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ソフトバンク・ビジョン・ファンド:CEOメッセージ
—ソフトバンクグループレポート 2025

不確実な時代に規律と機動力で挑む

SoftBank Investment Advisers, CEO
SoftBank Global Advisers, CEO

アレックス・クラベル

ソフトバンクグループでは、AI の変革の力にいち早く着目し、その可能性を追求してきました。近年、AIは飛躍的な進展を遂げ、公開・未公開市場の双方で力強くパフォーマンスを牽引する存在になりました。AI の持つ計り知れない可能性への確信は、強まるばかりです。すでにソフトウエア、専門サービス、製造、物流のような分野では、AIによる生産性向上が現実のものとなりつつあります。また、AI の革新性は、テクノロジー株の動きにも寄与し、AIモデル、アプリケーション、インフラを開発するスタートアップ企業への資本流入が一段と加速してきました。

こうして技術革新が進展する中、2024年度の世界経済は緩やかに成長しました。米国では、2024年のGDP成長率は2.8%となりました※1。これは、ハト派的な金融政策への転換、底堅い労働市場、そしてインフレ圧力が続く中でも力強い個人消費に支えられた結果です。一方で欧州は回復ペースが鈍く、依然として多くの課題を抱えています。他方、新興国では、インドや東南アジアの一部を中心に比較的堅調な動きが見られ、世界経済の成長ストーリーを語る上でポジティブな要素となりました。このように地域ごとに経済環境が異なる状況は、試練であると同時に機会でもあります。そうした中で、われわれは長期的な企業価値の創出に軸足を置き、規律ある姿勢で臨んできました。

マクロ経済環境に不透明感が残る中でも、われわれのポートフォリオは年度を通じて高いレジリエンスを示しました。AI の可能性に対する先見の明を持っていたことが、AIを原動力とする成長の恩恵を享受できる立ち位置につながっています。2024年度はパフォーマンスが安定し、ファンドの公正価値※2は年度末時点で合計1,573億米ドル※3と、前年度末の1,457億米ドル※3から着実に増加しました。2024年度、リミテッド・パートナー(LP)への分配総額は114億米ドルに達し、第4四半期だけで49億米ドルを分配しています。こうした成果は、投資先企業の基盤の強さと、複雑なエグジット環境下においても価値を実現するわれわれの実行力の証といえるでしょう。

引き続き、投資戦略の中核はAIです。2024年度には27件の新規AI 投資を実行しました。OpenAI、Databricks、Wiz、Perplexity、DayOne、Glean、AlphaSense などの企業がポートフォリオに加わりました。リスクを分散させるため、基盤モデルから垂直統合型のアプリケーション、さらにはインフラ領域に至るまで、AIスタックのあらゆるレイヤーに戦略的に投資を進めています。

中でも重要なのが、2024年9月に実行したOpenAIへの初回投資です。同社のAIの研究開発や実用化における成果は目覚ましく、著しいスピードで成長を遂げています。2024年10月から2025年3月のわずか6カ月間で、主力プロダクトであるChatGPTの週次アクティブユーザー数は倍増しました。最新モデルであるo3は、ほかの大規模言語モデル(LLM)を抑えて最高評価※4を獲得しました。ChatGPTは市場シェア※5が約80%に達するなど急速に普及しており、生成AIカテゴリー全体を象徴する存在となっています。

初回投資以降もわれわれはOpenAIの複数の資金調達ラウンドに参加し、2025年5月末現在におけるソフトバンク・ビジョン・ファンド2による累計投資額は97億米ドルに達しました。単なる投資先ではなく、ポートフォリオ全体にイノベーションと価値をもたらすパートナーとして、われわれはOpenAIの将来性に非常に大きな期待を寄せています。例えば、現在ソフトバンクグループがOpenAIと共同で開発している高度なエンタープライズ向けAIソリューション「クリスタル・インテリジェンス」※6は、今後グループ各社に導入され、各社のイノベーションや成長、スケール拡大を後押ししていくでしょう。さらに、米国やアラブ首長国連邦では、Stargateを通じた大規模なAIインフラ構築でも連携しています。

2024年度のパフォーマンスを支えたもう一つの柱は、環境の変化を的確に捉え、柔軟かつ戦略的にエグジット機会をものにする機動力でした。次に、その具体的な事例をご紹介します。

世界的にIPO が低調な中にあっても、Ola Electric、FirstCry、Swiggyのインドの投資先3社は、同国の好調なマクロ環境と堅調な業績を背景に上場機会を確実に捉え、2024年度にIPOを果たしました。中でもSwiggyは13億米ドルを調達し、テクノロジー企業として2024年世界最大のIPOとなりました。Swiggyを含めて、2021年以降のインドでのテクノロジー企業の大型IPOの上位8件中7件がソフトバンク・ビジョン・ファンドの投資先です。同地域でのわれわれの存在感を物語っているといえるでしょう。また、MetseraやXtalPiなどほかの投資先も、説得力あるエクイティストーリーに裏打ちされて、手堅いIPO実績を残しました。

M&Aによるエグジットでは、GoogleによるWizの買収が発表されました。これはサイバーセキュリティ分野で史上最大の案件であり、取引完了後には力強いリターンを見込んでいます。また、ソフトバンク・ビジョン・ファンド1で保有していたDoorDash 株式をすべて売却し、同ファンド史上最高となる73億米ドルの投資利益を実現しました。

このような2024年度の成果を見れば、規律と機動性を併せ持って実行してきたわれわれの戦略が正しかったことがお分かりいただけると思います。2025年に入っても、「マグニフィセント7」の低調な株価推移や、ナスダック指数の2桁下落(1~3月)など、市場の先行き不透明感は続いています。こうした状況下では、規律と機動性のバランスが一層重要です。われわれは、市場のサイクルを乗り越えて着実にリターンを実現してきた実績によってLPとの信頼関係をより一層深め、価値創造に向けた長期的なコミットメントを新たにしています。

今後も、現実的な視座と規律を保ち、ファンダメンタルズに立脚した運営を続けていきます。投資先各社の事業運営にもこのような価値観を浸透させるべく、緊密に連携した取り組みを進めています。現在、投資先企業の97%(公正価値ベース)が12カ月以上のキャッシュランウェイを確保しており、78%がフリーキャッシュフローの黒字化を達成済み、あるいは黒字化を達成するのに十分なキャッシュを保有しています。このアプローチは、長期的な価値の創造に向けたわれわれの揺るぎない姿勢を示すものであり、現在の投資先だけでなく、将来の投資判断にも一貫して適用していきます。

かつてインターネットが世界経済の構造を根本から変えたように、AIはわれわれの住む世界そのものを再定義する存在になっていくと信じてやみません。AI 革命はまだ始まったばかりです。市場のサイクルは浮き沈みを繰り返すものですが、歴史を振り返れば、真の技術革新は社会に深く根を張り、その影響は長く続いていきます。われわれの使命は変わりません。未来を形づくる革新的なテクノロジーを見極め、果敢に投資していく―これまでも、そしてこれからも。この確信とともに、2025年度もさらなる前進を続けていきます。

  1. The Bureau of Economic Analysis 「Gross Domestic Product by State and Personal Income by State, 4th Quarter 2024 and Preliminary 2024」。2025年3月

  2. 2025年3月末現在保有投資の公正価値およびエグジットした投資の売却額を含みます。

  3. 当社連結財務諸表上のセグメント「ソフトバンク・ビジョン・ファンド事業」で計上した数値に基づきます。本項におけるその他の数値はSVF単体ベースです。外部投資家持分および税金等の控除前の数値です。

  4. Hugging Face、2025年4月30日。応答の長さやマークダウン使用などの要因を統制したモデル性能評価「Style Control」ランキングに基づきます。

  5. Similarweb「AI Global, Global Sector Trends on Generative AI」。2025年5月

  6. クリスタル・インテリジェンスは仮称であり、正式名称ではありません。

  • 本ページにおける情報は2025年7月28日現在のものです。

  • 本ページにおける社名または略称はこちらよりご確認ください。

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