孫 正義 グループ代表挨拶

2013年度新卒向けイベント
「ソフトバンク新卒LIVE2013
~孫 正義から未来を担う皆さんへのメッセージ~」

新卒向け会社説明会「ソフトバンク新卒LIVE2013 ~孫 正義から未来を担う皆さんへのメッセージ~」が、2月13日(月)、東京都千代田区の東京国際フォーラムで開催されました。今回は、東京の他、名古屋、大阪、福岡の3カ所の会場を同時生中継で結び、5,000名を超える学生の皆さんに向けて、ソフトバンクグループ代表の孫 正義が、自身の生い立ちや事業にかける思いなどを語り掛けました。

「仕事(仕える事)」ではなく、志を追い求める「志事(しごと)」を見つける

日本は今、大変な転換点にあります。2011年3月11日に発生した東日本大震災は、大変ショックな大災害でした。災害や事故は、それを乗り越えれば、また新しい歴史が始まります。しかし今、日本の基本的な体力は急激に落ちています。20年前、日本の国際競争力は、世界で1位でした。ところが現在では、27位にまで落ちています。さらに少子高齢化による人口減少、国の借金増大など、20年前と今日で、日本は変わってしまいました。

しかし、この20年間で変わっていないものもあります。それは「学生の就職企業人気トップ10」です。10社のうち8社は、20年前も今も同じです。学生の皆さんは、普段身近に感じているサービスや製品を提供している企業に、馴染みを覚えているのかもしれません。しかし、皆さんにとって「就職」というのは、今後50年間の人生を左右する大切な分かれ道です。物事は、30年、50年という単位で考える必要があります。日本の状況は、20年間で一気に変わりました。この先20年、50年でもっと変わります。これからの時代、伸びる産業、人々の生活を著しく飛躍させていく産業が、世の中を引っ張っていくことになります。それがまさに、「情報革命」です。

私は10代のころ、いずれ事業を始めると決めました。それが現在のソフトバンクグループです。どんな事業を始めるかは、当時のブームや、自分が単に興味があることではなく、「50年間飽きずに興奮を続けられるかどうか」という点を重視しました。私にとってそれは、「常に新しいことを考え、世の中を革新的に変えること」でした。「就職活動」という言葉は、就く職を探す活動を意味しますが、「仕える事」ではなくて、志を追い求める「志事(しごと)」を見つけていただきたい。どのような志に人生をかけるのか。この指標を、人生の分かれ道での重要な物差しにすることをお勧めします。“志”は、“夢”とよく似た言葉ですが、志とは、個人的な願望をはるかに超えた、壮大な目標だと思います。世の中を変える。人々を幸せにする。そういう志で、私は人生を過ごしています。

登る山を決める、これで人生の半分が決まる

15歳の時、「竜馬がゆく」(著:司馬 遼太郎)に強く感銘を受け、志を立てて事を成すことを決意しました。そして高校1年生の1学期終了後、退学届けを提出して単身渡米しました。アメリカでは、鬼のように勉強しました。これは自信を持って言えます。食事中、お風呂、トイレ、街を歩いている時、片時も教科書を離しませんでした。家族全員の反対を振り切り、自分のわがままで留学したという経緯があったので、遊んで暮らすわけにはいかなかったのです。ただ、最初はそんな責任感で一生懸命勉強していたのですが、途中からは学問そのものが面白くなりました。学生にとって勉強は本業。自分の本業を一心不乱に楽しむことは大切だと思います。

大学卒業後、1980年に帰国し、会社を起こすにあたって、どのような事業を行うのか、1年半をかけて悩み抜きました。就職に限らず、人生の中で何を追い求めるとしても、脳がちぎれるほど考え抜くということは大切です。「登る山を決める、これで人生の半分が決まる」というのが、私の持論です。考えて、考えて、考え抜いた結果、私は登る山を決めました。それが「情報革命」でした。「情報革命」は、脳の働きを延長させる革命。人々の新しいライフスタイル、価値観を提供する最も大きな革命だと思います。この革命によって、人々の悲しみを減らすことができる、人々の喜びや幸せをもっと増やすことができると信じています。「情報革命」はこれからも続いていき、ますます本格的になっていく。その革命に命をささげたい、人生をささげたいと思い、約30年前に「株式会社日本ソフトバンク」を創業しました。

時代は追いかけてはならない

こうしてソフトバンクは始まり、パソコンのソフトウエア販売から、時代の追い風を受けて一気に急成長。その勢いでアメリカ進出を果たし、Yahoo!に出資。日本法人ヤフー株式会社も設立しました。そして2001年、ブロードバンドサービス「Yahoo! BB」の提供を開始しました。「Yahoo! BB」は、日本のブロードバンドを世界一低価格かつ高速にしましたが、もしソフトバンクが決死の覚悟でNTTに挑戦しなかったならば、これは100%実現していなかったと思います。

そして次は、パソコンの時代から、携帯電話の時代が確実にやって来ると思いました。しかし、その時代に、革命的な携帯電話を作るのは、当時の日本あるいは海外の携帯電話機器メーカーではないと思いました。なぜなら従来の携帯電話には、(パソコンのような本格的な)OSが入っていなかったからです。本格的なモバイルインターネットの時代が間もなく来る。その時、そのマシンを作れるのは、世界で“あの男”しかいない。そう、当時の米国アップル社CEO、故スティーブ・ジョブズ氏に会いに行ったのです。その頃のアップルというと、まだiPhoneの試作機すら開発していません。私は、「iPodと携帯電話を足したようなものを作ってほしい。そこにあなたの得意なOSを入れて、インターネットが快適にできるようなものを作ってほしい」と交渉しました。すると彼は笑顔を浮かべ、「マサ、それ以上言うな。今は見せられないが極秘に開発を始めた」と答えたのです。そして、将来ソフトバンクが移動体通信事業を始めたら、日本での販売権を与えてもらうことを約束して、「もしそれが実現したらうれしいな」と、お互いの夢を語り合いました。そして2006年、ソフトバンクはボーダフォン日本法人を買収し、2008年にiPhone 3Gを日本国内で独占発売するに至ったわけです。ソフトバンクとアップルとの関係は、iPhoneの発表前から始まっていたのです。

時代は追いかけてはならない。次の時代に何が来るかということを先読みして仕掛け、そして時代が追いついてくるのを待つことが必要です。ソフトバンクの移動体通信事業は、携帯電話会社を運営したいという目的ではなく、モバイルインターネットを提供するためにあるのです。世界中の人々がインターネットを通じて情報を分かち合う。これこそが「情報革命」の中心だと思っています。

未来を担う若者へのメッセージ、「志高く」

私がソフトバンクの社長でいるのはあと十数年です。次は皆さんの世代が引き継いで、背負って立つことになります。最低でも300年間成長し続け、時代がどれほど変化したとしても、常に最先端の情報革命を引っ張っていく文化、遺伝子を設計して定着させていくことが、私の最大の役割です。ですから、そういう価値観を共有できる人に入社していただきたいと思います。私の直接の後継者は1人かもしれませんが、ソフトバンクグループにはすでに約900社あります。さらに30年後には、5,000社にしたいと思っています。ソフトバンクグループの社員は、男性であれ、女性であれ、これらグループ企業の社長あるいは役員になる資格が誰にでもあります。「自分がリーダーシップを発揮するんだ!」という気持ちで、頑張ってもらいたいと思います。

最後に、今日こうして同じ空間で同じ空気を吸った皆さんに、一つだけ共有していただきたい思いがあります。ソフトバンクで働くかどうかは、重要な問題ではありません。皆さんには、日本の未来のために、人々の役に立ちたいという熱く優しい思いで、志を高く持ってほしい。これが私のメッセージです。お金も製品も道具に過ぎません。一番大事なことは、それらの道具を使って、一人でも多くの人に「ありがとう」と喜んでもらうこと。それが私の思いであり、ソフトバンクグループ社員と共有している思いです。ぜひその思いを皆さんにも共有してもらいたいと思います。

ありがとうございました。

(掲載日:2012年3月15日)

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