45%、それ以前の技術が25%程度と推定しています。

長期的視野に立った投資

世界は絶えず変化しており、新たなアプリケーションやデバイスのカテゴリー、市場が次々と生まれています。アームが現在進めている技術投資は、5年から10年先のデバイスを支えることを見据えたものです。

2024年度において、アームが重点的に取り組んだのは以下の分野です。

  • スマートフォン、コンシューマー向けエレクトロニクス、自動車、組み込みコンピューティングといった主要分野でのリーダーシップの強化
  • アームCPUの機能性、効率性、専門性の強化
  • より包括的なシステムソリューションを実現する製品ラインアップの強化
  • AI、機械学習、次世代技術の進化の推進
  • 柔軟なビジネスモデルにより、より多くの顧客企業がアーム製品を利用できる環境の整備(例:当年度に、マレーシア政府が進めるAI関連プロジェクトに向けて、同政府と10年間の技術提供契約を締結)

過去の投資が現在の収益を支えている

顧客企業がアームのテクノロジーを活用して複雑なチップを開発するには、一定の時間がかかります。ライセンスを供与してから実際にロイヤルティー収入が発生するまでには、通常2~3年を要します。そのチップが市場で成功すれば、アームはその後も数年から数十年にわたり安定したロイヤルティー収入を得ることができます。

アームの2024年度の業績は、新製品の寄与により前年度比25.3%増の4,007百万米ドルとなり、過去最高の売上高を記録しました。また、ライセンスおよびその他の収入も、主要なテクノロジー企業がアームの技術ロードマップと自社戦略を一致させ、長期契約を締結したことにより、前年度比28.5%増の1,839百万米ドルとなりました。さらに、エネルギー効率の高いAI機能に対する需要が多様な市場で高まったことで、アームのコンピュート・プラットフォームの需要もすべての市場で拡大しています。

2024年度のロイヤルティー収入は、前年度比22.7%増の2,168百万米ドルとなりました。産業用IoTやネットワーク機器向けチップの販売は減少したものの、ハイエンドスマートフォンにおける「Armv9」の採用拡大や、自動車分野の成長、さらにクラウドサーバー市場でのシェア拡大が全体の伸びを後押ししました。

  • 本データは、アームの顧客から提供されたロイヤルティー報告に基づいています。ロイヤルティー収入とは、アームが報告するロイヤルティー収入を指します。会計年度は、アームの会計年度を基準としています。

アームの戦略の進展:イノベーションと成長の実現に向けて

2024年度、アームは新たな成長ステージへと歩みを進めました。次世代テクノロジーの開発に向けた研究開発投資を加速すると同時に、顧客企業がアームの技術を搭載した製品をより迅速に市場へ投入できるよう、エコシステム全体に対する支援体制も強化しました。

当年度、アームは以下の4つの主要分野に対する投資を拡大しました。

AI分野でのリーダーシップの強化

アームのコンピュート・プラットフォームは、データセンターからエッジデバイスに至るまで、AIワークロードの処理を支えています。データセンターでは、NVIDIAがアームのテクノロジーを採用したGraceチップを、同社のBlackwell GPUと組み合わせることで、AIの学習や推論の高速化を実現しています。
また、エッジ側では、アームの技術を搭載したチップが、PCやスマートフォン、スマートカメラ、自動運転車といったAIアプリケーションを支えています。こうしたAIによるイノベーションを一層加速させるため、アームは新たなCPUやソフトウエアフレームワークの導入を進めました。さらに、MetaやOpenAIといった主要なAIエコシステムのプレイヤーとのパートナーシップも強化し、グローバルにおけるAIワークロードの中核を担うコンピュート・プラットフォームとしての地位を確立しつつあります。

自動車市場への関与の深化

アームのコンピュート・プラットフォームは、車載インフォテインメント(IVI)や先進運転支援システム(ADAS)、さらには初期段階の自動運転アプリケーション(例:ルネサス エレクトロニクス(株)のR-Carシリーズ)に幅広く採用されています。2024年度には、主要な自動車メーカーと連携し、ソフトウエア定義型車両(SDV)の開発を推進し、自動運転車の実現に向けて大きな一歩を踏み出しました。その取り組みの一環として、アームは最新の「Armv9」コンピュート・プラットフォームに加え、120社以上の自動車関連企業が参加する業界コンソーシアム「SOAFEE」との共創を通じて、SDV向けの新たなAIフレームワークを発表しました。

データセンター領域での存在感の強化

世界最大規模のハイパースケーラーの多くが、すでにアームのコンピュート・プラットフォームをデータセンターに導入しているか、あるいは初めてアームのテクノロジーを搭載したデータセンター向けチップの開発に取り組んでいます。2024年度には、Amazonが「2023年以降に自社で導入したサーバーチップのうち、50%超がアームのコンピュート・プラットフォームを採用している」と発表しました。また、MicrosoftおよびGoogleは、それぞれアームのテクノロジーを搭載したデータセンター向けチップを用いたサービスを初めて開始しており、クラウドコンピューティング分野におけるアームの存在感はさらに高まっています。

グローバルなエコシステムにおけるイノベーション支援への投資

アームは、ソフトウエア開発支援に注力することで、IoT、モバイル、組込機器といった分野において、開発者がより迅速にソリューションを市場に投入できるようサポートしています。
現在、アームのコンピュート・プラットフォーム向けにアプリケーションを開発しているソフトウエア開発者は、世界で2,000万人を超えると推定されており、アームは世界最大規模のソフトウエア・エコシステムを築いています。

2024年度の堅調な業績は、アームの戦略が確かな方向に進んでいることを裏付けています。今後もアームは、高性能かつ高効率なコンピュート・プラットフォームのポートフォリオをさらに拡充し、強力なソフトウエアソリューションへの継続的な投資を通じて、パートナーとのエコシステム連携を一層強化していきます。そして、目前のビジネス機会を最大限に生かすだけでなく、今後数年、さらには数十年にわたって、コンピューティングの未来を形づくる存在であり続けます。

  • 本ページにおける情報は2025年7月28日現在のものです。

  • 本ページにおける社名または略称はこちらよりご確認ください。

関連コンテンツ

ページトップへ戻る